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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『“セクシー”から遠のく女性たち』 (2018年01月27日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 ユーロモニター社の調べによれば日本国内女性向け下着市場でファーストリテイリング(ユニクロ)のシェアがワコールと並んだそうだが、女性下着のカジュアル化・楽チン化・アンチセクシー化は世界的な潮流のようだ。

 米国でもセクシーランジェリーの女王の座に君臨してきたあの「Victoria’s Secret」の人気が急落しているという。その理由は米国女性の志向変化を象徴するもので、ファッション業界と消費者の擦れ違いを象徴している。

 第一に挙げられるのがセクシーさを強調するデザインが疎まれたこと。米国女性もナチュラルでヘルシーなライフスタイルを志向する傾向が強まっており、セクシーなファッションやランジェリーは好まれなくなっている。第二に“ブラレット”などアスレジャー対応にも遅れ、「ルルレモン」や「アスリータ」などヨギーブランドやスポーツブランドのアンダーウェアに顧客が流れたこと。“ブラレット”はワイヤーもパットも入っていない締め付け感のないソフトブラで、楽チンで機能的な着け心地が好まれて急拡大している。

 国内ランジェリーショップの売上傾向を見ても、ナチュラル系やフェミニン系は堅調だが、セクシー度が強いほど低迷の度も強い。“セクシー”がオフトレンドなのはアパレルの世界も同様で、欧米ではボディコンなデザイナーブランドが凋落し、わが国でもマルキュー系の凋落はとどまるところを知らない。女性のファッションは年ごとに緩く楽チンになり、日常生活で着回しやすい緩くてイージーケアな服が求められており、いまだにクリエイションとかトレンディとかセクシーとか一方的な幻想を抜けられないファッション業界との乖離が広がっている。

 “セクシー”のオフトレンド化、ファッションのコモディティ化(生活用品化)は女性の労働力化が根本的な要因で、女性の就業率が高まるとともに顕著になってきた。女性就業率(25〜54才)が1990年の62.9%から2016年は73.9%まで上昇する一方、家計婦人衣料消費支出に占めるスカート比率は13.8%から近年は4〜5%台まで落ち込み(ストッキングなどもっと劇的に減少して絶滅危惧アイテム化している)、代わってパンツが6.4%から17.4%と3倍近く拡大している。少子高齢化と社会負担増で女性が男性同様に働かざるを得ない今日、女性のファッションも男性同様に機能本位になり、“セクシー”から遠のいていくのは避けられないようだ。

 

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