小島健輔の最新論文

オリジナル提言(2006SS版MDディレクションより)2005年7月
『2006SSへのMD戦略』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 05SSではシーズン展開のストーリーが崩壊。レディスのようなアイテム展開のシーズンレス化までは至らなかったが、春先からエスニックやサファリが出るなどテイスト/スタイルのストーリーがはっきりせず、ヤングではサーフスタイルとワークミックススタイル、ヤングアダルトでは様々なお兄スタイル、コンテンポラリーでは様々なスタイリッシュ系スタイルが平行する展開となった。ニット/カットのトップスが立ち上げからキーアイテムとなって次にシャツ/カットトップスに替わり、ジャケットやブルゾンはそれに派生する展開となったのはレディスに近い変化と言えよう。
 06SSでは混迷する社会状況と斑模様の景気回復を背景に現実逃避の脱力と享楽、現実に立ち向かうインディペンデントな精神力などがソーシャルマインドとなり、スタイリングにも色濃く投影する。
 ヤングでは現実逃避の脱力系/享楽系一辺倒となるが、ヤングアダルトでは現実に立ち向かうインディペンデント系も一部で台頭。シルエットはゆる細めをベースに、脱力系を除いてややタイトフィットな方向へ向かう。コンテンポラリーでは脱力系/享楽系からインディペンデント系までスタイリッシュ志向が通底し、ソフトフィット&タイトからソフトルーズ&ストレートの巾に収斂される。どのマーケットもキレイ目からダメージドまで面巾は広いが、面のコントラストを抑えてマッス感やシルエットで対比するまとまり感のあるスタイリングへと移行する。
 05SS同様、春先からラテンやリゾートのニュースタイル/アイテムが出揃う公算が高く、季節感はさらに希薄化していかざるを得ない。アウター軸のストーリーが復活する可能性はほとんどなく、アウターは軽いレイヤードアイテムと化してトップスの展開に組み込まれてしまうだろう。
 このようなスタイリング展開に対応するには面感/仕上げ感を揃えて単品ルックのストーリーをアレンジしていくのが定石で、基本ストーリーのオリジナリティとアレンジしていくスピードが問われよう。具体的には、1)素材/カラーのストーリーをきちんと組み、2)アイテム別の生産背景を押さえ、3)加工やディティールを短サイクルでアレンジしていく。アイテムを絞り、その中での多彩なアレンジを訴求するMD展開が求められよう。

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