小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年05月24日付)
『オフプライスストア開発の要は』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 過剰供給と需給ギャップで過半が売れ残るアパレル流通への回答はオフプライスストア(OPS)に他ならないが、その離陸要件は三つあると思う。それは
 1)ブランド側の二次流通アレルギーをどうクリアするか
 2)高鮮度・高付加価値の放出商品をいかに調達するか
 3)調達した商品を如何に速やかに販売消化するか
に尽きるが、実現する方法はOPSが百貨店を超えるメジャー流通となっている米国と必ずしも同じではない。
 ブランド側(メーカーやエージェント)の二次流通アレルギーを解消するには、米国のような値引き訴求だけでなく、直営アウトレット店以上に見栄えが良く、店舗運営や接客の質も高いアップスケールなOPSが登場する必要がある。アウトレット店でも「グッチ」などハイブランドはプロパー店と一見は大差ない内装や接客、品質保証でブランドイメージにも配慮しているが、そこまではともかくプロパー店に一見は遜色ない内装と陳列、寄せ集めの品揃えだからこそ丁寧な接客が不可欠だと思う。
 二次流通アレルギーを決定的に解消するのが一次流通で著名な小売業者による運営で、ノードストロムの「Rack」は自社百貨店の売れ残り処分からスタートして今や246店舗と百貨店の133店舗を凌駕し、51.8億ドル(坪効率は百貨店の1.52倍)を売り上げて全社売上の33.5%を占める稼ぎ頭に成長している(全て19年1月期)。我が国でも百貨店やセレクトショップの大手が手がければ魅力的なブランド商材が集まり、画期的な成功を収めると期待される。立地も、多くのブランドがアウトレットストアを並べるメジャーなアウトレットモールならアレルギーも和らぐのではないか。
 鮮度が高くブランド価値のある商品をどう入手するか。オフプライス商材は「色・サイズが揃った未出荷商品(packaway)」「色・サイズが欠けた売れ残り商品」、「オンシーズン品」「期末品」「持ち越し品」に分けられるが、それぞれに調達ルートが微妙に異なる。マル秘なノウハウだから、詳しくは6月14日に開催する『オフプライスストア開発ゼミ』で聞いてほしい。
 調達した商品を如何に速やかに販売消化するか。要は調達手法と編集陳列手法の組み合わせで、「持ち越し品」ばかり調達していてはTJXやロス・ストアーズのように6回転なんて高速回転は望めないし(持ち越し品主体のバーリントンは4回転強にとどまる)、POS依存に堕して編集陳列スキルを失ったアパレルチェーンには手の出しようがない。
 これもマル秘ノウハウだから詳説はできないが、基本はバーゲン売場運用と同じく「ブランド」➡︎「テイスト」➡︎「アイテム」➡︎「サイズ」または「カラー」➡︎「均一価格」で、そんな運用を前提とした什器構成と売場レイアウトが要になる。顧客のセルフ選択を容易にし少人数のスタッフで接客効率を最大化する姿見やFR、レジカウンターや後方ストックの配置にも特有のノウハウがあるから、これらも『オフプライスストア開発ゼミ』でビジュアルに解説しよう。

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