小島健輔の最新論文

販売革新2006年8月号掲載
『イオン vs.IY PBウォーズのその後』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 前回の調査からほぼ2ヶ月を経た6月末、セールに突入したイオン(浦和美園店)とIY(アリオ亀有店)の衣料売場にPBウォーズのその後を点検してみた。前回のリポートでは「戦略/顧客カバー率/VMD優位のイオンVS. 商品力/機動性優位のIY」という緒戦はイオン優位とも取れる調査報告となったが、2ヶ月を経て両者のMDはどのように修正され、かつどのように運用されたであろうか。

変化と運用に乏しいイオン

 レディスのPBでは連休明けから盛夏物が投入されたもののテイストや仕上げ面などは初夏物の延長で、テイストや仕上げ面の修正はまったく見られなかった。
 「TOPVALU」「persodea」では台帳補給の定番商品も含めてセールになっており、プロパー展開は前者で1割弱、後者で2割弱の晩夏物に限られた。晩夏物といっても単にダークカラーの盛夏物で秋トレンドはまったく反映されておらず、盛夏物とほぼ同時に企画・手配されたと見られるから、短射程のトレンド鮮度で秋物へ繋ぐというSPA型のMD展開とは本質的に異なる。当用調達された量販メーカー商品が詰め込まれるような末期運用も見られず、PBのみでの売り切り体制は例年の売場と異なるが、消化が進まなかったからというのが実態であろう。初夏物も少なからず残っており、消化促進への再編集運用や店間移動等の手も打たれていないようだ。
 対して「ESSEME」では晩夏物プロパー展開が過半を占めており、初夏物/盛夏物は消化が進んで色欠け/サイズ欠けした状態で集約され、セールになっていた。量販メーカーからの当用調達商品も追加されており、予定以上に消化が進んだものと推察される。晩夏物も盛夏物とは企画を変えて秋トレンドを反映しており、前2PBとはMD展開も異なっている。前回も指摘したように仕上げ面も平場商品とは一線を画して質感があり、他PBとは生産背景も異なっているようだ。
 ブティック展開の「EMMA JAMES」ではセール品と除外品、晩夏物が明確に区分けされ、セール品はひとまとめに集約されていた。晩夏物も盛夏物とは企画を変えており、SPA的なMD展開となっている。台帳補給の千円エレガンスTシャツが晩夏向けに色替えされていなかったのは残念で、バルク調達の売り減らしと推察される。
 メンズの「sortisso casual」「sortisso」でも盛夏物はセールになっていたが、晩夏商品(1割未満)は除外されていた。晩夏物といっても長袖濃色という程度で秋トレンドが打ち出されている訳ではなく、盛夏物と同時企画・手配されたものと推察される。それでもセールの中でプロパー訴求されているのはイオンらしからぬ印象があった。
 VMD的には前回の暖色/寒色分けのカラー訴求が継続されていたが、色配列の順などはかなり崩れており、売場スタッフに陳列技法を理解させないまま本部が下達指示する方式と知れた。それはカラーVMDが注目された「Full House」も同様で、色環表などで研修したとは言うものの、色配列などの技術を理解させる方法ではなかったようだ。本部指示もディスプレイも含めてほぼ月度と言うから、鮮度どころかフェイスの維持も難しいだろう。販売進行に応じて消化を促進する再編集運用はレディスも含めて皆無に近く、この点ではIYと埋め難い格差がある。
 その「Full House」だが前回調査以降、半袖等の盛夏物が投入されたものの初夏物も含めて消化は難航しており(晩夏物の投入はなかった)、ほとんどが売れ残っていた。恐らくプロパー消化率は3割程度に留まったのではないか。商品の鮮度を欠く「inteante」はもっと苦しいはずだ。その要因として、横抜け出来ない完箱構造で入店が少ない事、主婦の代理購買や同伴購買には適さないほど洒落て見える事が挙げられていた。割安と言っても量販価格は越えており、価格も抵抗感が在るようだ。
 量販店に顧客が求めるのは百貨店的洗練や手厚い接客ではないという事で、箱展開のPBはイオンも販売人件費負担に音を上げて早晩、複合展開に改めるのではないか。

運用力が光るIYだが

 IYのレディスもイオン同様、セールが始まっていたが、台帳補給の盛夏定番品がセール除外となっていたのが大きな相違だ。「pbi」では約3割がセール除外の定番で、短射程企画と思われるラテン・フォークロアな晩夏物カセット(約1割)もプロパーで展開されていた。前回は主流だったキレイ目エレガンスは縮小され、晩夏物はナチュラルフェミニンに一変していたのが印象的だ。
 「L&Beautiful」でも約1割ほど定番品がセール除外となっており、短射程企画と思われる高鮮度の晩夏物カセット(約1割)もプロパー展開されていた。前回は企画もフィットもやや若向きだったが、晩夏物ではナチュラルなコージー系が主流となってミセス対応が強化され、量的にも拡大されて「pbi」に替わって前面を占めていた。サイズ訴求の「Wellel」でも約2割ほどの定番品がセール除外となっており、短射程企画の晩夏物カセットもプロパー展開されていた。
 大量にセールされていたイオンとは異なり、どのPBでも初夏物はごく一部しか残っておらず、盛夏物もコンパクトに再編集約されてセールにかかっていた。実際の売れ行きにも差があるのだろうが、消化促進への再編集運用や期中値下げ処理が適確に行われた事も要因であろう。台帳補給の定番カセットも多くが新企画に組み換えられてプロパー展開されており、MD展開から店頭在庫運用まで状況対応のプロセスが確立されている。
 メンズでも「pbi」「epom」はカセット再編を重ねて圧縮され、台帳補給の半袖カセットを除いてセールになっていた。替わって「コンバース」「エアウォーク」「ピコ」「クロコダイル」などのNBカセットが売場を占め、一等地ではVANセールが展開されていた。クロージング系の「gentlino」「Ischia」「SAVOIA」も再編圧縮されて売場が移動していたが、再編によって近似していた性格が増幅され、ブランドの区分けが見えなくなっていた。早晩、ブランドの再編が避けられないのではないか。
 メンズもレディス同様に再編集運用されていたがクロージング系の残品量はレディスの比ではなく、消化が進まなかったと推察される。百貨店的に洗練された企画が顧客の戸惑いを招いたのではないか。

両社のMD展開と運用を比較する

 前回のレポートでは、イオンは顧客カバー率は高いもののレディスPBが平場商品と差別化出来ていない事、メンズの箱展開PBは補給と売場維持が危惧される事、IYは商品の完成度はイオンより高いものの、顧客カバー率の低さ、百貨店的な洗練が顧客と乖離している事、運用面ではイオンの硬直性とIYの機動性を指摘した。
 今回の売場点検ではイオンのMD展開の硬直性と売場運用体制の未熟さが露呈し、商品の改善も見られなかった。対してIYではMD展開と売場運用の機動性が発揮され、商品も適確に修正されていた。VMD面でも、イオンがハードな仕掛けと本部下達に頼って現場の運用技術の稚拙さが露呈したのに対し、IYではカセットの企画更新や再編集運用に伴う棚割やレイアウト変更、IP訴求が適確に行われていた。結果、消化率にも大差が生じたと推察される。
 イオンは戦略的にはリードしたものの、MD面では射程距離の長さと生産背景の同質化、運用面では現場の再編集プロセスの未確立、陳列技術の稚拙さを改善出来ず、大仕掛けな戦略が空回りする結果となっている。ハードな仕掛けが先行しただけに、修正には時間がかかるのではないか。理論先行を改め、ポイントやワールドなど成功SPA企業の実務プロセスを真摯に学び直すべきであろう。とりわけ、短射程の軽在庫・月度/2週度MD展開、その消化回転を可能とする再編集運用・陳列技術体系、店間移動消化体系のマスターは不可欠と思われる。
 IYは情況対応優先で戦略的インパクトは欠くが、短射程のMD展開力、現場の再編集運用・陳列技術力はイオンを大きくリードしている。独りよがりな百貨店商品志向を改めて顧客に密着すれば、当初の布陣からは修正が避けられないもののPBの離陸は容易と考えられる。信頼に足る運用力を持った現場を前提とし、柔軟で顧客に密着した商品政策に徹するべきであろう。
 前回、イオンはPDS的環境のアップスケールGMS、IYはよく出来たアップスケールGMSと指摘したが、その枠を超えて百貨店的に洗練された商品も箱売場も顧客の求めるものではなかった。顧客がGMSに求めるのは日常の手軽な素敵であり、価格も環境も接客密度も半歩以上前に出ては顧客の拒絶に直面する。それ以上はセカンドラインNBを中核とするPDSの領域であり、不要に背伸びするより別途にPDS業態を開発するのが戦略的正解なのではないか。

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