小島健輔の最新論文

商業界オンライン 小島健輔からの直言
『「店内撮影禁止」はもう通用しない!』 (2018年03月28日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

SNS時代のいまさら「店内撮影禁止」はどうなの?

 一昔前までスーパーや家電量販店はもちろん、百貨店や専門店でも「店内撮影禁止」の表示が堂々と張り出され、某スーパーなどメモを取っているだけでもマネージャーがぴったり後ろについて監視し、写真でも撮ろうものなら警備員が飛んで来たものだが、今や様変わりした感がある。

 ショールーミングが当たり前になって先進的な家電量販店など『ネット価格と比べてください』とスマホのバーコードスキャンを推奨し、SNS発信がウェブルーミング集客につながるとして「店内撮影ご自由」をうたう店が急増し、いまだ小うるさく「店内撮影禁止」をうたう店でも「インスタポイント」を設けて写メを推奨している。変われば変わるものだと思うが、いまだ頑強に「店内撮影禁止」をうたうスーパーや百貨店や、駅ビルやSCも少なくない。そんな“一方通行”がいつまで通るのかという負い目が指摘される。

店側は顧客を撮りまくっている

「Amazon Go」(レジレスコンビニ)が百数十台のカメラで店内の棚も顧客の一挙手一投足も撮りまくって画像認識AIで検証しスマートゲートで精算するかと思えば、トライアルカンパニーの「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」は3753㎡と大きいこともあって700台ものカメラが棚も顧客行動も逐一撮影し、スマートレジカートでの精算を検証している。

 大流行の「レジレス精算店舗」はともかく、一般のコンビニでもATMやレジ周りはもちろん棚列ごとにカメラの砲列が顧客の一挙手一投足を監視しているし(坪当たり台数はアイランドシティ店より多いかも)、ビッグデータ分析にも流用しているに違いない。百貨店やSCとて防犯とビッグデータ活用を図ってカメラが増え続けている。

 顧客としては『撮影しても良いですか』と許可を求められた覚えもないのに一方的に撮りまくられ、どこでどう使われるか分からない不安がつきまとう。なのに「店内撮影禁止」と一方的に強いられては、いずれ炎上は避けられない。『店側だって一方的に撮ってるではないか』と反論されては引っ込めるしかないだろう。

「店内撮影禁止」のサインは今すぐ降ろそう

 FACEBOOKが顧客データの流用を責められて炎上しているが、レジレス運営やビッグデータ活用を狙って大量のカメラを設置していけば、いずれ対岸の火事では済まなくなる。法的対応を整備してトラブルを未然に防ぐのが一番だが、顧客に「店内撮影禁止」を強いて藪蛇を招くような愚は避けるべきだろう。

 顧客のカメラを監視しても、今どきの撮影はスマホが大半なのだから意味をなさない。そうかといって「店内スマホ利用禁止」などとうたおうものなら、炎上だけでは済まず全面的なボイコットを招いてしまう。SNS投稿が消費を動かしモバイル決済がレジレス時代の扉を開く今日、そんな自殺行為に走る店はないだろうが、昔からの習慣で「店内撮影禁止」をうたい続ける店は少なくない。レジレス精算やビッグデータ活用を目論むのなら「店内撮影禁止」のサインは即刻、降ろすべきだろう。

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