小島健輔の最新論文

販売革新2014年9月号 特集「成果の出たリニューアル」掲載
『SCリニューアルの成功原則』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 

 アベノミクスで景気が上向いた昨春以降、停滞していたSCのリニューアルが一気に動き出した感があるが、とりわけ今春は注目リニューアルのラッシュとなった。その背景に在るのは景気の浮揚による投資ファンド回帰など資金調達の潤沢化、国内外の新業態/有力業態の供給拡大に加え、定期借家契約期間満了が重なった事が大きいと思われる。

■二極化するリニューアル

 最近のリニューアルは、勢いに乗る有力SCがさらなる売上拡大を図る(増床を伴う事も多い)ケースと追い詰められた負けSCが外部の資金やノウハウで再生を図るケースに二極化している。前者ではラゾーナ川崎やららぽーとTOKYO-BAY、阪急西宮ガーデンズなど、後者ではモレラ岐阜やユニモちはら台などが挙げられるが、前者が手堅い結果を出しているのに較べれば、後者は成否こもごものようだ。
 前者では、13年春〜夏にテナントの半数以上を入れ替えて全面リニューアルした「ラゾーナ川崎」がリモデル前の703億円から750億円を超え(いずれもビックカメラを除く)、今春のリニューアルでテナントの3割を入れ替えた「阪急西宮ガーデンズ」は15年3月期の売上目標を760億円に上方修正している(リニューアル前の13年度の売上は751億円)。
 後者では、競合激化で年々、売上が低下して11年には166億円まで落ち込み、テナントも開業当時の225店から180店まで歯抜けていた「モレラ岐阜」が12年9月の外資SPAなど56店を新規導入した大規模リニューアルで浮上し、改装後の一年間で41.5%増の245億円を売り上げた事が注目されるが、これは投資ファンドと運営会社のリレーションが奏功した例外的なケース。法外な優遇条件で目玉となる外資SPAを取り込んだゆえの奇跡と言えよう。
 90年代の開発ラッシュと00年代の大型モール化でSCの優劣二極化が著しく、勝ち組SCが定期借家契約を立てに積極的な入れ替えを進めて売上を伸ばす一方、負け組SCはテナントの引き止めに精一杯で積極的な入れ替えが出来ず、一段と格差が開く傾向にある。負け組SCが浮上するには大規模投資が不可欠で、外部の資金とノウハウを導入して起死回生を図るしかないが、商圏と立地が衰退している場合はそれも効かないようだ。
 勝ち組SCと負け組SC、それぞれの置かれた状況を考慮してリニューアルの成功原則を探ってみたい。

■勝ち組SCリニューアルの成功原則

 勝ち組SCにとって課題となるのは1)顧客満足度向上による現状ポジション固め、2)戦略的ポジション移動による将来性の確保、3)区画生産性向上による家賃収入拡大、4)オムニチャネル対応の設備投資と契約体系改定、だと思われるが、その優先順序はデベの認識や財務状況で異なる。
 1)顧客満足度向上による現状ポジション固めは、モールとパブリックスペースのリフレッシュやWi-Fi導入、不足業種・業態の導入やフード・サービスの拡充に加え、旧式なSCでは加圧排煙空調システムの導入による防火防煙の刷新と店内環境/レイアウトの向上も図られるべきであろう。
 2)戦略的ポジション移動による将来性の確保は、商圏の成熟や社会移動による世代構成や世帯所得分布の変化、交通環境の変化による来店手段構成の変化などにアップデイトするもので、世代対応や価格帯対応によるテナントの入れ替えに加え、駐車場/駐輪場の収容力拡大や出入りレイアウトの改修が図られるべきだ。どちらも開業以来、大きくはアップデイトしていないSCが意外に多く、来店客調査や商圏調査でギャップの大きさに驚かされる事さえある。
 3)区画生産性向上による家賃収入拡大は、区画レイアウト図を坪販売効率や坪家賃収入で色分けすれば一目瞭然で、生産性の低い区画を高いテナントに入れ替えれば確実に家賃収入は向上する。気をつけなければならないのは‘原因’の特定で、個別テナントの問題と言うより業種業態や客層、区画大小の繋がり方に主要因が在る場合も多い。
 4)オムニチャネル対応の設備投資と契約体系改定
 テナントチェーンのオムニチャネル販売はもはや止め難い潮流で、有力チェーンのEC比率は軒並み二桁に乗り、タブレット接客による欠品時のサイト誘導も加速度的に広がっている。また、EC商品の店舗受け取りや店舗在庫のEC向け発送も広がりつつあり、これらに対応する後方出荷ヤードの整備や課金体系の確立が危急の課題となっている。
 これらに加え、増床が最も確実な売上拡大策だが、既存SCの多くは敷地も容積率も一杯で拡張余地がない。隣接地の買収や地上権の確保、地域によっては空中権の買収で増床するのがベターだが、増床が不可でも後方区画や昇降導線、非難階段の移動で賃貸面積や回遊性を向上させる手もある。その場合は「既存遡及」の罠に注意すべきで、建築したゼネコンの意見も聞いて拙速を避けたい。

■負け組SCリニューアルの成功原則

 負け組SCにとっては優位のライバルSCに張って正面突破するのは困難だから、なんらかの迂回策を画策する事になる。その基本的な方向は商圏の選択的拡大か足下商圏の深堀かという選択になる。
 優位のSCに張って商圏を拡大するにはカテゴリーか客層の特化、またはその両方が必要で、『子育てママのためのキッズ関連特化』とか『愛犬家のための全面ドッグフリーSC』とか『熟年世代のための旅行とガーデニング特化』など斬り込んだコンセプトで広域から集客し、オムニチャネル販売(キュレーションEモールが決め手)で器と商圏を超えたとんでもない売上を稼ぐ手もある。
 もっと一般的なのが足下商圏の深堀で、SSMと自然食品、趣味食品、和洋菓子、リカーなどと産直市場、ドラッグ、コスメ、日用雑貨、肌着、レッグウェア、カジュアルシューズ、ディリーカジュアル、各種サービスなどに集中して足下占拠率向上に徹すると、びっくりするぐらい売上が伸びる。一時、注目されたライフスタイルセンターは成熟した高級住宅地に限られるから、余程条件が揃わない限り夢見ない方がよい。駅裏立地などでは前者も効くが、駅から離れた住宅立地では後者の選択が確実だ。
 中小SCはこのどちらかで浮上するが、難しいのが大きな負けSCだ。図体が大きいだけ広域商圏が必要だが強力な優位SCなどに挟まれて商圏が広がらず、販売効率が低下してテナントが歯抜けしてしまった大型SCを浮上させる手はウルトラCしかない。
 ウルトラCの一番はアウトレットモール化、二番はバリューモール化だ。通常のSCとしては浮上困難でもアウトレットモールに割り切れば奇跡が起こせるが、中心商業地区に近すぎてはブランドが揃わないから立地が限定される(幕張駅前の三井アウトレットパークのような例外もあるが)。
 バリューモールはかつてのカテゴリーキラー集積型パワーモールと違い、低価格な大型SPA群を核にモールを構成するものだ。その目玉となるのが「H&M」や「フォーエバー21」などの外資SPA、「ユニクロ」や「無印良品」などの国内SPAだが、どちらも出店条件がシビアで、有力外資SPAを導入するにはオール込み8%の攻防となる家賃条件に加え、歯抜けSCの再生では相当期間のフリーレントやB工事費負担が要求されるから、相当の資金負担力が前提となる。
 そんな資金力がないならウルトラCは成立しないから、まずは投資ファンドや大手デベなどの後ろ盾を確保する必要がある。それが出来ないなら商業施設としての再生は困難で、売却か不動産としての転用を探るしかない。都心部を除き少子高齢化で消費が萎縮する今日、無理と見たら追加投資で首が回らなくなる前に見切る事も必要なのではないか。

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