小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年11月06日付)
『「賞味期限管理」してますか?』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 アパレル商品の価格を決めるのは売り手の思い込みではなく「需・給」と「鮮度」だというのが現実だ。いくら良い品でも供給が需要を上回れば売れ残ってしまうし、“賞味期限”が過ぎれば値段は通らなくなる。「需・給」は読めなくても「鮮度」が刻々と落ちていくことは誰でも解るが、問題は食品のような「賞味期限管理」の業界慣習がないことだ。
 アパレルの賞味期限は数週間から数ヶ月と生鮮食品に比べれば長く、「賞味期限管理」も生鮮や弁当・惣菜の時間単位、日配食品の日単位と比べれば週単位とのんびりしたものだ。そのせいか食品業界のような日々朝夕の「賞味期限管理」がないがしろにされ、気が付いた時には鮮度が落ちて値段が通らなくなっていることが多い。それでも“正価”に固執して期末まで腐った商品を引っ張る感覚は相当な鮮度音痴と言わざるを得ない。
 賞味期限が迫れば値引きしてでも売り切る他はなく、「賞味期限管理」が不可欠な売場作業になるが、食品では常識でも衣料品の売場では全く履行されていない。本部はPOSで掌握していても売場ではアバウトにしか掌握されず、本部が値下げを決断して初めて探されピッキングされる。その前にピッキングして“売り切り編集”にかけるべきだが、そんなスキルのある衣料品売場は滅多に見かけなくなった。
 売れ残ってから期末に値引きするより期中にキックオフや小幅の値引きで機動的に消化を図る方が歩留まり率は格段に高く、当社主宰SPAC研究会メンバーでは値引きロスで5.6ポイント、商品回転で1.9回転もの格差があった。もっと劇的に値引きロスと残品を圧縮するのが、不振SKUのみ二次展開店舗に移動して値引き販売し、残したSKUはプロパーで売り切る手法で、当社主宰SPAC研究会メンバーの平均で7.1ポイントも値引きロスを減らす効果があった。
 POSやAIも現場のリアルな運用に繋がらないと実効をあげられない。「賞味期限管理」を毎週のルーチンにして“売り切り編集”を徹底すれば値引きロスや残品を半減できるのにと思うが、どうしてギョーカイは注力しないのだろうか。
 明日7日には売場構築やフェイシング管理から売り切り編集まで一貫する『VMD技術革新ゼミ』、来週15日にはMDの組み方からDBと在庫コントロール、売り切り管理まで一貫する『マーチャンダイジング技術革新ゼミ』を開催します。過剰供給で過半が売れ残る中、物を作るより売り切る方が重要なのではありませんか。

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