小島健輔の最新論文

販売革新2011年7月号掲載
特集 テナントが伸びるSCの条件
売れるSC危ないSCの見分け方
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

最新版ベストSC/ワーストSC

 4月末開催の当社SPAC月例会で09年以降に開設された主要大型SCの出店テナントによる評価をまとめたところ、審査対象28SC中、好調〜まずまずのSCが13、苦戦するSCが15と明暗が分かれた。
 苦戦するSCの大半は開業前の当社の売上予測で‘出店不適’と判断されていたものばかりで、そんな高リスクSCに敢て出店した判断が悔やまれる。事前の予測より健闘しているのは、当初のデベロッパーが倒産して有力デベロッパーがプロパティマネジメントを引き受けたイオンモールKYOTO、博多駅ビル開業前の評価となった福岡パルコ(予測は開業後を前提)。事前の予測を下回ったのは、デベが予想外にテナントミックスをミスったコレットマーレ、地権者店舗がゾーニングを狂わせたコピス吉祥寺。前年評価から急落したのは「H&M」効果が剥げ落ちたららぽーと新三郷、ザ・モール仙台長町との回遊が期待外れに終わったララガーデン長町だった。
 集客力評価ベスト5は1)モゾ・ワンダーシティ、2)三井アウトレットパーク滋賀竜王、3)三井アウトレットパーク札幌北広島、4)イオンモール大和郡山、5)ピオニウォーク東松山。売上評価ベスト5は1)三井アウトレットパーク滋賀竜王、2)モゾ・ワンダーシティ、3)三井アウトレットパーク札幌北広島、4)ららぽーと磐田、5)ピオニウォーク東松山。利益評価ベスト5は1)三井アウトレットパーク滋賀竜王、2)モゾ・ワンダーシティ、3)三井アウトレットパーク札幌北広島、4)ららぽーと磐田、5)ラザウォーク甲斐双葉となった。イオンモール大和郡山は集客力が必ずしも売上に繋がっていないが、他は集客評価と売上評価、利益評価がほぼ一致している。
 撤退状況も加えた総合評価のベスト5は1)モゾ・ワンダーシティ、2)三井アウトレットパーク滋賀竜王、3)三井アウトレットパーク札幌北広島、4)ピオニウォーク東松山、5)ららぽーと磐田となったが、合計獲得ポイントを回答社数で除した平均評価ポイントでは三井アウトレットパーク滋賀竜王が首位に立ち、モゾ・ワンダーシティ、アリオ深谷、三井アウトレットパーク札幌北広島と続いた。ふたつの三井アウトレットパークはどの点からも評価が高く、アリオ深谷は今回、CSCとしてはラザウォーク甲斐双葉と並んで例外的に高評価を得た。  集客力評価ワースト5は1)トツカーナ、2)アリオ北砂/イオンモール新瑞橋、4)リーフウォーク稲沢、5)ペルチ土浦/イオンモール広島祇園。売上評価ワースト5は1)トツカーナ/ララガーデン長町、3)ペルチ土浦/アリオ北砂/ららぽーと新三郷。利益評価ワースト5は1)ららぽーと新三郷、2)トツカーナ/ララガーデン長町、4)ペルチ土浦/アリオ北砂。撤退状況を加えた総合評価のワースト5は1)ペルチ土浦が突出し、2)トツカーナ/ララガーデン長町、4)ららぽーと新三郷/アリオ北砂と続いた。
 低評価SCに共通するのがテナント募集段階で謳われる過大な商圏規模と売上目標で、中には初年度実績が目標売上の8掛け7掛けという酷いケースも見られる。アリオ北砂など初年度売上予算を300億円と打ち上げていたが、開業から10ヶ月を経た段階での出店テナントによる評価は極めて厳しく、テナント募集に際しての誇大広告が疑われる。過大な数字を掲げてテナントを募集するデベに対しては何らかの公的規制が必要なのではないか。

明暗を分けた要件

 SCの立地とタイプで見れば、メトロポリス圏からのアクセスが便利なアウトレットモールが最も評価が高く、メトロポリス立地のRSCが続き、どちらも低評価SCは見当たらない。逆に評価が低いのがメトロポリス立地のCSCで、ローカル立地では競合が薄く健闘するケースも見られるのにメトロポリス立地では競合が激しく、足元密度は高くても商圏が狭く客数不足を否めないようだ。
 駅ビル/ファッションビルは施設によって明暗が激しく、立地とテナントミックスで成否が分かれる。駅としての集客力が空洞化で失われたペルチ土浦のケースはやむを得ないとしても、地権者店舗がゾーニングを狂わせたコピス吉祥寺、同じく地権者区画に圧されてデベ管理区画が過小となったトツカーナ、フロアゾーニングが極端に偏ったコレットマーレは好立地を裏切るリスクの大きさを痛感させた。ファッションビルは銀座や天神などの超一等地でもコンセプトが外れたりテナントミックスが稚拙で大空振りするケースが続いており、投資の大きさと家賃の高さも相まって慎重な選択が望まれる。
 デベの実力による明暗も無視出来ないが、近年は大手デベでも個々のSCによって評価が割れる事が多くなった。総合評価では三井不動産がトップだが、アウトレットパークの評価が高いのに、ららぽーと新三郷、ララガーデン長町の評価は低い。イオンモールが続くが、モゾ・ワンダーシティの評価が高いのに広島祇園や新瑞橋の評価は低い。続くイトーヨーカ堂も、アリオ深谷の評価が高くアリオ橋本もまずまずなのに、アリオ北砂は著しく評価が低い。続くユニーも、ラザウォーク甲斐双葉やピオニウォーク東松山の評価がまずまずなのに、リーフウォーク稲沢やヒルズウォーク徳重ガーデンズの評価は極めて厳しい。三菱商事都市開発はコピス吉祥寺もココエ尼崎も厳しい評価となった。
 かつては常勝デベと言われたイオンモールや三井不動産も、好立地物件が限られるにつれ無理な開発も混じるようになり、個々に検証して選別せざるを得なくなったのは残念だが、それでも不慣れな後発デベよりは成功率が高い。神話は陰ったとは言え、やはりデベによる格差は残っているようだ。

危ないSCの見分け方

 SCの成否を開業前に予測するのは、商圏データや施設構成情報が揃っていればそれほど難しい事ではない。SC開設予定地への自動車や公共交通機関によるアクセス時間を等高線状に描き(ライバル商業施設も同様)、河川や海、山岳や断層、幹線道路や鉄道、飛行場や基地、大規模な工場や公園などの地形的障害を考慮しながらライバル商業施設とのハフモデル境界線を割り出して実勢商圏を推測し、その中の人口と消費支出に売場占拠率と統計的なSCタイプ係数を乗ずればSCの売上は容易に算出出来る。もちろん、世代構成/男女構成/所得構成/世帯流動性/住宅地としての成熟段階など様々な要素を考慮して定性的な特性も割り出さないと、個別テナントにとっての適合性は予見出来ないが、SC総体の売上とテナント業種別の販売効率はかなりの精度で算出出来る。
 当社では大手デベと同じ商圏分析システムを使い、商業統計/国勢調査/交通調査の更新はもちろん、主要施設の商業施設面積と売上を入力して最新の状態にメンテナンスし、精度の高い予測を可能にしているが、このようなシステムがなくても幾つかの経験則から大方の予測をつける事は出来る。以下に危ないSCに共通する要件を挙げておこう。

 1)地形的障害が著しい
 海や河川/運河、飛行場や基地などで商圏が半円形になったり人口密集地からのアクセスが遮られ、実勢商圏が過小となる場合。誰が見ても危ないのは明白だが不思議に多くのSCが開発され、残念ながらいずれも苦戦している。ららぽーと新三郷は南〜東を大河で塞がれ、西はレイクタウンで塞がれ、実勢商圏は極端に狭い。開店景気が去ってH&M効果が剥げれば苦戦が避けられないSCだ。大河にアクセスを妨げられるという例ではゆめタウン広島も挙げられよう。

 2)ライバル施設によって商圏が閉ざされている
 四方をライバル施設に囲まれていたり、主要な人口密集地方向を塞がれて実勢商圏が過小となる場合。こんな立地にSCを開発するのは暴挙と思われるかも知れないが、地上げが先行してしまえば止められない事も多い。苦戦は免れないが、アリオ札幌やアリオ北砂、イオン伊丹昆陽SCなど、人口密度の高いメトロポリス圏では少なからず見られる。

 3)過疎なローカル立地で人口と消費支出が足らない
 どこまで行ってもライバル施設が存在しないが、アクセス可能な広域商圏内の人口も消費支出も過小で、SCの規模を維持出来ないケース。ルーラルでは高齢化が進んで人口の割に消費支出が極めて小さい事にも注意したい。イオンかほくSCやイオン銚子SCなど、そのリスクが指摘される。

4)交通アクセスに難がある
 駅から離れているのに(駅から歩けるのは300mまで)駐車台数が限られたり車によるアクセスが苦しいケース。商圏分析システムでカーアクセス所用分数の等高線を描けば明白だが、道路地図をよく見れば想像がつくし、実際に走ってみれば実感出来る。駅が近いケースでも、主要商圏方向からの路線がなかったり何度も乗り換えが必要だったりすれば顧客の動員は限られる。ららぽーと豊洲もこのケースにあたり、開業初年度は苦戦したようだ(その後は人口急増で昇り調子)。メトロポリス圏では路線図と主要駅の乗降人数をチェックすべきであろう。

 5)商圏の民度が低い
 商圏の所得水準や可処分所得が極端に低いケース。衰退した市街地や過疎地では老齢化や生活保護世帯の多さが危ぶまれるし、アパート/マンション密集地域では可処分所得が圧迫される(持ち家比率や世帯流動性をチェック)。円形商圏を設定して所得水準を高く見たものの実際のアクセスは低所得地域に偏って売上が低迷する、というのはよく見られる失敗例だ。横浜市営地下鉄沿線の港北東急SC(近接する田園都市線とは格差がある)や新青梅街道圏のイオンモールむさし村山ミュー(近接する立川商圏とは特性が異なる)はそんなすれ違いの好例ではないか。円形商圏ではなくアクセスや競合から見た実勢商圏を推計し、道路や鉄道路線によるアクセスを見極めて商圏特性を掴むべきであろう。

6)立地と構成企画が乖離している
 低所得地域に高級SC、高所得地域に大衆SC、新興住宅地にアダルトファミリー向けSC、成熟住宅地にニューファミリー向けSC、大人の街にヤング向けビル、ヤングの街に大人向けビル、ストリートな街にエレガントなビル、エレガントな街にストリートなビルなど、立地の特性から乖離した商業施設は悉く苦戦してる。そんな馬鹿はいないと思うかも知れないが、立地に逆らう企画で突出しようとする商業施設は後を絶たない。が、立地と乖離した商業施設が成功したケースは皆無ではないか。

 7)大型専門店に過度依存している
 カテゴリーキラーや外資ファストSPAなど大型専門店に過度依存したSCは業種業態構成が雑で購買関連レイアウトも崩れがちだから、テナント売上に明暗が生じたり大型専門店の人気凋落に直撃されるリスクが大きい。二子玉川ライズSCのリバーフロント館やアリオ橋本など、そんなリスクが指摘される。

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 この他、敷地が導入道路から沈んでいたり縦長だったり公園の陰に隠れたり(ユニモちはら台)、入り口が歩道橋に塞がれたり(ジャイル表参道)で視認性の悪いケース、モールが過度に長く直線的なケース(モレラ岐阜)、昇降導線配置が偏って回遊性が損なわれるケースなど、過去の失敗SCから学ぶハイリスクSCの要件は数限りない。デベの募集パンフを鵜呑みにして大枚を溝に捨てる事のないよう、最低限の立地検証とリスク要件チェックは行うべきであろう。
 当社では新規開発施設はもちろん既存施設の増床リニューアルも、すべて開業一年前に子細に検証して商圏規模と特性、売上と業種別の販売効率を予測してテナント企業に提供し、開業後の業績推移もテナントからの報告を集計して掴んでいる。検証した商業施設は既に三百を超え、売上予測精度も年々高まっている。テナント企業の出店判断に役立てて頂くのはもちろん、デベも開発企画の参考にして欲しいものだ。

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