小島健輔の最新論文

商業界オンライン 小島健輔からの直言
『大塚家具とイケアの低迷に見るシリアスな現実』 (2018年04月24日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 親子げんかの果てに業績が低迷して2年連続の最終赤字に転落した大塚家具が創業の地、春日部の「春日部ショールーム」を5月27日で閉店する。「ショールーム」をうたいながら直近2017年12月期の総売上げ410.8億円に対するEC売上げはわずか2億3400万円、EC比率は0.57%に留まるのだから、もはや“化石”でしかない。それはコーペラション思想にとらわれてECに出遅れたイケアとて大差ないのではないか。

EC出遅れで赤字転落したイケア・ジャパン

 イケア・ジャパンの売上げは14年8月期の771.6億円までは5.9%増と堅調だったが、15年は前期に立川店と仙台店の2店を開業したにもかかわらず1.2%増の780.8億円に留まり、16年8月期は767.6億円と減少に転じ、17年8月期は740.6億円とさらに落ち込んだ。収益性も13年8月期の営業利益率12.0%がピークで、14年8月期以降はつるべ落としに低下して15年8月期は1.2%まで落ち込み、17年8月期には14.46億円の営業赤字に転落した。06年4月に再々上陸してから10年も経つのに800億円を前に足踏み、この間に3830億円も売上げを伸ばしたニトリとは大差がついてしまった。

 その背景としてECへの出遅れが指摘されるが、ニトリとて前年から35%も伸ばしたとはいえ305億円とEC比率は5.33%に過ぎず、経済産業省EC統計における雑貨・家具・インテリア分野のEC比率18.66%(16年)と比べれば出遅れを否めない。イケア・ジャパンに至っては17年4月からようやく公式オンラインストアを立ち上げてECに参入したばかりで、全国12店の店在庫からピッキングして各店の配送エリア内に対応する初歩的な体制に留まり、愛知県弥富物流センターを拡張してEC対応のフルフィル整備を急いでいる段階だ。

 今まで長きに渡ってECを否定して来店持ち帰りにこだわり、数多のエセIKEAサイト(実質は購買代行業者)が乱立する状況を放置してきたツケは致命的で、いまだAmazonにも楽天にもヤフーにも購買代行業者のIKEA商品が氾濫する中、『本家「IKEA」のECサイトです』と言っても混乱は当分収まらないだろう。イケア本社も遅ればせながら15年6月にマルチチャネル戦略を発表して戦略転換に踏み切っているが、遅きに失した感は否めない。日本市場では既に手遅れではないか。

セルフサービス神話が足枷となった 

  イケアがECを否定してきた要因は店頭販売への固執で、コーペラション(協働)思想に基づく顧客の労働分担というセルフサービス神話が背景にあったと思われる。イケアは『顧客が店内物流も持ち帰り物流も製品組み立て労働も負担するから安く提供できる』というロジックで成長してきたが、オムニチャネル消費の利便が加速度的に高まる今日、その重い労働負担が顧客を遠ざけるようになったのではないか。

 流通業界では『顧客が労働を分担する分、割安に売れる』という“セルフサービス神話”がいまだ健在で顧客に労働分担を強いることが当然とされるが、オムニチャネルな利便が競われる今日、もはや神話でしかない。過渡期のギミックでしかないセルフレジが強引に導入されるのもセルフサービス神話が背景にあるからだ。

 店舗はECに比べての「品揃えの狭さ」「情報の限定」「労働の負担」「時間の負担」が疎まれて顧客の離反が加速しており、その解消こそが真のオムニチャネル化(ECと店舗が一元一体の利便を顧客に提供する体制)だと会得して全力で変貌しない限り、遠からず小売りの歴史に埋もれてしまう。ちょうど一世紀前、急台頭するチェーンストアの利便に圧されてカタログ通販がつるべ落としに衰退していったように……

ショールームストア化は待ったなし

 家具・インテリア分野のEC比率は2013年の13.17%から14年は15.49%、15年は16.74%、16年は18.66%と上昇してきたが、EC化が進んだ英国では過半に達して『店舗はショールーム』が常識になっている。それは家具・インテリアと同様に商品がかさばる家電関連とて同様で、わが国でもEC比率は30%に達し英国では過半を超えている。ECが普及しクリック&コレクトが定着した英国では衣料・履物とてEC比率が過半に迫り食品さえ16%(わが国はまだ2%台)に達しているから、生鮮食品を除く大半の消費材で店舗がショールーム化するのは時間の問題だ。

『小売業者は店舗に商品を運んで積み上げ、顧客は欲しい商品をピッキングして自ら持ち帰る』という百年続いた“販物一体”購買慣習も(それ以前は訪問販売や通販が主流だった)、ECというネット時代の“販物分離”購買慣習に代替されつつある。“販物一体”購買慣習は職住分離で男は職場・女は家事というサラリーマン社会形成で成立した前世紀の旧弊であり、女性就業率が急上昇して米国を抜き70%に迫るわが国で継続すると期待するのは無理がある。そんな現実を、チェーンストアとセルフサービスという前世紀の流通システムにとらわれた小売業者は直視できているだろうか。

 ECのプラットフォームに店舗を載せて“販物分離”するショールームストアが小売店舗の主流になる日はもう目前に迫っているのに、“販物一体”のままレジレス精算に夢中になっている有様は到底、大塚家具やイケアを笑えないのではないか。

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