小島健輔の最新論文

ファッション販売2001年7月号掲載
『最新リミックスMD技法のすべて』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

メジャー化し深化するリミックスMD

 ひとつのテイストでトータル・コーディネイトするブランドMDが定着して久しく、近年ではそれに飽き足らない人々に応えてセレクトショップが拡がってきた。加えて、最近のベーシックMD型SPAの氾濫で平板なモノ・テイストMDに食傷する人々が急増し、それがまたセレクトショップの裾野を拡げている。
 ブランドショップのMDがモノ・テイストのトータル・コーディネイト、SPAのMDがモノ・テイストの単品コーディネイトであるのに対し、セレクトショップのMDはひとつのベース・テイストの上に幾つかの異なるテイストをトッピングする単品コーディネイトの性格が強い。あくまで一般論だが、ブランドショップやSPAに比べてセレクトショップのMDにはテイストのコントラスト、すなわち立体感が豊富で、着回しの巾も広い。これがリミックスMDの特色なのだ。
 となれば、ブランドショップやSPAでもリミックスMDを取り入れて品揃えとウェアリングに立体感を加えようとする動きが広まって当然で、既にフランスのブランドショップではセレクト商品を加えて自ブランドの魅力を強調する手法が一般化している。日本でもエポカ・ザ・ショップやラフォーレ原宿のジュエ・ア・ラ・プーペ(インエ+セレクト雑貨)のようにその動きが拡がりつつあるが、もっと進んでブランドMDでありながら異なるテイストのグループでセレクトショップ的リミックスMDを組むロぺ・ピクニックのようなケースさえ出てきている。
 異なるティストの商品を組み合わせればリミックスMDになるという単純なものではなく、ベース・テイストを共通させた上で計算された距離のテイストをトッピングしたりスパイスさせるテクニックが不可欠。しかも、各アイテムでテイストを分担する単純なリミックスではウェアリングの立体感や味わいは限られるから、複数のテイストがミックスされたアイテムどうしを組み合わせる濃い味リミックスが主流となってきている。  

アイテム・インとアイテム・オン

 リミックスMDには、ひとつのアイテムの中に幾つかのテイストをリミックスするアイテム・インの手法、テイストの異なるアイテムを組み合わせてリミックスするアイテム・オンの手法がある。完全なモノ・テイスト商品は例外的だし、味わいが平板でコーディネイトしても立体感は限られるから、アイテム・オンといっても多少はアイテム・インされた商品どうしの組み合わせになる。 
 セレクトショップのリミックスは凝ったアイテム・インのセレクト商品と、やや単純なアイテム・インのオリジナル商品で組まれるのが定石で、濃い味だが高価でフォローの効かないセレクト商品と薄味だが手頃でフォローも効くオリジナル商品の組み合わせで成り立っている。カジュアルなセレクトショップではセレクト商品の比率が三〜四割程度でリミックスも単純だが、インポートセレクト主体のハイクラスなセレクトショップではセレクト比率が過半から八割にも達してリミックスも複雑だ。 
 凝ったアイテム・インのセレクト商品というとコレクションブランドがその頂点に立つが、ファクトリーブランドやリメイク商品、デッドストック商品もその役割を果たす。気を付けなければいけないのは、同じインポートセレクトと言っても一般のメーカーブランドはコレクションブランドと比べるとアイテム・インが単純だし、デッドストック商品でも同様な格差があるということだ。セレクト仕入れによるリミックスはやはり、価格相応と考えるべきだろう。 
 ではオリジナル商品ではどうかということになるが、薄味のベース・アイテムとはなり得ても、インポートセレクト並みの凝ったアイテム・インはとても期待できない。セレクト大手御三家のオリジナルを見てもインポートセレクトとの味わいの差は歴然で、オリジナル比率を上げ過ぎれば品揃えの魅力は一気に褪せてしまう。その点、一部のメーカー系セレクトショップのオリジナル商品の アイテム・インの味の濃さは特筆物だ。 
 効率や収益を無視しても凝ったリミックスを追求するなら、コレクションブランドだけで構成するのがベストだ。もちろん、ブランド編集などとんでもなくバカらしいから、コーサムイのような凝りに凝ったルック回転のワードローブに編集すべきだが、デリケートで先鋭な美術的感覚が必要。ブランド揃えに逃げないこの手のコレクション・セレクトショップは欧米には少なくないが、日本市場では超レアな存在。

リミックスMDの設計と展開

 リミックスMDの組み方はアイテム・インでもアイテム・オンでも大差はない。まず、1)素材感やシルエットを総合した“こなし”たるベース・テイストを定め、2)これにトレンドを現わすイメージ・テイストを重ねる。50’sをフェミニンにこなす、ミリタリーをエレガンスにこなす、80’sをセクシーナチュラルにこなす、といった具合だが、この“こなし”方がブランドやショップの基本的なキャラになる。
 同じトレンドを追っても“こなし”が違えば別の価値が生まれるし、類似した“こなし”の商品が氾濫すれば値崩れしてしまうから、“こなし”の鮮度には徹底してこだわらなければならない。109の人気ショップやセレクトショップの消長を見ていると、人気のキーになっているのはこの“こなし”だと解る。薄味とは言えオリジナル商品はこの“こなし”を厳密に表現しなければならないから、素材やシルエットから付加加工や付属使いまで、とことんのこだわりが求められる。
 イメージ・テイストはラックやコーナー毎にひとつにまとめるケースが多いが、ふたつをクロスしたり平行する手法も結構見られる(2、3)。後者の場合は大きなラックで展開するとボケてしまうから、シングル一本ぐらいのコンパクトな展開にまとめるべきであろう。
 通常のベース・アイテムはここまでで成り立つが、凝ったアイテム・インにするには3)素材感や柄、ディティール等でトッピング・テイストを加える。アイテム・オンでは、このトッピング・テイストを効かせたアイテムを対極的、あるいは近似的にリミックスしてウェアリングのコントラストを訴求する。対極的な例としてはガーリッシュvsボーイッシュ、マスキュリンvsフェミニン、パンクvsロマンティック等、近似的な例としてはフェミニンvsロマンティック、グラマラスvsエレガンス、ミリタリーvsサファリ等があげられよう。これらの場合、ふたつのトッピングをラックの両端からクロスして、あるいはふたつのトッピングを交互にかけながらルック回転配列する陳列が効果的だ。
 さらにリミックスを面白くするには、4)柄や付加加工でピンポイントのスパイス・テイストを加える。これはインナーアイテムや雑貨でアイテム・オンするケースが多いが、付加加工で凝ったアイテム・インを仕組むことも出来る。アイテム・オンはコーディネイト陳列に差し込んで行うが、容易にラックの鮮度を強調出来る効果的な手法だ。最近のセレクトショップでは、バッグをハンギングで効果的にアイテム・オンしているケースが目に付く。
 これらのリミックスを仕組むにはテイスト・リミックス図を書いてだいたいの構造を決め、これに基づいて素材ボードを作成するのが定石だ。出来れば、素材にはプリーツやフリル、ボンディング等の商品化加工、ステッチやパイピング、刺繍やスパンコール使い等の付加加工も加えて、ウェアリングのイメージを明確にしたい。このような手順を踏んで企画・開発やバイイングにあたるなら、かなり正確なリミックスが実現されるのではないか。
 以下に今秋冬期のテイスト・リミックスをマーケット毎にひとつづつ例示したので、リミックスMD設計の参考にしていただきたい。

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