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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『商品タグの使い方を間違えてませんか?』 (2018年07月27日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 流通業界にバーコードが定着して久しく、レジ精算や在庫管理の効率化にICタグの導入が広がり始め、ショールーミングやID決済に便利なQRコードが再評価されてキャッシュレス化へと規格統一の機運が高まっているが、「商品タグ」という本来の役割は忘れられた感がある。売る側の情報管理という片側ばかりが追求され、お客さまに情報を伝えるという大切な役割が軽視されているのではないか。

タグの商品情報機能を復活させよう

「商品タグ」の第一義的役割は顧客に商品情報を伝えることのはずだが、いつの間にか在庫管理ツールと思い込んでしまい、バーコードばかりが目立って商品情報がおまけになった感がある。衣料品など、手に取ってよく見ないと読めないほどプライスの印字が小さく、その目立たない「商品タグ」をわざわざ隠して陳列するアパレル業界の慣習は“カゴ落ち”要件の最たるものだ。

 ECでの購入慣習が定着した今日では価格や素材、洗濯表示はもちろん、色・サイズの構成やサイズごとの各部実寸と重さの表記、購入者の評価レビューまで見て選択するのが当たり前なのに、売場ではいまだタグを隠す慣習が続き、素材や洗濯表示、生産地は商品をひっくり返して洗濯タグを探さねばならない(稀に「商品タグ」に表記されているケースもある)。各部の実寸や重さなどどこにも表記されてはいないし、色・サイズの構成も表記されていないから、欠品していても分からない。

 これでは『買うな』と言っているにも等しく、商品情報のみならずSKU別在庫表示や店舗在庫検索まで当たり前になったECとの購入利便格差は大きい。タブレット接客でECサイトの品揃えと商品情報を提供すればこのギャップを埋められるが、ショールーミングを恐れてタブレット接客を妨げる百貨店や商業施設が少なくないのは時代錯誤というしかない。

 せめて「商品タグ」を隠す慣習だけは止めて取り付け位置も統一し、素材と洗濯表示、色・サイズの構成やサイズごとの各部実寸と重さぐらいは表記しないと誰も店で買わなくなる。タグは大きくても2つ折りでもよいが、表記し切れないならQRコードでECサイトに飛んでもらってもよいだろう。

VMDの格差も何とかならないか

 ECサイトではアイテムやルック、テイストやTPO、カラーやサイズ、新着かセールか、などさまざまな切り口で顧客が自在に検索して並び替えできるが、店舗では店側が分類編集して配置したお仕着せしか見せられない。それも打ち出しディスプレイで週に1〜2回、全体の分類編集配置となると月サイクルでしか変わらないから、エントリーやページ移動、カゴ落ちや注文状況を見て毎日のように写真やキーワード、商品の配置や価格を切り替えてくるECとは鮮度も機動性も格差が大きい。それも顧客のアクセス履歴などからAIが個々にお薦め商品や構成を変えて見せるとなれば、店はもはや動けない化石でしかない。

 個々の商品の見せ方にしても、店舗ではスリーブアウトやフォールデットで陳列ラックに押し込まれる商品が大半で、ディスプレイしたりフェイスアウトしてばっちり見せられる商品はごく一部に限られる。ラックに押し込められても売場に出される商品はまだましで、売場の物理的な制約や館の陳列規制でストック室や倉庫に眠ったままの商品も少なくない。

 売場の物理的制約のないECではロングテールな品揃えが可能だし、全ての商品をフェイスアウト(置き撮り)どころかディスプレイ(着せ撮り)して見せられる。一昔前のECでは照明も稚拙な置き撮りやトルソー着せ撮りのワンカットで済まされていたが、今やモデルが着てさまざまなポーズを見せ、一部では体型別の複数モデルが着て見せたり動画に切り替わりつつある。そんな日進月歩するECと比べれば店舗のVMDは進化の止まった化石でしかない。

EC一体の商品情報提供が必定だが……

 そんなECとの情報格差を解消して売場の購買利便を高めるにはタブレット接客を活用するか、商品タグにQRコードを付けてECに飛ばすのが手っ取り早いが、自社ECのプラットフォームが未確立だったり館の規制が妨げたりすれば困難だ。ICタグからECの商品情報をサイネージやタブレットに表示させる方法(ECのサーバから商品情報だけを引く)もあるが、自社ECのプラットフォームが前提になる。

 アナログにやるにはECフロントの運営担当者に売場のVMDを任せてみるのが一番だが、人材が逼迫しているECから中核の人材を移動するのは非現実的だ。ならば売場のVMD担当者にECフロント運営のアシスタントを経験させてはどうか。最初はコーディング業務に四苦八苦するかもしれないが、確実に頭が切り替わりデジアナ両備えの人材に生まれ変わるに違いない。

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