小島健輔の最新論文

WWD 小島健輔リポート
『「ららぽーと福岡」に見るショッピングセンター商圏の取り方』
(2022年11月01日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 4月25日に開業して半年が経った「ららぽーと福岡」を取材した機会に、これまで福岡商圏に開設された郊外SCとも比較して「ららぽーと流」の商圏の取り方を考察してみた。福岡は大都市圏にしては稀有なRSC空白地帯であり、ららぽーと福岡が美味しい空白域をどこまで取り込めるか注目したい。

 

■福岡商圏と「ららぽーと福岡」の立地

 福岡市の人口は163万人だが商圏は福岡県全域(512万人)どころか新幹線アクセスで西は熊本や長崎、東は山口まで1000万人超の広がりがあり、空路や海路で韓国や近隣アジア諸国とも緊密に繋がる国際商圏でもある。そんな超広域商圏の中核となる商業集積が天神と博多駅だが、コロナ前で前者が2400億円、後者が1200億円(JR博多シティのピークは18年の1185億円)を売り上げていた。両者の中間にはキャナルシティ博多(商業施設面積51,542平米)があって、インバウンドピーク(17年8月期)の売上は410億円を超えていた。

 ウォーターフロントでは西区に00年10月開業のアウトレットモール、マリノアシティ福岡(商業施設面積43,260平米)、中央区のシーサイドももちには18年11月開業のCSC、マークイズ福岡ももち(商業施設面積48,000平米)がある。西区のCSCとしては06年4月開業のイオンモール福岡伊部(商業施設面積36,275平米)、11年4月開業の木の葉モール橋本(商業施設面積22,000平米)、東区のCSCとしては00年6月開業のゆめタウン博多(増床後の商業施設面積48,500平米)、03年11月開業のイオンモール香椎浜(商業施設面積34,000平米)があるが、内陸側の南区や城南区、早良区には目立ったCSCが無く、大型SCにとって狙い目の空白域になっていた。

 福岡空港の東側は福岡市外でローカルの住宅地や農地が広がり、糟屋郡柏屋町には04年6月に地域初の郊外型RSC、イオンモール福岡(開業時名称はダイヤモンドシティ・ルクル、商業施設面積83,500平米)が開業しているが、福岡空港に阻まれて福岡市内からの集客は限られ、東〜東南のローカル圏から集客していると思われる。東南の筑紫野市には96年3月開業のゆめタウン筑紫野(商業施設面積32,785平米)、08年12月開業のイオンモール筑紫野(商業施設面積58,700平米)があって足元を抑えており、東南方向ローカルの広がりにも限界がある。

 福岡商圏というと博多駅と天神、ウォーターフロントばかりが注目されるが、市内住宅地域の多くはSM核のNSCやCSCがカバーするだけで、多様な消費に応える本格的なRSCは皆無という大都市圏としては稀有な空白域だった。とりわけ居住人口に対する商業集積の薄さが指摘されるのが住居専用地域が広がる南区や城南区、早良区で、博多区南部の那珂地区に開業したららぽーと福岡は車アクセスの利点もあってこの3区域からの集客が期待できる。実際、ナビで検証してみても城南区南部、早良区中部あたりからの車アクセスは極めて良好で、都市高速環状線を使わなくても一般道で10km圏アクセスは30分を下回る。

 筑紫通りに面するとは言え最寄りのJR竹下駅からは徒歩9分、西鉄大橋駅からもバス10分(博多バスターミナルからはバス20分)という公共アクセスはやや苦しい立地だが、福岡市中央青果市場跡の再開発物件で、周辺に位置していた卸業者や食品業社の加工場や倉庫が移転した跡が次々とマンションに建て変わりつつあり、足元人口が急ピッチで増加していくというボーナスに恵まれている。

 そんな立地をどう見てどんな構成を組んだのか、「ららぽーと福岡」の施設構成とテナント構成を見ていこう。

 

■「ららぽーと福岡」の施設構成を点検する

 九州初となった「ららぽーと福岡」は三井不動産と九州電力、西日本鉄道(西鉄)のジョイントベンチャーが開発し、三井不動産商業マネジメントが運営する。準工業地域(建蔽率60%/容積率200%)の敷地86,600平米にS造り延べ床面積206,500平米を建築して商業施設面積73,100平米のRSCを開発したもので、九州初57店を含む222店で構成している。

青果市場跡の再開発ゆえ周辺は工場や倉庫と住宅が交錯したアーバンエッジで、住宅地としては好ましい環境ではないが、「ららぽーと福岡」の開業を契機に工場や倉庫が次々とマンションに建て替わっており、数年後にはマンション集積地に一変すると期待される。竹下駅の東側にはアサヒビール博多工場(敷地面積118,040平米)があって25年末に移転後の再開発が注目されているが、住宅地や倉庫、学校などに囲まれて道路アクセスに難があり、商業施設というより大規模マンション群として開発されると見られる。

 「ららぽーと福岡」は「アグリパーク」や「フォレストパーク」「スポーツパーク」など9ヶ所の広場や「キッザニア福岡」(6,600平米)、「福岡おもちゃ美術館」など地域のファミリーニーズに応える施設に多くの面積を割き、西方の住宅区域、南方のローカル区域からの集客を重視しているようにも見えるが、バスターミナルのアクセスは博多バスターミナル、福岡空港、西鉄大橋駅、JR竹下駅と、都心方向中心に南北アクセスばかりで西方住宅地域からのアクセスは限られる。

自家用車アクセスに依存するということなのだろうが、最寄り駅から距離があってバス便もアクセス方向が限られるにしては駐車場は3100台と少なく、年商400億円を狙うには週末や祝祭日の不足が指摘される。年商350億円と推計されるイオンモール福岡の駐車台数が5,200台だから、コロナが終息すれば駐車台数不足が慢性化することになる。開業直後の混雑や臨時駐車場(博多駅南側や空港駐車場)のパーク&ライド運用を見る限り相当の無理があるようで、SNSでは週末は自転車やバスでの来館を薦める声が多い。

来館車と納品車の出入り仕分けなど基本的な課題はクリアされており、チケットレスシステムも便利だが、空車案内は大雑把に過ぎて混雑時には空回りしそうだし、立体駐車場が3ヶ所に分散して混雑時には空きを探す来館車が反時計回りで周回する事態も想定される(当然ながら、出館車もその周回に阻まれる)。平面駐車場も60台と限られフードマルシェから離れているのも不便で、ネットスーパーのカーブサイド・ピックアップ(BOPISの駐車場受け取り)用バイパスレーンもなく、大型モールの日常消費対応の限界を感じさせる。

 

■テナント構成は全方位バランス型だが

 ざっとフロア構成を見ると、一階は筑紫通り側(北側)のフォレストパークから入って「フードマルシェ」(SMのレグネット[西鉄ストア]とグローサラントの「マーケット351」核の食物販ゾーン)に始まり、デイリーライフスタイルやデイリーファッションのテナントが並ぶモールのエンドは大型の「無印良品」で、JR線側(南側)のオーバルパークへ抜ける。二階は北側の「ユニクロ」「ジーユー」から始まって、巨大な「ZARA」を中核としてプチ・ラグジュアリーなグローバルブランドやセレクトショップが並ぶアップスケールなファッションゾーンを通り、「LoFt」や「ジャーナルスタンダードYOO-HOOストア」のインテリア系ライフスタイルゾーンに抜ける。三階は北側の「ABCマート」「ヤマダ電気」「アカチャンホンポ」から始まって「マーキーズ」から「ジェニー」までのキッズ&スクールゾーン、「ムラサキスポーツ」「ライトオン」から「ロデオクラウンズワイドボウル」「ウィゴー」までヤングマインドなカジュアルゾーンを通り、フードコートとレストランゾーンを一体化した「グランダイニング」に抜ける。

 ららぽーとはGMSが入らない分、両端の大型店の占める面積は過大にはならないが、二階だけは両端の大型店に中央の巨大な「ZARA」も加わって専門店のバラエティが圧迫された感がある。

 ファッション系で目立ったのは「ベイクルーズストア」も含むセレクト系で、「ビューティ&ユースUA」「ノーリーズ&グッドマン」「シップス・エニィ」など8店を揃え、「ポロ・ラルフローレン」「A|X」「COACH」などプチ・ラグなグローバルブランドが6店で続く。対して郊外モールでは常連の低価格SPAは「coca」など4店に限られ、最近はどこの新設施設でもズラリと並ぶアダストリア系も4店にとどまっている。一時は郊外モールに氾濫したアウトドア系も2店しか見られない一方、アイウエアは「金子眼鏡」「ジンズ」「ゾフ」と3店、ランジェリーも「エメフィール」「ランジェノエル」と2店、それぞれタイプの重複はあるが店数は揃っている。

 カテゴリーが全方位に揃う一方、カテゴリー内のバラエティは限られるケースが指摘される。足元商圏がマンション林立の再開発期アーバンに変貌して子育て中のニューファミリーが続々と流入して来る中、アカチャンホンポはともかくキッズ専門店が「マーキーズ」と「プティマイン」の2店しかないのはCSCにも劣る。大型ファッション店やカップル店がキッズを手がけているとは言え、大型ファッション店のキッズは大味に流れがちだし、カップル店のキッズなんてラック数本でしかない。トゥイーンズの店も「ラブトキシック」と「ジェニー」しかなく、両者は価格帯も違うから選択の余地が無い。

博多駅側からの集客を重視する割に、ティーンズ〜ヤングカジュアルも「ウィゴー」とギャルママ御用達の「ロデオクラウンズワイドボウル」ぐらいしかなく、電車アクセスの苦しい南方のアーバンエッジまで若者がわざわざ出向くとも思えない。足元の博多区南部から西方の南区、城南区、早良区は子供からティーンズは厚いが20代は薄く、アーバン感覚のヤングカジュアルやOLファッションを集積しても採算は難しいと思われる。

 総じて博多商圏を意識したアーバン感覚のセレクト系やプチラグなグローバルブランドが手厚く、足元から西方のサバブ、南方のローカルへ広がるファミリー向けのお手頃カテゴリーが手薄という印象を受けたが、それがららぽーと福岡の基本戦略であり、実勢商圏との乖離が指摘される。商圏マーケティングの南北カースト軸と東西ファミリー軸のバランスが偏っているのではないか。

 

■南北カースト軸VS.東西ファミリー軸の商圏構図

 ファッション関連のテナント構成を見ると、「南北カースト軸VS.東西ファミリー軸」のバランスが前者に偏っている。セレクトショップやグローバルブランドなど北の博多駅方向を向いたアップスケールなテナントの比率が高く、南のローカル方向は「ユニクロ」など大型ファッション店でカバー出来ると割り切っている。西方サバブのニューファミリーやミドルファミリーを向いたテナントのバラエティは限られ、南北に長い商圏を構想しているように受け取れる。

前述したように福岡商圏の商業集積は博多駅から天神の都心と中央区のウォーターフロントに集中しており、南側に広がる郊外住宅地域をカバーする広域型商業施設(RSC)は皆無と言って良い空白域だった。博多区の南辺アーバンエッジに立地する「ららぽーと福岡」は北の博多駅方向も南の筑紫野市方向も競合が厳しい南北軸より、大型施設が皆無の西を向いたテナント構成を組んで西に長い(東は福岡空港と山間部に阻まれる)商圏を形成するべきだったのではないか。

福岡商圏は海側中央部ほど若い人が多く女性比率も全国屈指に高く(中央区の女性人口は男性人口の1.24倍)、山側や東西周辺部ほどファミリー比率が高く男女比も福岡県平均に近くなる傾向があるが、空白サバブの南区、城南区、早良区、足元の博多区南部はそれぞれ特性が異なる。城南区と早良区はニューファミリー(子供)比率が高く(西区、東区も同様)、南区と早良区は20〜30代の女性比率も高い。若い女性比率が高いほど低所得層の比率も高くなるが、南北に長い城南区や早良区は高額所得者も多い。

都心を頂点としたアーバン→サバブ→ローカルというカースト感覚で南北に商圏を広げるより、ファミリーの世代構成と住宅地の成熟度に対応して東西に(実際は西に)商圏を広げる方が集客も売上も確実に伸びる。その視点で見るなら、都心感覚のセレクトショップやグローバルブランドに大きな面積を割くより、現実の生活を手頃に彩る必須カテゴリーのテナントバラエティを充実させるべきだったのではないか。

福岡に限らず、ららぽーとの商圏マーケティングにはファッション関連のみならず飲食サービスでもアップスケールな偏向が指摘されるが、日本が日の出の勢いだった往時ならともかく、日本がますます貧しくなっていく落日の今日、生活者との乖離は無視できなくなっていくのではないか。

 

写真キャプション

1)2)準工業地域からマンション街に変わり始めた周辺の環境

3)全高20メートルの等身大ガンダム(RX93ffν)が立つ筑紫通り側フォレストパーク

4)5)仙台、名古屋に続くベイクルーズストアはブランドコーナーの集積

6)ベイクルーズはアウトドアの「ジャーナルスタンダードYoo-Hooストア」も出している

7)アウトドア系は「Yoo-Hooストア」と「LOGOS」の二店だけで、アウトドア系が氾濫した愛知東郷とのわずか2年の差が痛感される

8)セレクト系ではパルグループの「ディスコート」が手堅い魅力でRSCに定着している

9)シップスの「SHIPS any」もプレップなキャラが固まって来た

10)11)アダストリアは4店しか出ていないが「niko and」は勢いがある

12)OMOを推進する「オンワード クローゼットセレクト」はアダストリアの「.stストア」とは対照的にアナログタッチ

13)オンワードのパターンオーダーストア「KASHIYAMA」は郊外SCにも進出し始めた

14)お手頃価格SPAの「coca」はレイアウトが「ユニクロ」みたいにシンプル

【画像15】「ウィゴー」はSCのヤングゾーンの定番になっている

【画像16】アウトドア系は「ジャーナルスタンダードYoo-Hooストア」と「ロゴス」の2店だけで、アウトドア系が氾濫したららぽーと愛知東郷とのわずか2年の差が痛感される

 

 

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