小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年02月14日付)
『ローカル化で外資SPAが失速!!』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

531d7bb06e042138a0dfd888b03e16b1

 H&Mの17年11月決算は店舗数が8.5%増えたのに売上は4%しか増えず、在庫が積み上がって値引きロスも嵩み、営業利益は13.6%減少した。15年16年と既存店売上が前年を割り続け、とりわけ直近の17年第4四半期(9〜11月)が落ち込んで総売上も95.6%とマイナスになった。日本でも既存店売上が前年を割り続けており、本国決算が失速した9〜11月は二桁減になったと推計される。フォーエバー21はH&M以上に不振で上陸1号店の原宿店も昨年10月に閉め、ピークの25店舗から17店舗まで減少している。外資勢では例外的に好調だったZARAも昨年9〜12月は既存店売上が前年を割り、外資SPA勢は総崩れの感がある。その一方でユニクロは秋口から加速して12月は118.1(既存店/EC含む)と絶好調で、在庫不足から1月は前年を割ったほどだ。
 日本で展開する大手外資アパレルチェーン(ギャップ日本法人、ZARAジャパン、H&Mジャパン、フォーエバー21ジャパン、イーグルリテイリング)の合計売上は08年の957億円からファストファッションブームを経て16年には2.8倍近い2670億円に達したが、ギャップ日本法人の不振などで17年には2647億円(「OLDNAVY」撤退前の集計)と初のマイナスに転じ、「OLDNAVY」の売上が消える18年度集計(米国ギャップ社は1月決算)では「H&M」や「フォーエバー21」の不振も加わって2406億円(前比91%)とさらに落ち込むと推計される。
 15年頃から目立ち始めたアパレルのローカル化現象が昨秋冬物で急加速して外資SPA勢の失速が表面化したが、ギョーカイはマーケットの変質を必ずしも理解していない。元よりアパレルはローカルなものであり、08年秋冬期から7年間のグローバル化は一時的な特異現象だったと見るべきだ。
 複数の人種が混在する欧米では「エスニック・マーケティング」が常識で、ネグロイド、モンゴロイドはもちろん、コーカソイドもアングロサクソン、ラテン、アラブに分けて商品企画や品揃えを組むのが一般的だが、来日外人客以前に我ら日本人にも「エスニック・マーケティング」が必要ではないか。表参道・原宿地区ひとつとっても、表参道と明治通り、竹下通りとキャットストリートではエスニックが違うかと思えるほど客層が異なるし、郊外SCとて北関東と湘南では米国の東西以上に客層が異なる。アパレルの嗜好やウェアリングについては、同じ日本人と言えども「ローカルエスニック」な相違があるのが現実だ。
 なのにギョーカイは未だ欧米コレクショントレンドを崇拝し、必ずしもローカルな顧客を直視しようとせず、全国一律な品揃えを平気で組んでいる。ゆえにナショナル/ローカル二重のギャップが生じ、機会ロスや値引きロスに繋がっているのではなかろうか。
 私は国内アパレルマーケットにもローカルなエスニック・マーケティングが不可欠だと喝破し、30年に渡って客層別のスタイリング変化を検証し続けて来た。直近の17年秋冬期ではレディス2727ブランド/メンズ1291ブランド計4018ブランドをレディスは28ゾーンの316タイプ、メンズは20ゾーンの225タイプに仕分け、そのうち主要な800余ブランドの販売成績を毎月追って、タイプ別のスタイリング変化と照合してローカルなマーケット変化を検証し続けている。その成果を基に来シーズンの客層別スタイリング傾向とMD展開シナリオを提示するのが当社の「MDディレクション」で、国内唯一のローカルエスニックなトレンドディレクションだと自負しているが、ギョーカイではほとんど知られていないのが残念だ。
 ローカルトレンドに対応するMD展開シナリオをビジュアルに構成した「18年秋冬版MDディレクション」は年明けに完成してクライアントへのディレクションも一巡しようとしている。同時製作の「客層スタイリングマップ」と合わせればブランドポジションも一見して位置付けられるから、国内市場の複数の客層に対応するブランド群/業態群を展開する企業は是非とも活用して頂きたい。

論文バックナンバーリスト