小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年06月12日付)
『ECってもう終わりかも』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

7235ブログ

     
 無謀な大博打の敗戦処理に四苦八苦するZOZOにしても、大博打がなかったとしても屋台骨のフルフィルは逆ザヤになりかねない状況だし、SHOPLISTなんかもろ赤字転落してしまった。ヤマト運輸が火をつけた宅配料金の値上げラッシュに倉庫作業人件費の上昇も加わって物流コストが高騰し、ECはあっという間に儲からないビジネスに転落した感がある。
 実際、宅配料金値上げで大口法人向け包括料金は24〜46%もアップした。ZOZOの荷造運賃単価は二期で46%、倉庫作業人件費単価は15.6%、物流倉庫賃貸単価も21.4%上昇し、一出荷あたり物流単価は792.6円から1041.3円に跳ね上がった。結果、取扱高対比物流費負担率は8.5%から11.6%に上昇している。同じくSHOPLISTの物流単価も一期で552円から797円に跳ね上がり、取扱高対比物流費負担率は11.5%から15.7%に跳ね上がった。
 当社が推計した米国アマゾン社の取扱高対比物流費負担率も年々高騰して13.3%に達して逆ザヤ状態に追い込まれており、ECプラットフォーマーはフルフィルで収益を上げるのが困難になっている。
 ならば在庫を預かって出荷するフルフィル型にこだわらず、SHOPLISTのように出品者から移送された受注在庫を仕分けて出荷するだけの宅配出荷委託型(それにしては41%も手数料を取って赤字)、アマゾンの非FBAマーケットプレイス型のように受注と決済だけのドロップシッピングに徹した方が物流費の逆ザヤに苦しまなくて済むと思うが、過去の成功体験が視野を塞いでいるのだろう。
 バックヤードの物流に限らず、フロントでも様々なAIアプリや決済サービスが氾濫して手数料負担が肥大しており、17年までのぼろ儲け状態がバブルだったかの感さえある。
 その一方、ECを手がける店舗小売業者は一括配送のB2B店舗物流でB2C宅配物流のコストを回避するC&C(店舗の物流拠点化)を拡大しており、EC注文品の店受け取りや店在庫引き当てによる店出荷で物流コストを切り下げ、顧客も送料負担を回避して速く受け取れフィッティングやお直しのサービスも受けられる。
 ECの急拡大で採算が悪化しお荷物になった感があった店舗網だが、宅配料金値上げとC&Cで攻勢に転じ、EC事業者は守勢に転じている。そんな情勢の変化を詳しく解明し、C&Cの具体的手法を提ずるとともに、EC事業者の生き残り策も提ずるのが19日に開催する『攻守逆転の決定打 C&C戦略ゼミ』なのだ。店舗小売業はもちろん、逆風に晒されるEC事業者にも是非とも聞いてもらいたい。

論文バックナンバーリスト