小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年02月05日付)
『アマゾンはアパレルも席巻するか?』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 日曜(2月4日)の日経は一面トップで『アマゾン、アパレルの陣』と見出し、今春の東京への巨大撮影スタジオ開設を機に『アマゾンがアパレルも席巻するのか』と問いかけ、アパレル事業者はアマゾンと組むか否かの二者択一を迫られると結んでいた。
 米国ではファッション小売のEC比率が18%を超え、アマゾンのファッション売上がメイシーズを超えたと言われ、デパートチェーンもアパレルチェーンもカニバリ覚悟でEC拡大に注力して店舗販売は刻々と追い詰められているが、我が国も同じ轍を踏むのだろうか。
 我が国ファッション小売のEC比率は16年の10.93%(経済産業省の試算)から17年は14.5%増加し、店舗販売の減少も加わってEC比率は12.3%前後に達したと推計される。17年10月までに決算期を迎えたEC売上10億円以上のファッション関連企業44社の合計EC売上は3563億円、全体の平均EC比率は9.3%だがリテイラー20社平均は11.1%と一回り高い。これら44社の合計EC売上が前期から605億円(20.6%)増加した一方で非EC売上(大半が店舗販売)は970億円(▲2.8%)減少し、合計売上は365億円(1.0%)減少している。EC比率が高い企業ほど店舗売上の減少も大きく、EC比率が20%を超えた企業では店舗販売の落ち込みが顕著だから、EC拡大によるカニバリは米国と変わらない。
 かつては風合いを確かめたり試着しないと購入が難しいとされたアパレル商品だが、日米共、そんな固定観念が杞憂であったかのようにECが伸び続けている。3D採寸システムやZOZOスーツなどの技術革新が壁を押し上げるにしても、どこかに限界があるはずだ。その上限がどの辺りにあるかを推察させるのがECもカタログ通販もTVショッピングも合わせた通信販売全体の市場規模で、17年度は前年から4.5%増加して2兆3388億円と、衣料品・身の回り品小売総額の16.0%を占めている。米国では18%を超えて20%に迫っているから、この限界ラインもあてにならないのかも知れない。
 となれば店舗販売は一段と落ち込み、損益分岐点を割り込んだ定期借家契約店舗は負の資産に転落し、アパレルチェーンの大半は財務的に破綻してしまう。沈没が避けられない店舗小売業からECへと綱渡りの転換がパニック的に進む一方、ZOZOやアマゾンは急成長を継続するという構図しか見えないのが恐ろしい。
 もはや店舗小売業かECかではなく、どのECプラットフォーマーが覇権を握るかというグローバル決勝戦の段階に入っている。出店するコンテンツ側(アパレル事業者)にとって何処が有利か、販売力とコスト(手数料率)はもちろん、在庫効率や店舗との連携も問われよう。「場所貸し型」「フルフィル型」「マーケットプレイス型」とECプラットフォームを3分類してEC出店戦略を問うた昨年11月15日の私のブログ『ECの収斂と店舗販売の共生』を読み直してもらいたい。

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