小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2017年12月5日付)
『ZOZOSUITかTBPPか』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 スタートトゥデイが無料配布(200円の一律送料は必要)を始めた伸縮センサー内蔵の採寸用ボディスーツ「ZOZOSUIT」は注文が殺到して二ヶ月待ちの人気と聞くが、その先進技術や無償配布の大判振る舞いもともかく考えさせられるところが多い。
 まずは「ZOZOSUIT」が衣料品購入におけるサイズ選択の決定打となるかだが、素材の物性やパターン、フィットの好みを考えれば、如何に精密に採寸しても実寸データだけでは決定打にはなるまい。静電容量を利用した伸縮型ソフトセンサーによる精密な計測という最新テクノロジーは評価されるが、「究極のフィット感」など追求されては自分流の緩い崩しも難しくなるという拒絶反応も無視出来ないのではないか。恐らくは近々にベールを脱ぐPB「ZOZO」のスタイリングやパーソナル対応の生産システムと関連しているのだろう。
 サイズのミスフィットによる返品がもたらすコストや減耗(返品の再販不能コンディション率は13%以上)を回避するには、ZOZOほど多くのブランドを販売して年間取扱高が3000億円に迫るECモール事業者なら、お直しサービスも合わせる「TBPP」をFC展開(結構な‘利権’として売れる!)する方が確実だと思う。一人一人のフィットの好みを反映するには服のパターンや素材の物性はもちろんメンタルな装い気質に応える‘人が人に接して聞く’採寸とお直しが不可欠で、どんなに精密でもボディサイズを掴んだだけで解決するものではない。それでも「ZOZOSUIT」の無料配布という力技に踏み切ったのは、あくまで‘店舗’というコストのかかる接点を回避してECで完結するという戦略意志の表明と受け取るべきだろう。
 店舗小売業から発した経営者なら‘店舗’という‘人’との接点を何処かで活かすオムニチャネル戦略を構想するだろうが、前澤友作氏はそんな固定観念に囚われない‘自由人’なのだから、外野の想像を超えた‘超戦略’を構想しているに違いない。それでも‘フィット’はボディサイズだけでは捉え切れないメンタルな装い気質に左右される、と思うのだが・・・・・

論文バックナンバーリスト