小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年12月21日付)
『セクシーからヘルシー&イージーへ』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 米国アパレルチェーンの18年第3四半期(8〜10月)業績ではアメカジ復活が継続する一方、モードやセクシーの低迷が深まった。特筆されるのが「エアリー」と「ヴィクトリアズシークレット」の明暗で、その既存店売上前年比(ダイレクト販売含む)格差は34ポイントにも達する。
 15年第一四半期(2〜4月)では「エアリー」と「ヴィクトリアズシークレット」は112対103と9ポイント差だったのが、「エアリー」が加速する一方で「ヴィクトリアズシークレット」は失速し、18年第3四半期では132対98と大きく開いた。最も格差が開いたのは「ヴィクトリアズシークレット」が86まで落ち込んだ17年上半期で、第1四半期は39ポイント、第2四半期は40ポイントに広がった。
 店舗数も16年1月末から18年10月末にかけて「ヴィクトリアズシークレット」が1,027店舗から1,017店舗と若干減ったのに対し、「エアリー」は単独店が97店舗から110店舗へ、「アメリカンイーグル」内ショップも67店舗から142店舗に増加している。店舗数を抑制しても既存店売上が落ち込んだ「ヴィクトリアズシークレット」と店舗数を増やしても既存店売上が大きく伸びた「エアリー」の勢いの差は明白だ。
 この格差の要因はアパレルとも共通するが、女性の労働力化が加速して機能性やイージーケア、気楽な着回しが求められるようになり、カジュアルとスポーツウエアやドームウエアの境目がなくなってTPOレスな“アスレカジュアル化”が進んだことが大きい。インナーウエアでもセクシーやフェミニンからヘルシー&イージーへと嗜好が移り、ヨギーウエア起源の「ルルレモン」やドームウエア起源の「エアリー」が人気を集めるようになった。それは我が国とて同様で、アスレカジュアルが伝統的なカジュアルを駆逐し、セクシーなランジェリーブランドは軒並み低迷を深めている。
 女性が男性と変わらない社会戦力となる中、ライフスタイルもウエアリングも加速度的に変貌しており、時間消費な店舗購入から時間節約なネット購入へ、家庭調理から外食や中食へ、大型スーパーからコンビニやミニスーパーへ移るように、カジュアルはアスレカジュアルに、インナーウエアもヘルシー&イージーに変わらざるを得ない。
 そんなマーケットの変貌を捉えてマーチャンダイジング展開を提案するのが当社の「MDディレクション」で、19AW版がウィメンズ/メンズとも年内には完成する。『グローバルなモードトレンドよりローカルなライフスタイルとウエアリングのトレンド』『デザインよりフィットと面とリミックス』『MD展開ストーリーを提案する』をポリシーに毎シーズン製作して来たもので、スタイリング/カラーパレット/素材構成をビジュアルに提案している。
 ちょっとネタバレになるが、19AW版の製作にあたってはTOKYOストリートに加えてSEOULコレクションもマークした。メンズでもウィメンズでもエクストリームスポーツやルーミーに加えてオルチャンが新鮮なインパクトを与えるに違いない。

 

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