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WWD 小島健輔リポート
『古着ブーム」に異変あり メジャー化への関門』
(2023年06月15日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 コロナが5類に移行して行動規制もなくなりリベンジ消費が衣料販売を押し上げているが、コロナ下で盛り上がった古着ブームはどうなるのだろうか。空き店舗の増加とともに急増した古着店も減り始め、中古衣類の輸入量も減少に転ずるなど、ブームの継続に黄信号が点っている。

 

■キレイ目・オンシフトで古着はオフトレンドに

 GW明けの5月8日からコロナが5類に移行して行動規制もなくなったが、衣料消費はそれを先取りして復活が加速している。家計消費や商業動態統計の19年比はまだ8掛け強で足踏むものの、全国百貨店衣料品売上の19年比は1月の72.9から2月83.9、3月82.5、4月85.5と少しずつ上向き、5月は主要百貨店の速報から見て88近くまで回復したものと推計される。

19年水準を超えているのはまだ都心の百貨店や商業施設のごく一部に限られるが、好調商品の傾向は一変した。コロナ下で低迷していたオケイジョン品やビジネス品、ビジカジ品が復調し、カジュアルの面感もキレイ目にシフトしてフィットもスマートになって来た。そうなるとエイジングした面感やくたり感など古着の味わいはオフトレンドになってくるわけで、コロナ下で盛り上がった古着ブームも熱が冷めるのではないかと危惧される。

人出の回復にインバウンドの復活も加わって各地のハイストリートに賑わいが戻り、出店意欲も復活して家賃も急回復し、空き店舗も急速に埋まりつつある。一時はハイストリートも閑散として空き店舗が広がり、低家賃の期間限定契約中心に広がった古着店も、今年に入って目に見えて減っている。銀座や表参道の一等地を除けば賃料はまだ19年水準に届いていないが回復は確実だから、空きを埋めるためやむなく極端な低家賃で入れていた期間限定契約の古着店が消えていくのは必然だろう。

 

■中古衣類輸入に変調

もうひとつ、古着ブームの先行きを占う気になる兆候がある。それは中古衣類(品目コード6309)輸入量の減少だ。

14年を底に増加に転じて21年、22年と急増し、22年は19.9%増の10,463トンと10,000トンの大台に乗った中古衣類の輸入量が23年1st.Q(1〜3月)は前年同期比83.8%と大幅なマイナスに転じた。直前の前年4Q(10〜12月)は23.8%の伸びだったから失速感は否めない。

中古衣類輸入量は14年の2993トンから8年で3.5倍に増え、kg単価も847円から1,099円に上昇して加熱気味だったから、22年のドル為替レートが132.12円と前年の109.85円から一気に上昇して23年1Qのkg単価も1,186円と高騰し、割高感から調達が抑制に転じたという見方も出来る。それでも前回ブーム直前02年の1,536円(1ドル125.39円)の77%ほどだからまだ上昇余地はあるが、ドル為替が108.19円に急落した04年に前回の古着ブームに火が付いて35.8%増の7309トンと輸入量が急増したことを思えば、逆(ブームの冷却)も考えられる。直近の輸入古着店の店頭を見ても、円安のせいか以前より割安感が薄れたように感じられる。

輸入数量前年比は1月の76.6、2月の83.4、3月の91.3と次第に回復し、4月は128.2と前年同月を大きく超えたが、1〜4月累計は92.5と前年に届いておらず、再び140円に乗った直近のドル為替レートを考えれば頭打ち傾向が続く公算が大きい。では古着ブームが冷めてしまうかというと、そう単純ではない。輸入古着は22年の輸入額で114億9960億円と限られ、小売段階でもリユース衣料販売額の9%弱を占めるに過ぎないからだ。

 

■リユース衣料は2種/5ルート

 「中古衣料」という言い方はかつての古着ブームのヴィンテージな「低年式品」のイメージを引きずったものであり、リユース衣料市場の大半を占める国内消費者放出の「高年式品」とは大きく異なる。

 「高年式品」とは賞味期限内(新品購入から概ね3年以内)の放出品であり、ブランド品なら『何年のあの品番なら幾ら』と相場が読め(実際、買取店チェーンではデータベース化している)、フリマアプリや地域の買取店で売買が容易な製品を言う。過去にゾゾで購入した商品の下取り価格が表示される買い替え割の「ソゾユーズド」(22年で160億円)も「高年式品」に位置付けられる。アパレルの販売員は社員割引で毎月、購入を強いられる試着販売品の換金回転が必要で、シーズン中の高鮮度品を放出するし、目が効くファッショニスタは短期転売で値段の下がらないブランドを回転消費している。

そんな「高年式品」の22年の市場規模はメルカリだけで2457億円(取扱高中の衣料・服飾品36%からブランド雑貨2割を差し引いた29%)、他のフリマアプリを合わせた総体で3480億円(メルカリ推計のフリマアプリ市場1兆2000億円の29%)、「2nd Street」など買取店の市場規模が2320億円ほど(セカンドストリートの売上755億円中の国内売上を706億円と見て占拠率から類推)、合計5800億円とリユース衣料市場の88%ほどを占める。残る800億円ほどが輸入中古衣類と国内回収(ウエス屋ルート)の「低年式品」で、総合計は6600億円ほどになると推計される。

メルカリの公表データなど断片的な情報から私が独自に推計したもので精度は疑わしいが、リユース衣料の市場構造を掴むことは出来る。ちなみに、リサイクル通信の「リユース市場データブック」で推計された21年のブランド雑貨2947億円を含まない「衣料・服飾品」市場規模4587億円(22年は20%伸びたとしても5500億円)からは乖離があるが、メルカリの推計と比べればリサイクル通信の21年の推計自体が過小だったのかも知れない(メルカリの推計が過大という見方もある)。

リユース衣料には国内消費者放出の「高年式品」と海外調達中心の「低年式品」(国内ウエス屋ルート品も低年式品が大半)があり、「高年式品」の大半はフリマアプリ(C2C)か買取店ルート(C2B2C)で流通する。「低年式品」はかつては先進国のスリフトショップや倉庫から直買い付けするルートが主流だったが、今日では途上国中継仕分け地ルートが大半を占めると思われる。第5のルートが家庭から廃棄される衣類ゴミから選別する国内ウエス屋ルートで、欧米先進国のスリフト&ドネーション(寄付型)ルートと比べるとイメージが悪いが、良くも悪くも玉石混交で、途上国中継仕分け地ルート同様、仕分け次第だ。

 

■発想の転換が問われる古着業界

このように古着屋で扱われる「中古衣料」はリユース衣料の中ではマイナーな存在で、前回のブーム(03〜06年)も古着マニア中心でメジャーな広がりには至らなかった。今回のブームでも、前回の成功体験を引きずった業界は「古着屋」の枠内で様々に編集するだけで、広く一般の老若男女までカバーするメジャー業態の発想は見られない。

多くの「古着屋」は古着が判る男性客が大半を占め、女性は2〜3割に留まる。本当にメジャー化するのなら「ユニクロ」や「GU」に来る老若男女、ひいては「しまむら」を愛顧するミセス層までカバーすべきだと思うが、古着業界の方々は根本から考えが違うようだ。「古着マニア」を頂点に、それなりに古着が判る感性を持った人々が顧客であり、「汚い」とか「臭う」とか古着に偏見を持つような層は端から対象外なのではないか。

先進国のスリフトショップや倉庫巡りでヴィンテージな「お宝」が続出したのは前回のブームまでで、今や中継仕分け地から届くベールを解いても「お宝」が出てくるのは極めて稀だと聞く。古着業界の「低年式品」仕分け感覚だと、頂点がブランドものヴィンテージ品(「お宝」)で、次が人気NBの良品、その次が人気NBの難あり品や大衆・無名ブランドの良品。残りは衣類ゴミとして廃棄する(業者に引き取ってもらう)ことになるのだろうが、メジャー客を狙うなら仕分けも少々違ってくる。

マニアが好む「お宝」は全国訴求のネット商材で、店舗商材としては例外品だ。メジャー客を狙うなら1)人気グローバルNBの良品、とりわけ高年式品をどれだけ安定して揃えられるかが要になる。人気グローバルNB品はプランド別ラックで訴求するもので、位置を動かさず心太式に新商品を継ぎ足していく。次が2)大衆・無名ブランドの良品で、これも高年式品ほど好まれる。大衆・無名ブランド品はシーズンアイテムとして単品集積し、サークルなどで統一価格訴求して量販する。難あり品は修理可能なもの(ボタン欠落やボタン穴の損傷、小さな解れなど)は修理して上記の分類に仕分け、不能なものはリメイク・リサイクルに回す(品揃えには入らない)。

どちらも高年式品が好まれるから、中継仕分け地ルートだけでは品揃えが成り立たない。買取店ルート(店舗毎に買取と販売が完結しているので放出は限られる)や国内ウエス屋ルートから高年式品を集める必要がある。そんな認識が持てないなら、あるいは調達ルートを確保できないなら、一般客狙いのメジャービジネスは難しいだろう。

店舗運営を効率化するには定型のトールラックとサークルをシンプルに配置する大型店(人時効率上はワンフロア120坪以上)が前提で、倉庫段階での前仕分け(店別ラック別バンドル化)で店舗のマテハン作業量を軽減する必要がある。

 

■メジヤー化への業界努力

 リユース衣料がマニアと言う枠を超えて一般客に浸透するには、業界ぐるみで変えて行くべきことがある。それは以下の3点だと思う。

1)安心の統一クリーニング基準

 「汚い」「臭う」という負のイメージを一掃するにはクリーニングと脱臭の業界統一基準が不可欠で、基準を適用した商品には認証シールを添付し(タグに一括印刷しても良い)、安心基準を店舗やECサイト、SNSでキャンペーンし続ける必要がある。

2)安心の品質表示とトレーサビリティ

 顧客に品質点検の責を負わせるのではなく、検品基準(解れ、汚れ、ボタンの損傷など)を定めて点検結果をタグに図示し、合わせて調達ルートも明示してトレーサビリテイを果たしたい。

3)親切のサイズ表示

 新品ならどんな低価格品でも主要寸法はタグに表示されサイズリングまで付いているのに、リユース衣料ではECはささげ情報を表示しても売場では何の表示もない。平置きしてAIカメラで自動採寸した数値、それに基づいてAIが判断した相当サイズをタグに表示するのが親切というものだろう。その方が買い上げ率も上がるだろうし、在庫管理精度も高まるのではないか。

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