小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2019年02月12日付)
『周囲も明日も見えていない』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 会員制常時値引きのZOZOARIGATOに反発する出店アパレルの離反が広がるZOZOだが、それ以上に深刻なのがユナイテッドアローズの自社EC運営委託の解消ではないか。すでに取扱い高が100億円以下に落ち込んだB2B事業(自社ECサイトの開発・運営サポート)の6割以上を占めるユナイテッドアローズが離反すればZOZOのB2B事業は継続が困難になる。
 アパレルチェーンはモールサイト依存のEC拡大➡︎自社ECシフト➡︎顧客と在庫の一元化による店舗とECの一体運用➡︎店舗をキーデバイスとしたC&Cとニューリテール、とオムニコマースシフトを進めており、ECプラットフォーマーという枠を出られないままZOZOSUITSとPBに大枚を投じて業績の下方修正に追い込まれたZOZOはオムニコマース戦線から脱落した感がある。ユナイテッドアローズの離反によるB2B事業の行き詰まりはアパレルのオムニコマースシフトを軽視した戦略ミスであり、もはや挽回は難しいかもしれない。
 ZOZOの挫折は前澤氏に意見できる知恵者とガバナンスの不在が招いた悲劇だが、成功体験に奢って周囲も明日も見えなくなっていたのだろう。『見たいものしか見えていませんね。別の選択肢がありますよ。』と余計な諫言をして無視されちゃいましたが、耳を傾けてくれていればこんな挫折には至らなかったでしょう。
 前澤氏に限らず、このギョーカイの経営者は自らの成功体験や感性を過信して視野狭窄に陥り、取り返しのつかないミスを犯すことが少なくないように思う。『周囲の意見を無視したからこそ突出した成功を手にすることができた』と過信するのが成功体験で、気に入らない意見を言う者を遠ざけ耳に心地よい賛同者ばかりで周囲を固めてしまえば視野狭窄の裸の王様になってしまい、やがては破滅の罠に落ちてしまう。
 だからこそギョーカイの新陳代謝が進んでマーケットが活性化してきたという肯定的な見方があるかもしれないが、値引き販売が常態化し供給量の過半が売れ残るという現実を前にしては、皆が思い込みで大量乱造し非効率な流通で足を引っ張り合う状況はもう続けられないと思う。
 目の前の白兵戦に夢中で周囲も明日も鳥観できず、成功体験を過信して足を踏み外すと言う悲劇を避けるには、見たくない事実にも視野を開き聞きたくない意見にも耳を傾け、自らを制御するガバナンスを厭わないことが大切だと思う。まあ、こんな諫言も外野の騒音なのでしょうが・・・・

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