小島健輔の最新論文

商業界オンライン 小島健輔からの直言
『「新世紀JKインサイトレポート」に注目』 (2019年02月20日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 SHIBUYA109エンターテイメントと産業能率大学小々馬ゼミの共同研究プロジェクトが発表している一連のJK(女子高校生)調査レポートはリアリティがあって大変興味深く、流通業界やファッション業界にとって参考にすべきことが多い。

 紹介する2つのJKレポートはどちらもインターネットアンケートをグループインタビューによって補足したもので、興味本位に流れることなくライフスタイルとファッション意識に切り込んでおり、アンケート設問や解析に課題があるものの、おおむね実態を現したものと評価される。

「新世紀JKおしゃれ生活インサイトレポート2019」

 19年1月に公表されたばかりの最新レポートで、関東・関西のJK807サンプルをベースに生活意識や毎月の収入と支出に加え、ファッションテイストの好みやスマホ軸の情報生活をフォーカスしている。

 収入はお小遣いが定期4526円+随時2938円の計7464円、アルバイト収入が3万5500円(している娘28.6%の平均)、フリマアプリ収入が1388円(している娘29.4%の平均)で、合計収入は算出していない。支出は(1)ライブ・舞台・アーチスト・アイドル関連が5949円、(2)ファッションが5627円[服3789円/服飾1838円]、(3)ビューティ関連が3666円[美容2060円/化粧品1606円]、(4)外食2713円と続く。スマホの通信費が挙げられていないのは親が管理して支払っているからと思われる。

 前年の「新世紀JKリアル図鑑」ではお小遣いが定期5000円/都度4000円の計9000円、アルバイト収入が4万円、フリマ収入が5000円とアバウトに報告されていたから、やや低下したことになる。支出でも(1)ライブ・舞台・アーチスト・アイドル関連が1万円とトップで、ビューティ関連が8000円[美容5000円/化粧品3000円]、ファッションが8000円[服5000円/服飾3000円]とアバウトに並んでいたから、エンタメ関連の首位は変わらないもののファッションがビューティを引き離したことになるが、関連する統計データとは方向が異なる。設問や集計方法が必ずしも連続していないので、前年からの変化を見るには無理があるのだろう。

 ライフスタイルでフォーカスされていたのが時間の使い方で、前回は勉強が40.8%、部活が37.9%と上位を占めていたのが、今回は動画視聴が47.3%、音楽が44.0%、インスタが40.4%、LINEが30.1%、ツィッターが27.8%とスマホ利用が上位を独占し、JKの生活がスマホで回っている実態が顕著になった。『スマホ無くしたら死ぬしかない』というJKの発言が大げさでないことが分かると思う。そこまでスマホにはまっていても『仲間とつながっているという意識であってSNSで社会とつながっているという意識は希薄』『ショッピングはスマホの情報収集から始めるがスマホの広告はうざいと思っている』とも報告している。

 好きなファッションテイストについては、関東圏、関西圏とも(1)カジュアル系、(2)ナチュラル系、(3)ガーリー系までは変わらず、(4)でようやく関東圏はストリート系、関西圏は韓国系(オルチャン?)と違ってくると報告している。他にも『化粧を始めた平均は15歳』『TVは家族団欒のBGMとしては必要』『カワイイ!が至上価値』など参考になる報告が並ぶから一読の価値がある。

「新世紀JKリアル図鑑 7つのおしゃれタイプ」(2018)

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 調査手法は「新世紀JKおしゃれ生活インサイトレポート」と同様だがサンプルが関東地区都市部のJK(各学年103計309サンプル)に限られ、収入と支出などライフスタイル関連の数値がアバウトな半面、「リアル図鑑 7つのおしゃれタイプ」とうたっているようにファッションタイプを検証してビジュアルに表現している。

 JKのファッションタイプを「おしゃれ意識」26項目の設問からクラスター分析してタイプ分けしたもので、設問自体に不適切なところがあったり制服アレンジと私服の区別が曖昧だったりと正確さはいまひとつだが、ばっくり捉えるには十分だ。

 7タイプを比率の高い順に並べると、(1)下北沢系[ナチュラル志向の平均的JK]26.2%、(2)LA系[モードやストリートアメカジのファッションリーダー、千葉県民多い]18.4%、(3)一球入魂系[おしゃれ無関心な部活派、神奈川県民多い]16.5%、(4)ザ・ミーハー系[トレンド追従のおしゃれ族、東京都民多い]12.9%、(5)量産型ガーリー系[ガーリー〜フェミニンなおしゃれ族]12.6%、(6)個性派[モード系/原宿系のファッショニスタ]7.8%、(7)サブカル系[おしゃれ無関心、埼玉県民多い]5.5%。分け方は分からないでもないが、基準が交錯して観念的な誤解も多く、マーケティングに使うには無理があるかもしれない。

 ライフスタイルをファッションタイプにつなげるには価値観軸を見極めるべきで、JKとて例に漏れない。JKもののアニメやコミック、ファッション誌の読者特集などから当社で価値観軸を想定し、主要なファッションタイプをプロットしてみた。ばっくりした試案だが、「新世紀JKリアル図鑑」の7タイプと見比べると全体観がつかめるのではないか。

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 ファッションタイプ分類については多少異議ありだが、JKライフスタイルレポートとしてはリアリティがあって好感が持てる。どちらのレポートもどなたでもダウンロードできるから、一読をお勧めしたい。

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