小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年02月26日付)
『衣料消費の変質を総括する』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 17年秋冬期(8〜1月)のブランド別の数字が揃って商戦の構図がくっきりと浮かび上がったが、近年になく明暗がはっきり分かれ、様々な意味でターニングポイントとなった。
 好調三大要因は1)着こなし易い緩いフィット、2)アイロン要らずのイージーケア(クリーニング要らずでもある)、3)本格防寒性ダウンコートの手当、で逆の不調要因は1)タイトあるいはセクシーなフィット、2)ケアの必要な拘り素材/ディティール、3)防寒アウターの手当て不足、だったと総括される。
 生活に追われ衣服をケアする余裕も無く‘お洒落’より‘機能性’を優先せざるを得ない消費者の現実が露呈した感があり、なかでも婦人服の苦戦が目立った(東京地区百貨店では13ヶ月連続で紳士服がリード)。ギョーカイは男性同様に社会戦力化・労働力化する女性たちの現実を突き付けられたのではないか。
 昨秋冬商戦では次元が異なる変質も露呈した。マーケットのローカルエスニック化が急進して世界一元なMDを展開するグローバルSPAが次々に失速したこと、温暖化の四半世紀から寒冷化の四半世紀へ転じて寒い期間が長く厳しくなったことだ。
 以前から低迷していたGAPに加え、H&Mも既存店割れが続き秋には二桁減に失速、冬に入っては一人勝ちだったZARAまで既存店割れに転ずるなど外資SPA勢は総崩れとなり、グローバルトレンドと国内ローカルトレンドの乖離が広がった。国内市場でもローカルエスニック化(タイプ別のテイスト分化)が加速して客層による好みやトレンドが分かれ、タイプ/ブランド別の明暗が開いた。
 気候は80年代中期までの四半世紀の寒冷化から80年代末期以降の四半世紀は温暖化に向かったが再び寒冷化サイクルに転じ、薄物のレイヤードでは済まなくなってダウンなど本格防寒アウターの需要が高まった。寒冷期間が長くなった分、冬物だけでは引っ張れず、寒冷期だった70〜80年代のような「梅春物」が本格復活するに至った。今年の冬も長く厳しくなる公算が大で(責任は持てませんが)、本格防寒アウターと「梅春物」の手当てが不可欠になると思われる。
 そんなマーケットの変質を「コモディティ化とローカル化」「女性の社会戦力化による‘労働服化’」などと警鐘を鳴らしてもギョーカイは真摯に耳を傾けてはくれず、クリエイションやものづくりの夢を追って‘非対称性’(同時に消費者とのギャップでもある)を訴求し続けている。懲りないギョーカイに消費の神々がどんな罰を下すのか、まさか本当の「氷河期」の到来ではないでしょうね。
 地球温暖化など虚構のプロパガンダに過ぎず、気象学者や天文学者、物理学者や地質学者の多くは氷河期の接近を警告している。1万9000年前の前氷河期の最寒冷期から8000年前の最暖期へ(2万3000年のミランコビッチサイクル)海面は140mも上昇し、そこから650年サイクルと四半世紀サイクルで温暖化と寒冷化を繰り返しながら寒冷化が進んで海面は5〜20mほど下がったが(縄文海進時は大宮が海岸だった)、太陽活動はすでに90年代から減退に転じており、2030年頃には次の氷河期が始まると警告する気象学者もいる。ご興味ある方には東京工業大学教授(当時)丸山茂徳氏や立命館大学古気象学研究センター長 中川毅氏、中央大学名誉教授 深井有氏の著書をお勧めする。金と権力の亡者たちが偽ニュースのプロパガンダを競う今の世の中、ホントのことは自分で学んで確かめるしかないですよ。

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