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ブログ(アパログ2018年10月26日付)
『温暖化?寒冷化?ホントは』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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今年の夏は世界的な酷暑となって『地球温暖化はいよいよ危機的状況に!』などと論評されているが、昨冬は『50年に一度の厳冬』と騒がれたことも忘れるべきではない。「温暖化」ではなく寒暖の振れが大きくなっているのが実態ではないのか。

 近年の平均値(81〜2010年平均)と比べると東京地区の月別平均気温の最高最低格差は昨年、今年と加速度的に大きくなっている。平年値の21.2度が昨年(16年9月〜17年8月)は21.5度、今年(17年9月〜18年8月)は23.6度と驚くほど拡大しており、『50年に一度』『百年に一度』級の異常気象が頻発するのも頷ける。

 季節による寒暖のブレが急速に大きくなるのは気象史学的には安定期から変動期に映る兆候で、滅多にないような異常気象が頻発し、「温暖化」というより「寒冷化」、いわゆる「ミニ氷河期」に遠からず移行する可能性が高いと気象学者の多くが考えている。それが何年先かは予見が難しいが、14〜19世紀の寒冷期、とりわけ飢饉が多発した1645〜1715年の「江戸小氷期」や天明〜天保期(1781〜1836年)の寒冷化が推察される。

 そんなことは皆さんの関心外かもしれないが、寒暖の振れが大きくなり異常気象が頻発すれば農業が打撃を受けて食料品のインフレを招き、衣暦みも一変してしまう。全国スーパー売上の食料品は異常気象によるインフレで4ヶ月連続して前年を超えているが、その支出による圧迫もあって衣料品は9ヶ月連続して前年を割っている(食料品売上は衣料品の8倍近く、食料品支出が増えると衣料品支出が大きく食われる)。

 エンゲル係数が上がって一番に圧縮されるのは衣料支出だし、月度の販売指数もアイテム構成も大きく変化し、前年までの指標があてにならなくなってしまう。そんな中で調達コストの切り下げを図って、遠隔地での大ロット計画生産を拡大するのは極めてリスキーだ。コストは上がっても調達を引きつけ、近接地での多頻度小ロット生産で予測がつかぬ天候に対応する方が賢明だと思う。

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