小島健輔の最新論文

オリジナル提言(2005AW版MDディレクションより) 2005年1月
『2005AWへのMD戦略』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 04AWはかつてない気象異変や度重なる社会負担増に災いされ、ファッション消費は一段と低迷を深めたが、その一方で幾つかの集中的なブームも盛り上がった。
 ヤングでは加工デニム人気が継続し、アメカジ・アイテムやノルディック・アイテムをミックスするアメカジ・ミックス、ファーアウターやセクシートップスでグラマラスにきめるセレブ・カジュアルが席巻。ナチュラルなフェミニン・レイヤードも根強い人気を保った。
 コンテンポラリーでは加工デニムを軸としたセレブ系モードカジュアルがキャリア層まで席巻する一方、美脚パンツ軸のキレイ目スタイリッシュ・エレガンス、レトロなブリティッシュ・フェミニンも主流となった。
 05AWでは終末感さえ漂う世界的な社会不安を背景に、平穏と調和を求める内面志向や自然回帰、堅実な保守回帰、反戦・反体制カルチャーが盛り上がった70’Sへの憧憬などがソーシャルマインドとなり、ファッションにも色濃く投影する。
 ヤングではメルヘン世界を志向するイノセントなノスタルジック・フェミニン、70’Sカルチャーがかったワーク&ヴィンテージやワイルド&グラマラスが台頭し、ナチュラル〜ラフ味のゆるめカジュアルが主流となる。コンテンポラリーでも大人のメルヘンや70’S回帰が登場するが、ナチュラル&コンフォートなLOHAS系リアルクローズ、上質ベーシックを志向するネオ・コンサバティブが主流となるだろう。
 カジュアルでは面対比よりもマッス感の対比と着崩しを効かせる単品レイヤードが拡がり、オン・シーンでもややゆるめに崩す単品レイヤードが台頭し、秋冬の季節感はさらに希薄化していく。  秋冬期はさらに短くなり、10月下旬から11月上旬には“ホリディ”(梅春)、11月下旬から12月上旬には“クルーズ”(初春)が立ち上がって冬物は陳腐化してしまう。冬物アウター/コートは11月末〜12月初でピークアウトし、12月のアウターはレイヤードに重ねる軽い初春物が主役となるだろう。パワーアウターによるピークはさらに小粒になり、レイヤード単品の積層が基礎売上となって平準化が進行する。
 このようなウェアリング変化に対応するには、秋冬シーズンのMD展開を着重ね型に組み直すべきだ。具体的には、1)レイヤードの効く単品アイテムをフォール→ホリディ→クルーズ(ウィンターは不要)と、短サイクルにデザイン/素材/カラーを替えながら継続展開する、2)アウターはレイヤードを見せるカバーアイテムと割り切り(ショート/ブレス・オープン/スリーブレスがキーワード)、売り切り御免でシーズンを先取りしていく。
 レイヤードアイテムの短サイクル切り替えで数字を嵩上げするには単品アイテム別の製品化加工ラインのキープが不可欠で、中小ロットのQR生産が再評価される事になる。一方、コンテンポラリーではネオ・コンサバティブへの対応が不可欠で、上質素材(特にニット糸)の先行手当てが勝敗を分ける事になる。

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