小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年01月25日付)
『レディスにニューウェイブは来るか』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 最近のファッションはレディスよりメンズの方が活気があるように見える。23日に発表されたばかりの全国百貨店18年売上前年比は婦人服も紳士服も97.2と差がなかったが、婦人服が5年連続して前年を割ったのに対し紳士服は同期間中2年、前年を超えている。10年を100とした指数で見れば百貨店婦人服の82.3に対して同紳士服は91.4と9ポイント強高く、商業施設のテナント別売上で見てもレディスの81.9に対してメンズは91.6と10ポイント近く高い。
 ファッショントレンドを見ても、レディスが過去のアーカイヴの焼き直しを繰り返しているのに対し、メンズはストリートトレンドが新風を吹き込んでいる。メジャーとなった「アスレジャー」にしても00年代前半に一世を風靡した「ジューシークチュール」やヤンキースタイルを大きく出るものでなく、メンズのエクストリームスポーツのようなインパクトを欠いている。ストリートトレンドをリードするスニーカーしてもメンズ主導のユニセックスデザインを否めず、レディスは影が薄い。
 メンズの最新トレンドはカビ臭くなったピッティ・ウォモはもちろん欧米のコレクションシーンには見出せない。それらはストリートのニューウェイブをモードに解釈して後追いするばかりで、ウエアリングの肝もリミックスの妙も外して鮮度を損ね、こねくり回して法外なプライスにしてしまう茶番でさえある。
 今やストリートトレンドをリードしているのはトーキョーやSEOUL、台北や香港などアジアの若者たちであり、二つの共通項が指摘される。ひとつはジャパン発アニメカルチャーの文化圏であること、ひとつはキモノのウエアリングがどこかに通底していることだ。
 トーキョー発のストリートスタイルはサイジングや抜けた着こなし、レイヤードやリミックスにキモノ的着流し感覚や柄合わせが通底しており、トーキョーよりモード感が強いSEOUL発のオルチャンスタイルにも垣間見ることができる。ポップなグラフィック感覚や大胆なデフォルメ、ユニセックスを超えたトランスセックス感覚はアニメカルチャーから来ていることは明らかで、ネトゲなトーキョーにもデジタルネイティブなSEOULにも共通している。
 アジアのストリートトレンドを見ていると、ネットとリアルの境はとっくに消えてトランスに盛り上がっているが、レディスの世界は取り残されたままだ。AKBに発したグループアイドルがアジア全域に広がる中、アニメカルチャー発のコスプレファッションがオタク女子の壁を超えてメジャートレンドに広がる日は来るのだろうか・・・・ 
 メンズに比べれば硬直化したレディスだが、それだけに変化がマーケットを活性化するチャンスは大きい。メンズと共通するエクストリームなスポーツミックスやドームミックスなど“アスレカジュアル”の奔流に加え、欧米モードトレンドとは一線を画したジャパン・ローカルな“抜け”ウエアリング、アニメカルチャー感覚のオルチャンスタイルなど、19AWに向けたニューウェイブをビジュアルに提案したい。

※『19年秋冬MDディレクションゼミ』を2月15日、弊社にて開催します。

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