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ブログ論文(アパログ2017年10月19日付)
『イケア失速の構図に学べ』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング 代表取締役

 ニトリの急成長とイケアの失速が対比されるが、イケアは何故、失速したのだろうか。ECへの出遅れが指摘されるが、より根源的な問題が潜むのではないか。
 イケア・ジャパンの売上は2014年8月期の771.6億円までは5.9%増と堅調だったが、15年は前期に立川店と仙台店の二店を開業したにもかかわらず1.2%増の780.8億円に留まり、16年8月期は767.6億円と減少に転じている。収益性も13年8月期の営業利益率12.0%がピークで、14年8月期以降は釣瓶落としに低下して15年8月期は1.2%まで落ち込んだ。06年4月に再々上陸してから10年も経つのに800億円を前に足踏み、この間に3238億円も売上を伸ばしたニトリとは大差がついてしまった。
 その背景としてECへの出遅れが指摘されるが、ニトリとて前年から33%も伸ばしたとは言え226億円とEC比率は4.4%に過ぎず、経済産業省EC統計における雑貨・家具・インテリア分野のEC比率18.66%と比べれば出遅れを否めないし、顧客登録さえ支障をきたすなど旧式なECフロントには少なからぬ籠落ち要因が残る。イケア・ジャパンに至っては今春からようやくECに参入したばかりで店在庫から出荷する初歩的な体制に留まり、EC対応のフルフィルが整うには相応の期間を要すると思われる。
 今まで長きに渡ってECを否定して来店持ち帰りに拘り、数多のエセIKEAサイト(実質は購買代行業者)が乱立する状況を放置して来たツケは致命的で、未だAmazonにも楽天にもヤフーにも購買代行業者のIKEA商品が氾濫する中、『本家「IKEA」のECサイトです』と言っても混乱は当分収まらないだろう。イケア本社も遅ればせながら15年6月にマルチチャネル戦略を発表して戦略転換に踏み切っているが、遅きに失した感は否めない。日本市場ではすでに手遅れではないか。 
イケアがECを否定してきた要因は店頭販売への固執で、コーペラション(協働)思想に基づく顧客の労働分担というセルフサービス神話が背景にあった。イケアは『顧客が店内物流も持ち帰り物流も製品組み立て労働も負担するから安く提供出来る』というロジックで成長して来たが、オムニチャネル消費の利便が加速度的に高まる今日、その重い労働負担が顧客を遠ざけるようになったのではないか。
 流通業界では『顧客が労働を分担する分、割安に売れる』という‘セルフサービス神話’が未だ健在で顧客に労働分担を強いる事が当然とされるが、オムニチャネルな利便が競われる今日、もはや‘神話’でしかない。店舗はECに較べての「品揃えの狭さ」「情報の限定」「労働の負担」「時間の負担」が疎まれて顧客の離反が加速しており、その解消こそが真の‘オムニチャネル化’(ECと店舗が一元一体の利便を顧客に提供する体制)だと会得して全力で変貌しない限り、遠からず小売の歴史に埋もれてしまう。ちょうど一世紀前、急台頭するチェーンストアの利便に圧されてカタログ通販が釣瓶落としに衰退していったように・・・・・

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