小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年05月07日付)
『人真似と棚入れはドブ金』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 家事負担の軽減を謳って185万円の全自動衣類仕分け畳み機「laundroid」(ランドロイド)の発売を目指していた(株)セブンドリーマーズラボラトリーズが開発に行き詰まって破綻した。たとえ発売にこぎつけていたとしても、画像解析AIとロボットアームを駆使しても下着とカットソーなどしか扱えず一枚の処理に5〜12分もかかるのに、幅87cm×高さ220cm×奥行き63cm、150kgもの大型冷蔵庫並みにバカでかいマシンをリネンルームに置く茶番に付き合う家庭は限られたに違いない。
 画像解析AIはともかくロボットアームは人間の動きをトレースするだけで、上手くプログラムしても一人力を超えられず、無駄な動きも多い。人体機能の多くは生体維持と生殖を前提としたもので、人真似ロボティクスの作業効率は低位にとどまる。「ランドロイド」にしてもロボットアームの処理速度は人間の数十分の1にとどまり、実用の域には遠かった。
 千円ちょっとで買える簡易な衣類折り畳み機(畳み板に三方向のガイドパネルがついたもの)の方がはるかに高速で正確に処理できるから、「ランドロイド」が畳み直しに翻弄される小売店に導入されることもなかっただろう。縫製工場やクリーニング店ではシャツやジャケットなどアイテムに特化した専用プレス仕上げ機や畳み仕上げ機が活躍しているから、トロい「ランドロイド」が参入する余地はなかった。
 店頭の棚入れ棚整理にしても物流倉庫のピッキングにしても、人真似ロボティクスと大差ない人真似発想の自動化では一人力を出ることはなく、効率化には限界がある。生体維持と生殖に大半の機能が集中する人体の作業プロセスをそのまま自動化しては効率化もコスト削減も難しいが、人真似発想を捨てて前提そのものを組み替えてしまえば視界は一気に開ける。
 売場の棚入れをロボットにやらせても一人力に足らずお客の邪魔になるだけで、アナログな後方傾斜補充の方がはるかに効率的だ(先出し後入れにもなる)。ZOZOやアマゾンが巨大な倉庫スペースに投資するのもユニクロがEC特科の有明自動倉庫に注力したのも、はっきり言えばドブに金を捨てるだけの茶番でしかない。「棚入れ」する「在庫預かり」や「ダム型物流」に固執するから膨大で非効率な物流設備投資が必要になるのであり、受注した宅配情報でスルー物流すればフルフィル投資も運用コストも劇的に圧縮できる。
 『棚入れしたら負け』は物流の基本原則だし、『人真似しては一人力を出ない』も自動化の大原則だ。あなたの会社では視野狭窄に陥って無駄な投資をドブに捨てていませんか!!!
      
※詳しくは最近の論文群を参照されたい。

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