小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2017年12月7日付)
『ジーンズ専門店とNBメーカー』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 ジーンズカジュアルチェーンの低迷要因を検証していて気が付いた事がある。世界的な‘アメカジ’の低迷やジーンズ離れ(とりわけ女性で顕著!!)に加え、ジーンズカジュアル専門店を支えて来たNBジーンズ業界の凋落によるサプライ体制の綻びも低迷に輪をかけたのではなかろうか。
 70年代のブティックチェーンとマンションメーカーの繁栄に遡るまでもなく、セレクトショップ業界の発展とともに興隆した東京セレクトブランドからは世界に進出するクリエーターも続出したし、TOKYO BASE は共存共栄を図ってTOKYOクリエーターブランドの販売を支援している。アパレル専門店業界とサプライヤー業界は互いに支え合って繁栄を築いて来たのだ。そんな関係を崩したのが専門店チェーンのSPA化(ブランドメーカーの直営店展開も同様)であり、大手セレクトがSPA化する中で東京セレクトブランドが別の発展機会を見出したのが海外市場だったのかも知れない。
 ジーンズカジュアル専門店の場合、90年代の最盛期には期中のサイズ供給体制で専門店をサポートするNBメーカーも少なくなかったが、ジーンズ市場が衰退するとともにNBメーカーの事業規模も萎縮してサプライ体制も綻び、専門店も在庫の奥行きを持てなくなって売上の低下に拍車がかかったと推察される。同じ衰退市場でも、紳士服専門店チェーンが逸早く開発体制を確立してSPAに変貌し紳士服メーカーのサプライ依存を脱したのとは好対照で、SPA化に逡巡し続けた大手ジーンズカジュアルチェーンの戦略判断が問われよう。
 ワークカジュアルとしての‘ジーニング’もボディコンパンツ?としての‘セレブデニム’もノームコアとアスレジャーのゆるいフィットに圧されて衰退しNBジーンズ業界も萎縮してしまったが、コーディネイトパーツとしてのジーンズはSPAのラインナップに定着し、ヴィテージ加工やリメイク加工のデニムアイテムはストリートのスパイスアイテムとして輝きを保っている。
 各段階がリスクを分担する垂直分業の‘卸流通’、利益もリスクも独りで背負い込んでしまう水平分業の‘SPA流通’、どちらも功罪半ばするが、マーケットを活性化するには両者のバランスと役割分担が不可欠だ。大手ジーンズカジュアルチェーンとNBジーンズメーカーは、それぞれ何を為すべきか、もはや逡巡も試行錯誤の時間も残ってはいない。門外漢の私よりジーンズ業界に精通している方々の提言が待たれよう。

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