小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年12月04日付)
『失った編集スキルをリユース店に学べ』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

7189ブログ画像1     
7189ブログ画像2     
 11月29日午後に青学ホールで開催したSPAC研究会『オフプライス/リユース流通総研究』のパネルディスカッションで、ゲオクリアの川辺雅之社長が『リユース衣料の販売で培った編集スキルでOPSを成功させる』と発言したことに注目したい。
 ゲオクリアは「セカンドストリート」「ジャンブルストア」など584店(リユース事業の直営535店/FC49店)を展開するリユース衣料販売の最大手ゲオホールディングスがOPS事業進出を図って設立したばかりの新会社で、川辺社長はリユース衣料販売の第一線を歴任してきたツワモノだ。
 OPS(オフプライスストア)とはブランド商品の値引き販売店で、アウトレットストアが自社の売れ残り品を値引き販売するのに対し、OPSは他社の売れ残り品や在庫品を仕入れて値引き販売する。アウトレット店が商品供給の不安定さ(安定しても困るが)から多店化とともに専用開発商品比率が高まって事実上のオフプライスSPAと化すのに対し、OPSは数多の調達ルートを駆使して品揃えのバラエティと鮮度を保ち“宝探し”感覚のブランドショッピングを訴求する。
 米国ではTJXが4070店舗で359億ドル、ロス・ストアーズが1622店舗で141億ドル、バーリントン・ストアーズ、ノードストロム・ラックまで上位4社で611億ドル(うち衣料・服飾で447億ドル)を売り上げ、ファッション流通の15%を占めている。
 OPSは小売店の売れ残り品や流通在庫、ブランドメーカーの処分品やタイアップ調達品で品揃えするからPOS情報による補給が困難で、調達した商品を何段階にも再編集陳列・店間移動して売り切っていく編集VMDスキルが成否を決める。実際、TJXやロス・ストアーズのような巨大企業でも煩雑に新規投入して再編集陳列、店間移動を繰り返している。そんな編集VMDスキルはリユース店でも必須で、新規投入や消化動向に即して機動的に再編集し消化を図っている。
 アパレル業界はPOS依存の売れ筋補給と不振品の値引き処理という売場を見ない機械的な在庫運用に堕して編集VMDスキルを忘れ、値引きと残品が肥大して歩留まり率が60〜70%のデッドラインを彷徨うまで劣化してしまった。値引きと残品のロスを調達原価に転嫁してお値打ちまで切り下げるチキンレースが続けられるわけがなく、お値打ちの劣化と値引き販売の常態化で消費者に見放され“新品”衣料品の販売は行き詰まっている。
 編集VMDスキルを磨いた店舗スタッフが売れないものも売り切っていく役割を果たさない限り、衣料品の店舗販売に採算性はない。そんな真理をリユース衣料販売の現場経験から投げかけた川辺社長の発言をギョーカイは重く受け止めるべきだ。

 

論文バックナンバーリスト