小島健輔の最新論文

ファッション販売2013年7月号掲載
『大人のグランフロント大阪』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 大阪駅北口の巨大アーバンコンプレックス「グランフロント大阪」の商業施設ショップ&レストランが4月26日開業した。店舗面積4万4000平米に266店舗を配して初年度2500万人の来場と400億円の売上を目指している。
 2万8000平米に187店舗が結集する南館は吹き抜けを挟んだB1〜2Fの一等地をパナソニックのショールームが占め、名古屋駅前の「ミッドランドスクエア」を思わせる(ミッドランドのトヨタのショールームはもっと控えめだ)。ファッション関連はB1〜5Fに並ぶが、存在が解り難い裏通り的区画もあって好ましいレイアウトではない。1万4000平米にインテリア/生活雑貨中心に58店舗が点在する北館も「キッテ」を思わせる巨大な吹き抜けとショールームの混在で客流が読み難く、1/2Fの南館側には存在が解り難い区画もある。駅ビル的な高販売効率が望めるのは南館各階の表通りと北館1/2Fの南館側接続部に限られそうで、初年度予算の400億円から大きく化けるのは難しいかも知れない。
 「ルミネ」を大阪っぽくやんちゃに味付けした感のある若々しい「ルクア」と較べると「丸ビル」や「ミッドタウン」に通ずる全国区大人系の印象が強く、ショールームやオフィスと複合したアーバンコンプレックスという特性は「ブリーゼブリーゼ」など西梅田の既存施設に通ずるものがある。テナント構成で特筆されるのが大手セレクトチェーンの大量出店で、「クロムハーツ」や「スティーブン・アラン」まで7店舗を投入したユナイテッドアローズを筆頭にパルグループ、アーバンリサーチ、ビームスが各3店を出店。国内各社が新業態や関西初、大阪初の業態を投入する中、日本初上陸の「ZARA HOME」(ららぽーと横浜と同時オープン)が飛び抜けた注目を集めている。
 「ZARA HOME」の主力はホームリネンで、「ラルフローレン」や「ローラアシュレイ」と人気を分けそうな洗練されたテーブルリネンやベッドリネンがコレクションテーマ別に並ぶ。お値段はファストというポジションではなく「ローラアシュレイ」に近い。インディテックス社では日本未上陸のハイクラスSPA「マッシモデュッティ」に並ぶクラス感がある。
 他にもサザビーズリーグが手掛ける大阪初の「ロンハーマン」、リステアのデジタル雑貨新業態「リステアデジタル」、ジョンブルのセレクト新業態「ドレサージュジョンブル プライベートラボ」、ユナイテッドアローズがプロデュースするNY発セレクト系カジュアルSPA「スティーブン・アラン」、アバハウスのカップルカジュアル新業態「マイセルフ アバハウス」、地元クレヨンの変身が伺える関西初セレクトショップ「ラ・ブティック」、アーバンリサーチがファストファッションにチャレンジした新業態「センスオブプレイス」、シマムラトーキョーの個性的なセレクト新業態「エデン・デュエット」など、各社の力が入った店が並ぶから一度は見ておく必要があろう。

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