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ブログ(アパログ2018年07月25日付)
『19年春夏の光と空気』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 5月末から2ヶ月近くかけて詰めてきた『19年春夏MDディレクション』がレディス版もメンズ版も完成し、先週水曜(18日)から各クライアントへの解説セミナーを始めています。

■季節の光と空気をローカルに捉える
 当社のディレクションは季節とともに変化する客層別のスタイリングを仔細に検証して来シーズンのMD展開ストーリーを構成するもので、レディスは春一番⇒春本番⇒初夏⇒晩夏、メンズは春⇒初夏⇒晩夏と切り替わっていく季節の光と空気を肌感覚で捉え、素材とカラー、スタイリングとフィットに構築しています。目の前で過ぎて行く今シーズンのリアルな変化と供給のギャップを捉え、来シーズンのあるべきストーリーを組み立てた“旬”のマーチャンダイジング・ディレクションなのです。
 “季節の光と空気”の捉え方はすべての基本で、社会構造やライフスタイルなど時代の潮流をベースに、それぞれの季節で心地よい「光の色と空気感」をカメラワークのように設定します。色温度とシャッター速度で空気の硬軟や流れる速度(同時に時間の速度でもある)が決まり、絞りとフォーカスでピントと奥行きが決まります。それに湿度感と肌当りを加えれば、素材の物性や着こなしの気分が数千万画素の感性でビジュアルにまとまります。それは必然的に地域の気候と生活文化に育まれたローカルなものとなります。

 ■欧米トレンドは周回遅れでピンボケ
 受注生産を前提とした欧米コレクショントレンドは組み立てる時期が早すぎて今シーズンのマーケットを反映しておらず、周回遅れを否めません。報道されるコレクションを見ても、メンズなどストリートの後追いでしかなく、それもモードに洗練させようとして(高価ですから)“活き”や“抜け”を矯める嫌いがあります。加えて、北欧圏コーカソイドや地中海圏ラテン向けの空気感が強く、湿度が高い亜熱帯モンスーン圏の空気感とは埋めがたい乖離を感じます。テキスタイルコンバーターに伺っても、『欧米で売れる素材と日本で売れる素材はまったく違う』と異口同音におっしゃいます。『欧米で売れる素材は“ウェット”、日本で売れる素材は“ドライ”』と言えば解るでしょうか。
 日本市場がローカルトレンドに流れ、外資アパレルチェーンが低迷を極めているのに、どうして周回遅れで顧客とすれ違う欧米トレンドに固執するのか、このギョーカイの欧米コンプレックスは根が深いと言うしかありません。
 湿度が高い亜熱帯モンスーン圏の華南系モンゴロイドたる日本人の肌当り感やフィット感、キモノの着流し感覚に近い“抜け”感など、着装感覚は欧米とは根本から異なります。自分の顧客層に特有の嗜好が季節とともにどう推移し、来シーズンの各季節では何が好まれそうか、MDは顧客ローカルに組み立てるべきではありませんか。

※当社の『MDディレクション』にご興味ある方は事務局までお問い合わせ下さい。

※ダイジェスト版解説セミナーはこちらです。

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