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『イオンモールの英断を賞賛する』(2020年04月02日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

ルミネが3月分の最低保証家賃を半額に減免するとテナントに通達し、来日観光客が途絶えた各地の空港ビルもテナント家賃の減免に動く中、4月2日にはイオンモールが4月、5月の二ヶ月間、最低保証家賃を撤廃すると発表して商業施設デベに激震が走った。
ルミネの家賃減免は3月に最低保証売上の半分に届かなかったテナントに限ったもので、免罪符的な色合いも指摘されていたが、イオンモールの最低保証家賃の時限撤廃は全テナントを対象としたもので、多くのテナントが救われる。イオンモールが踏み切ったことで、水面下の個別対応にとどまって一律の減免には躊躇していた他の商業施設デベも踏み切らざるを得なくなり、ルミネなど駅ビルやパルコなどファッションビルも減免の対象を広げざるを得なくなる。
売上が4割前後も減った物販店、半分以下になった飲食店など、最低保証家賃を差し引かれては資金繰りに窮するところも出てくる。中小テナントの4月危機がささやかれる中、イオンモールの英断を賞賛したい。
長期の投下資本利回りを求める資本集約型事業者たる商業施設デベは短期間の家賃を減免しても屋台骨に響くことはないが、大なり小なり労働集約的自転車操業のテナントにとっては2〜3ヶ月もキャッシュフローが狂えば致命傷となりかねない。それが営業の継続を絶つとしたら、新たにリーシングするコストと比較して割り切れる範囲の負担だと思われる。滅多にあることでない厄災だから、ここは胸を貸して絆を確かなものにする方が、資本回収サイクルの長い商業施設デベとしては賢明な判断ではないか。
イオンモールの英断を契機に、多くの商業施設デベが最低保証家賃の一律減免に動くことを期待する。

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