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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『店はECのパシリにされ使い捨てられるのか』 (2018年10月12日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 ユニクロがEC受注に店舗在庫を引き当てて最短1日で店で受け取れるC&C(クリック&コレクト)に踏み切ったが、欧米のアパレルチェーンではアマゾンなどEC専業者に対抗して顧客利便を競うべく、店在庫の引き当てと店受け取りはもちろん、店出荷まで駆使する企業が広がっている。

店はECのパシリになる

 ZARAが世界の全店でEC受注の店在庫引き当てと店出荷に踏み切ってC&Cを加速させ先進国の店舗網を絞り始めたのに続き、売れ残り在庫に苦しむH&MもECシフトを決断して18年中にECが拡大する先進国で140店を閉めると発表。それに間髪を入れず、ユニクロもEC受注の店在庫引き当てと店渡しに踏み切った。そのドミノ倒しが意味するものは店舗販売からECへのシフトと店舗のC&C拠点化に他ならない。

 C&CとはECを軸に店舗を受け取りやお試し(専門受取所も含む)、出荷の拠点とするもので、ECのプラットフォームに店舗を乗せて顧客利便の拠点とし、あるいはショールーム化して在庫効率を極大化するものと考えられる。自社ECのプラットフォームで顧客と在庫が一元運用されることが前提だが、店舗にはさまざまな負荷がかかる。

ZARAのピッキングマシン

 店渡しも店在庫の引き当てもピッキング作業を要するし、店出荷すれば店は物流センターと化してしまう。ZARAの未来店舗やウォルマートでは自動ピッキングマシンを導入して店渡しはセルフ化しているが、店在庫のピッキングと出荷は人海戦術に依存するしかない。閑散期はともかくピーク時期には店舗運営もC&C業務も忙しくなるからパンクは避けられず、17年クリスマス商戦のウォルマートみたいなパニックに陥りかねない。

 EC受注に店在庫を引き当てれば売れ筋が抜かれて店舗売上げが減るし、在庫管理精度も狂ってしまう。それでもC&C拠点化を進めるのはEC専業者の受け取り利便やライバルチェーンのC&Cに対抗せざるを得ないからだが、これでは店がECのパシリと化してしまう。さすがに店在庫を引き当てた分は店舗売上げに計上するチェーンが多いが(店受け取り分も店舗計上するケースも見られる)、在庫管理精度や貢献評価の課題は未解決のままだ。

店は使い捨てられる?

 先行するチェーンはEC主導のC&Cに踏み切る一方で不採算化する店舗網の整理縮小に転じており、店はECのパシリにされ使い捨てられるかに見える。

 INDITEXは17年10月末をピークに減店に転じ、C&Cが拡がる欧州では100店近く減している。ユニクロは国内ではECを30%近く伸ばして総売上げの7.3%に拡大した一方、直営店舗数はピークの840店から既に784店まで減している。米国でもEC比率が27.9%に達したアバークロンビー&フィッチは業績が回復に転じても店舗数の減少に歯止めをかけないでいるし、EC比率が21.8%に達したルルレモンは店舗売上げも堅調なのに店舗数を減し始めている。

 初期投資も運営コストもかさみ損益分岐点が高く、在庫が分散してロスが肥大しがちな店舗はECに比べ格段に経営効率が低く、ECの拡大とともに売上げの減少も避けられないから計画的に整理撤退していくしかない。とはいえ店舗の撤退は除却損や現状復帰費用、定借満了前の撤退では少なからぬペナルティも生じるから、EC拡大による損益やキャッシュフローの改善と店舗網の撤退損失を計画的にバランスする必要がある。

『店舗販売かECか』という議論は既に過去のものとなり、ECが主流となる中でいかに損失を吸収しながら店舗網を整理撤収していくかが最大の経営課題とならざるを得ないが、多くの企業は衰退していく店舗販売にしがみつき、あるいはその道筋を計算しないままECを闇雲に拡大し、大量の店舗網が負の資産となっていくのを放置したままだ。

店は姿を変えて生き残る

 ECが流通の覇権を握っても店舗が無くなるわけではない。ただ、絶対数は急激に減少し、残る店舗も姿を変えていくだろう。その方向は(1)ライフスタイル提案やテザリングのハブを担う大型旗艦店、(2)お試しや受け取りのC&Cを担う小型衛星店、(3)在庫を積まないショールームストア、(4)顧客開発を担って巡回するポップアップストア、の4様となると思われる。

 それに伴い出店戦略も一変せざるを得ないし、商業施設の側もゾーニングや課金方式の変更、ポップアップストアの受け入れを迫られる。ECが覇権を握る中、店舗も商業施設も一変せざるを得ないのだ。

※筆者の近著『店は生き残れるか ポストECのニューリテールを探るを未読の方はぜひ、御一読いただきたい。

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