小島健輔の最新論文

繊研新聞2011年6月9日付掲載
11SSブランドツリーに見るマーケット変化
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 毎半期毎に作成している『ブランドツリー』の11SSレディス版がようやく完成した。今春デビューの新ブランドはもちろん既存ブランドも店頭を検証して位置決め、廃止休止となったブランドを外し、マーケット変化に対応してタイプ区分を再編したり新タイプを設定し、約2000ブランドを20ゾーン/226タイプに分類した。ターゲットや立地対応でゾーン分類し、テイストや価格帯、MDの組み方や編集手法でタイプ分類し、これさえあれば百貨店のゾーニングもSCのテナントミックスも容易に組み立てられるという精度を追求した。

新規ブランドの傾向

 新規採録ブランドが一番増えたのは世代交代期に入ったSC展開ストアで、アラフォー狙いやナチュラルライフスタイル訴求、ママ子対応のブランドが目立つ。人気復活のセレクトショップが続き、コンフォートナチュラル系やトラッドミックス系のブランドが増えた。ワーキングガールが続くものの、ナチュラルカジュアルから自社ブランド軸編集、ファストタイプまで分散し、廃止休止されるブランドも目立った。トランスキャリアとミッシーは既存ブランド軸編集ストアばかりで新規ブランドが限られ、アラフォーが注目される割には開発が遅れている。  人気凋落のセクシーガールとラグジュアリー系では廃止休止撤退ブランドばかりで新規ブランドが見られず、キャリア、ミセス、プレタではほとんど動きがなかった。グローバルSPAとインティメイトストアは昨年までのブームの残滓が残るに留まったが、服飾雑貨複合は新規開発が増えた。
 テイスト的にはフレンチプレップ系とコンフォートナチュラル系が急増し、セレクトショップで「コンフォートナチュラル系テイスト編集」タイプ、SC展開ストアで「コンフォートナチュラルキャラクター」タイプを新設した。総じてナチュラルなライフスタイル訴求と雑貨編集が広がる一方、ファスト系やモード系は鳴りを潜めた。

震災後の変化

 これまでセットになっていた「等身大」と「低価格」が分離し、ODMに依存するファストな低価格ブランドが失速する一方、等身大でもナチュラルなクオリティと完成度を追う自社開発型のブランドが駅ビル中心に広がったが、東日本大震災以降はどうなるのだろうか。推測に過ぎないが、戦後最悪という被災から復興する過程で脱原発省資源互助救国の潮流が広がって華美な消費が疎まれる中、ますます等身大なナチュラルライフスタイル志向やレトロ回帰が強まり、ブランドブランドしたものより手の温もりが感じられるセレクト編集や雑貨編集が広がるのではないか。デフレやファスト消費が復活する可能性は極めて低く、むしろ救国心からの国産品回帰と品不足感から緩やかな単価上昇に転じ、少数を選別購入して長期使用する堅実な消費姿勢が強まる。ファストやラグジュアリーは死語と化し、日本の消費スタイルは質実な縮小均衡に向かうと思われる。

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