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WWD 小島健輔リポート
『ハニーズとバロック マーケットとすれ違うアパレルチェーンの突破口』
(2026年07月22日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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アパレル企業の決算というと、好調企業の成功要因やつまずきばかりが注目されがちだが、伸び悩んだり低収益に苦闘する企業の足枷となっている要因や突破口を探るのも有意義だと思う。2026年5月期が3期連続の減益となったハニーズホールディングス(以下、ハニーズHD)、26年2月期が2期連続の減収・純資産減少となったバロックジャパンリミテッド(以下、バロック)にフォーカスしてみよう。

 

■減収減益で中計見直しに追い込まれたハニーズHD

 

26年5月期の売上高が561億8200万円と前期から2.6%減少し、営業利益も46億1900万円と同21.8%、経常利益も48億5700万円と同18.9%、当期純利益も28億4500万円と同23.8%の減益だったハニーズHDは26年5月期からスタートした中期(3カ年)経営計画の下方修正に追い込まれた。

 

最終年度の28年5月期の計画で売上高630億円としていたのを580億円に、営業利益70億円としていたのを46億円にという大幅下方修正で、3カ年の積み上げ額を売上高は53億円から3億円に、営業利益は11億円からマイナス13億円に修正しているからスタートから転倒したようなものだ。売上高のうちEC売上高を100億円から76億円に24億円も切り下げたのが目立ったが、それでも6億円の積み上げになるから、店舗売上高は3億円減少することになる。

 

26年5月期の当初見通しに対して売上高は4.8%(28億1800万円)、営業利益は25.5%(15億8100万円)、当期純利益は28.9%(11億5500万円)の未達だったとはいえ、営業利益率は8.2%(前期比−2.0ポイント)とアパレルチェーンとしては高い方で、自己資本比率も85.2%(同+0.8ポイント)、純資産対運転資金率も57.9%と財務も健全で、そこまで急ブレーキをかける必要があるようには見えない。それでも急ブレーキをかけたくなる要因は一体、何だったのだろうか。

 

不調だった要因として江尻英介社長は「値頃重視でリードタイムの長い東南アジア生産(26年5月期は94.5%を占めた)のベーシック商品に偏り、トレンド対応や天候対応が後手に回った」と釈明しているが、25年5月期(2.18回転)から26年5月期(2.20回転)で棚資産回転が減速したわけではなく、後述するようにインフレ局面で値上げを抑制できず客離れを招いたことが指摘される。元よりミャンマーの自社工場生産比率(26年5月期は30.2%)が高く、ほぼ100%工場直接発注の自社企画・生産管理型SPA事業ゆえ在庫回転は極めてスローだが、大きな振れもないからコントロールできている。

 

問題は値頃調達優先ゆえ前年踏襲の安全牌商品に偏ることで、もう何年も毎月のように定点観測しているが、今年も去年も一昨年も各季節の商品にほとんど変化はなく、ウエアリングのトレンドでスウェットやニットと布帛のトップス比率が変化するぐらいだった。そうかといってユニクロのように素材から開発した重点商品を大ロット生産して山積みし、継続して縦売りするわけでもなく、ODMバイイングSPAのように類似商品のリレー展開が多いから、何のための自社工場なのかといぶかられる。自社工場軸の自社生産管理なのに、その体制を生かすMDとサプライの仕掛けが欠けているのだ。

 

縦売りの仕掛けも売り場のVMD訴求力も欠いて販売効率が上がらないのに加え、若い女性(10〜40代)が流出して客数が減少するローカル立地や郊外生活圏立地の店舗も多く、販売効率は26年5月期で前期から2.7%低下して7.72万円/月坪と限界的に低い。EC(オンライン決済)売上高を除くと6.75万円/月坪に過ぎないから店舗在庫の回転はギリギリで、ローカルや郊外生活圏では不採算店舗も少なくないと推察される。

 

ハニーズHDが減速したもう一つの要因として、コロナ禍を経てインフレに転ずる中での価格政策の稚拙さもあったのではないか。

 

コロナ前19年からの6期間で衣料品の小売価格(消費者物価指数)は12.7%インフレしたが、この間にハニーズ既存店の客単価は29.3%(商品単価は23.1%)も上昇し、客数は13.4%減少して売上高は12.1%増えている。同期間に国内ユニクロ既存店は客単価が21.4%上昇して客数が7.6%減少し売上高は12.1%増え、アンドエスティHD既存店は客単価が21.9%上昇して客数が9.6%減少し売上高が10.2%増えたのと比べれば、ハニーズは客単価の上昇と客数の減少の振れが最も大きかった。この間にしまむら既存店が客単価の上昇を15.3%に抑えて客数を12.2%増やして売上高を30.6%も伸ばし、ワークマン既存店も客単価の上昇を12.5%に抑えて客数を15.0%増やして売上高を29.2%も伸ばしたのと比べれば、ハニーズが失ったものは大きかった。

 

しまむらやワークマンは新規軸の機能素材、ユニクロやアンドエスティは機能素材に加えて意匠素材も投入して付加価値を訴求し価格抵抗感を抑制したが、ハニーズHDは従来商品から大きく変わらないまま価格が上昇した嫌いがあり、客離れを招いたと悔やまれる。

 

 

■2期連続して減収・純資産減少のバロック

 

26年2月期の売上高が514億9900万円と前期から11.5%、営業利益も3億2100万円と同60.5%減少し、経常利益は前期の16億8300万円の赤字からは脱却したものの3億8300万円と前々期の5分の1弱にとどまり、当期純利益も前期の25億7500万円の赤字からは脱却したものの3億6600万円と前々期の4割弱にとどまったバロック。売上高は2期連続して減少し、営業利益も2期連続して売上対比1%前後の低空飛行が続く。棚資産回転も前期の4.62回転から3.97回転へ0.65回転も減速し、交叉比率も前期の262.8(56.89%×4.62回)から238.4(60.05%×3.97回)へ9掛けに落ちており、商品財務の効率も落ちている。

 7月15日には27年2月期の第1四半期業績も開示されたが減収減益で、状況に改善は見られない。FB・SBブランドは7.7%増と堅調だったがSCブランドが13.7%減と低迷を深め、店舗売上3.8%減、EC売上6.7%減、連結売上3.6%減、営業利益84.9%減と業績悪化に歯止めがかかっておらず、原宿オモカドの旗艦店「ザ・シェルター・トーキョー」の閉鎖を発表した。

 

26年2月期をコロナ前20年2月期と比べれば売上高は78.2%、営業利益は7.0%、経常利益は8.4%、当期純利益は12.7%、純資産は68.4%にとどまり、コロナ前の業績を回復する大手アパレルチェーンとは格差が開いた。純資産の減少は25年2月期、26年2月期と続いた純利益を超える配当が要因で、25年2月期は25億7500万円の当期純損失にもかかわらず13億7600万円、26年2月期は3億6600万円の当期純利益の3.73倍の13億7600万円を配当している。配当性向が100%を超えるのはROE経営の欧米企業では珍しくないが、それでもせいぜい120%までで、373%という配当性向は突出している。親会社の中国ベル・インターナショナルHDか大株主のオリックスの意向によるものと思われる。

 

業績に不相応な配当を続ける一方で、従業員(正社員)の平均給与は20年2月期の340.9万円から26年2月期も361.6万円と6期間で6.1%しか伸びておらず、4期間で18.0%伸びて26年2月期の平均給与が502.4万円に達したしまむら、同じく4期間で41.4%も伸びて25年8月期の平均給与が推計536万円に達した国内ユニクロとは比較すべくもない。

 

バロックは25年4月に中国事業を手がける合弁子会社2社の全株式を現地パートナーのベル・インターナショナルHD傘下のSPCに譲渡して2010年から続けてきた中国事業から手を引いたが、20年2月期では中国事業の売り上げが10%強を占めていた。中国事業を含まない単体業績で比較すると26年2月期の売上高は20年2月期の85.9%に高まるが、営業利益は同5.4%、当期純利益は同6.6%とコロナ前には遠い。

 

26年2月期の単体売上高507億7100万円のうち店舗売り上げが379億円と74.6%、オンライン売上高が101億4700万円と20.0%を占めるが、20年2月期から店舗売上高が20.0%減少した一方でオンライン売上高は30.3%伸びている。単体売上高に占めるEC比率は、20年2月期は13.2%だったからコロナを経て6.8ポイント上昇したが、この間にアンドエスティHDが19.6%から29.5%へ、パルグループホールディングス衣料事業が15.8%から40.8%へ伸びたのに比べると、伸び率も絶対水準も勢いを欠く。

 

問題は店舗売上高の減少だが、この間にFB(ファッションビル)・SB(ステーションビル)ブランドが18.5%伸びてシェアも34.8%から37.9%に上昇したのに対し、SC(ショッピングセンター)ブランドは17.1%減少してシェアも50.6%から48.8%に落ちている。セレクトショップ・百貨店ブランドは1.9%減少したが、シェアは9.7%から10.4%に伸びている。

 

FB・SBブランドは「マウジー」や「スライ」「リエンダ」など元祖ギャル系・姉ギャル系、SCブランドは「アズール バイ マウジー」を筆頭に「ロデオクラウンズ」「ワイドボウル」「スタイルミキサー」、セレクトショップ・百貨店ブランドは「エンフォルド」や「ナゴンスタンス」「リムアーク」などクリエイティブなキャリア系だが、一部を除けば開発されて久しく、マーケットを広げるパワーは限られる。売上高を大きく落としているのは売上規模の大きい「アズール バイ マウジー」で、FCも活用してSCに広がったピークは240億円に達したが、コンセプトがSCマーケットとすれ違うようになって久しく、200億円を割り込んでいる。

 

この「SCマーケットとのすれ違い」は営業努力やMDのスキルで解決できるものではなく、根本からコンセプトを転換する必要がある。

 

ブランドがデビューした2008年頃はまだセレブデニムの勢いが残っており、「マウジー」の美脚シルエットをOEMで値頃化し、「アバークロンビー&フィッチ」の過激エクスクルーシブなイメージで店舗環境を演出し、FCを活用して急速な多店化に成功した。しかるに今日、セレブデニムのブームは終わって久しく、「アバークロンビー&フィッチ」も行き詰まってインクルーシブに転換し、カジュアルの主流がデニムからアスレジャーなスエットに、ビジネスシーンの主流がテーラードスーツからアクティブスーツに移って、TPOレスな着回しと機能性が求められるようになった以上、デビュー時とは異なる「メトロライフスタイルなコンセプト」が求められる。

 

フィットはコロナ下で随分と緩くなったが、Y2Kのリバイバルを経てMZ世代がビジネスの第一線を担うようになった昨今、イージーケアな機能性とビジカジ軸のTPOレスな着回しをスタイリッシュなフィットで装うのがメジャーとなりつつある。デニムという枠もカジュアルという枠も超えてTPOレスに着回すスタイリッシュなメトロライフスタイルウエア、というのが「アズール バイ マウジー」復活のキーコンセプトではなかろうか。

 

■中国撤退と旧世代テイストという共通点

 

ハニーズHDとバロックには2つの共通点がある。1つは早くから手掛けた中国事業を損切りして撤退したこと、もう1つは旧世代テイストから抜け出せないでいることだ。

 

ハニーズHDは06年に現地法人を設立して上海から出店を開始。翌07年5月期末には21店に拡大し、以降は二級都市にまで広げて13年5月期は589店に達し、105億5000万円を売り上げた。営業利益のピークは12年5月期の8億2600万円で、翌13年5月期も5億2600万円を計上したが、内外ライバルとの競合が激化して14年5月期は3億4600万円の営業損失に転落。15年5月期は133億5900万円まで売上高を伸ばしたが営業損失は解消せず、以降は不採算店の撤退で売り上げが減少していき、営業損失もかさんで18年5月期は10億1100万円に及び、18年6月の撤退発表に至った。同年9月末までに全店を閉鎖し、19年12月には現地法人の清算を完了している。

 

事業整理損失10億1300万円に減損損失と固定資産除却損を合わせて18年5月期の経常利益の半分を吹き飛ばしたが、14年以降の営業損失累計も30億6700万円に及ぶから、中国事業の挫折はハニーズHDの財務に相応のダメージを与えたと思われる。とはいっても中国事業を損切りして国内事業に徹した効果は大きく、翌19年5月期の当期純利益は31億7900万円と前期から30億円近く積み上げている。

 

バロックの中国事業は09年5月に上海に現地法人を設立して10年11月に上海に「マウジー」、11年6月には北京に「スライ」の1号店を出店。13年1月期末には22店に達したが、採算や店舗開発に課題があって13年10月にベル・インターナショナルとの合弁会社に事業を移管した。以降はベル社の店舗開発力も寄与して急速に多店化が進み、22年2月期には332店舗に達したが、近年は消費の低迷やローカルブランドとの競合激化で売り上げが伸び悩んでいた。不採算店の撤退やFCへの切り替えを進めても採算が改善せず、中国事業合弁子会社の全株式を合弁相手に譲渡して中国事業から手を引く結果となった。

 

13年に直営から合弁に切り替えていたため25年の株式譲渡に至る「持分法による投資損失」は、25年2月期に計上した24億3600万円に加えて19年2月期までさかのぼっても合計39億5600万円に過ぎないが、25年2月期の営業利益が8億1200万円しかなかったバロックには24億3600万円のダメージは大きかった。ハニーズHDと違うのは中国事業を損切りした翌期の業績も浮揚せず営業利益が減益したことで、国内事業の採算も低迷していることが露呈した。その元凶が「アズール バイ マウジー」であることは言うまでもない。

 

前世紀からの旧世代テイストから抜け出せないのも根深い問題だ。

 

ハニーズHDのレディスブランドはキャリア向けオシャレ着の「グラシア」、多用途ノンエイジの「シネマクラブ」、流行に敏感なヤングカジュアルの「コルザ」などだが(ハニーズ側の説明に準拠)、いずれもコンサバなエレガンスあるいはナチュラルなキャンパスカジュアルをベースとした無難な商品で、二昔前のテイストとスタイリングを出ていない。今どきの多忙な現役MZ世代はもっと機能的でスタイリッシュな着回しを求めるし、ブレザー制服とジャージのトラックスーツで育ったZ世代やα世代はアスレジャー感覚のTPOレスな着回しを好む。今のハニーズのテイストとスタイリングは減少していく旧世代の好みであり、このままではジリ貧を抜けられなくなる。

 

バロックの主要ブランドはアメカジベースのY2Kギャルスタイルに発したもので、今風のトレンドを取り入れたりキャリアな姉ギャルにシフトしてもアメカジベースもギャルマインドも変わらない。今時の若い子はアイドルやバーチャルキャラの衣装に通ずるロリなフィット&フレアのミニスタイルか、制服とトラックスーツをクロスするTPOレスなアスレジャースタイルが主流であり、キャリアになってもビジカジまで着回せる機能的なセットアップやクロスセットアップに流れ、グラマラスな姉ギャルスタイルを志向する人は限られる。

 

アメカジベースのギャルスタイルはトレンドを取り入れてもフィットを緩くしても旧世代感覚は否めず、アスレジャー感覚や制服感覚が入った今時の機能的な「ライフウエア」とはマインドもウエアリングも根本から異なる。今の現役世代はアパレルを「心地よく機能的に暮らすライフスタイル・ギア」と位置付けており、旧世代のように過剰に自己主張したりマウンティングすることは好まない。

 

ハニーズのローカルな旧世代感覚は木漏れ日のような安心感があるが、「AEONコーデ」と揶揄されるイオンモールおじさんにも通ずる時代ズレした野暮さと紙一重だ。バロックのとんがったギャルマインドは皆がギャルだったY2Kの街中では輝いたが、皆が突出しない機能的なライフウエアを纏う今の街中では痛くて浮きかねない。

 

以上はVAN、JUN、エドワードの60年代アパレル黎明期からマーケット変化を観察してきた私の時空を鳥瞰する実感であり、「偏見」と受け取る方もあるだろうが、マクロ〜ミクロ、川上〜川下の複眼的なデータに裏付けられたものだ(6月22日掲載の「漂流する衣料消費にどう対応するか」を参照されたい)。ハニーズもバロックもマーケットとすれ違って報われない努力に消耗するより、マーケットとマッチして努力が報われる方が幸せだと思う。さすれば両者に共通する3番目の課題である「給与水準の低さ」も解消されるのではないか。

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