小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年04月02日付)
『岐路に立つアパレルECの最新状況』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 先週水曜に開催したSPAC研究会では曲がり角に差し掛かったECの最新状況からハイテク装備のニューリテール、無在庫販売のD2Cビジネスモデルまで、ファッションビジネスの課題を余す所無く投げ掛けたが、その中から幾つかトピックスをダイジェストしておこう。
 まずはECの伸び率だが、メンバー平均は125.5%と前年回答(123.8%)から依然、陰っておらず、自社ECとECモールの伸び率もコンマの差しかなかった。平均EC比率は前年の10.9%から13.1%と2.2ポイントも上昇。ECのうちモバイル売上比率は69%に達したが、ZOZOTOWNの17年10〜12月期は前年同期から7ポイント近く上昇して82.1%に達しているから、まだ上昇の余地がある。
 規模の拡大とともに年々低下して来た自社ECの運営コスト(支払い手数料や外注費のみならず社内の人件費や経費までトータルしたもの)も宅配料金の値上げなどで前年より0.7ポイントの上昇に転じたが、それでも在庫を預けるフルフィル型ECモールより4.6ポイント低く、店舗販売の運営経費率より平均して10ポイント以上、最大17ポイントも低い。
 ECモールで注目すべきは、受注商品を自社DCでピッキングしてモール側のフルフィルセンターに送りモール側が顧客に出荷する「ハイブリッド型」が急増した事だ。在庫を預ける「フルフィル型」と受注データ(宅配伝票)を得て自社で出荷する「マーケットプレイス型」の中間的性格で、販売機会の拡大と在庫分散の回避を両立する知恵だが、手数料率は「フルフィル型」と大差ない。
 毎年注目されるメンバー企業(テナント側)によるECモール評価ランキングでは、ゾゾタウンが調査開始以来5年連続して断トツ首位に輝いた。中でも「集客力」「売上伸び率」「ファッション感度」は圧倒的に他モールを突き離している。総合2位はデベ系モールで最高評価されたマルイウェブチャンネルだが、平均ショップ売上はゾゾタウンの一割に満たない。総合3位のアマゾンは「集客力」が評価されたが、「ファッション感度」は楽天市場と大差ない低さが指摘された。
 項目別の16モール平均では「物流機能」の評価が高く、ロコンドとゾゾタウンの評価が高い反面でアマゾンが5位に留まったのは意外だった。最も平均評価が低かったのが「顧客データの提供」でプラス評価は一社も無く、在庫の分散と並ぶECモールの宿命と思われる。次いで評価が低かったのが「店舗への顧客誘導」で自社ECと較べれば大差を否めないが、ゾゾタウンと並んで新参の&モールが最高評価を得たのが注目される。詳細はSPACレポートをご覧ください。

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