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『今時「“傾城”爆買い百貨店」の報道に違和感』(2021年01月24日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

22日夜8時のフジTV「ウワサのお客様」で元ナンバーワンキャバ嬢が伊勢丹新宿店のVIPルームで高級ブランド1700万円を爆買いする有様が放映され、23日にはいくつかのネットメディアが後追いしたが、24日朝にはネットのフロントから消えていた。
コロナ禍が深刻化する中、12月の全国百貨店売上は前年同月比13.7%減と15ヶ月連続で減少し、外国人観光客が途絶えた免税売上は88.6%も減少(国内顧客売上は10.0%減)。20年通年で百貨店売上は25.7%、衣料品売上は31.1%、中でも婦人服売上は32.2%、化粧品売上は39.1%、免税売上は80.2%も激減した。1月の初売りは前年の半分にも届かず、緊急事態宣言が再発令された7日以降は一段と客足が遠のいているから、コロナ禍が長引けば都心百貨店さえ存続が危うくなる。
東京都のコロナ新規感染者数が連日1000人を超え、中でも新宿地区の感染者数が高止まりし(1月20日時点累計発生者数は5720人と世田谷区の6851人に次ぐ)、伊勢丹新宿店でも昨年来、感染者が相次ぎ、今年に入って公表されただけでも1月10日から19日まで9名を数え、高齢顧客の間では『伊勢丹は怖くて行けない』という声も上がる中、この元キャバ嬢爆買い報道は違和感を超えて不謹慎不愉快の極みと言うしかない。いったい三越伊勢丹の広報はどんな見識でこの取材を受け入れたのだろうか。
コロナ禍の出口が見えなくなり、非正規雇用勤労者(68%が女性)とりわけ女性の失業が広がって、日々の生活に困窮し住居さえ失う恐怖に怯える人々が急増する今、バブル期紛いの爆買いを煽るTV企画に悪乗りする三越伊勢丹の時代錯誤は常軌を逸している。ファッショニスタの“傾城”を誇ってきた伊勢丹新宿店だが、国民が太平洋戦争以来という厄災に直面し生計防衛を強いられる中、国民感情を逆なでては“悪所”イメージが顧客を遠ざけるのではないか。

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