小島健輔の最新論文

ファッション販売2003年8月号掲載
『湘南モール・フィルに見る注目ライフスタイルストア』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

日本のライフスタイルセンター時代が開幕

 JRの藤沢と辻堂のほぼ中間の日本電池藤沢工場跡地に3月20日にオープンした“湘南モール・フィル”は、本邦初の本格的ライフスタイルセンターとして注目される。
 大和ハウス工業グループの大和情報サービスが「湘南リラックス」をコンセプトに開発した二層計、店舗面積34,470㎡のコンパクトなモールは、基本的には最近の郊外大型SCの定形となっている「二核ワンモール+飲食サブモール」のレイアウトを採っているが、それらと決定的に異なるのが以下の5点である。
 1)GMSやスーパーセンターを核として広域商圏を狙わず、一階の両端にコンビニエンスなホームセンターの“ロイヤル”とSSMの“三和”、二階は“トイザらス”と家電の“ノジマ”、衣料スーパーの“パシオス”というカテゴリーキラーを配して、コンビニエンスセンターとパワーセンターの両面から生活圏の集客に徹している。
 2)モール前面に平行して2,000台の駐車場と1,400台の駐輪場を集中し、ダイレクト・パーキングの簡便性で近隣集客に徹している。
 3)二層に共通するメインモールではファミリーカジュアルやキッズ関連、ペット関連、ファンシー雑貨や生活雑貨、HBA関連のテナントを集積し、生活圏のファミリーライフスタイル訴求に徹している。
 4)一階ではグルメポートとリビングモールというサブモールを配し、飲食テナントを集積して地域住民のギャザリング機能を高めるとともに、インテリア関連のテナントを集積してライフスタイル消費を訴求している。
 5)生活圏対応に徹した構成ゆえに開発コストが低い分、テナントの不動産費負担も軽い。来店頻度の高さに支えられて販売効率は大型SCと大差なく、売上対比の不動産費負担は六掛け程度に収まっている。
 広域狙いの大型核を持たない事、生活圏のライフスタイル消費を訴求している事、生活圏対応に徹してコストが低く来店頻度が高い事などは米国のライフスタイルセンターの性格に近似しているが、ホームセンターとSSMにカテゴリーキラーというサブ核構成はコンビニエンスなパワーセンターという性格も合わせ持ち、より大衆的な近隣集客を確実なものとしている。

ライフスタイルセンター対応の業態開発が急務

 同日には名古屋郊外の星ヶ丘に三越と接続して“星ヶ丘テラス”がオープンしているが、こちらは高所得なコミュニティに位置して洗練された飲食テナントも多いなど、より米国のライフスタイルセンターに近い。開発立地の多さと大衆性を考えれば、“湘南モール・フィル”タイプの方が主流になっていくと思われる。但し、ライフスタイルセンターは比較的成熟した住宅地を後背として成立するものだから、ルーラルや開発途上のサバーブには向かない。5Km圏で30万人以上という人口密度が一応の目安であろう。
 近隣住民にとっては利便性と居心地の良さ、デベロッパーにとっては開発の容易さとコストの低さ、テナントにとっては集客の確かさと不動産費負担の軽さと、三方一両得のライフスタイルセンターだから、高コストで開発数も限られる大型SCに替わって郊外SCの主流となっていくのは確実だ。ファッション店にとっても、ライフスタイルセンターに対応する業態開発が急務なのではないか。    

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