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『コロナでデザイナーブランド壊滅か!』(2020年06月05日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 緊急事態宣言も明けて次々と再開された都心の商業施設や百貨店を怖々ながら一周して来た。アパレル各社が休業期間中に、どう在庫処理に動いていたか検分するためだ。
 地方や郊外の開いていたお店に在庫を回せたお手頃価格のチェーンは春物を引き上げて、新規に投入した夏物でなんとか顔を作っていたが、都心部に店舗が集中して営業できる店舗が限られた高価格ブランドや高感度ブランドは在庫を処理する場所がなく、LVMH系など一部ブランドを除いて休業前の状態のまま再開した店舗が多かった。百貨店ブランドでも、レナウン系ブランドがバーゲン状態で再開したのは致し方ないとしても、三陽商会系ブランドが休業前とほとんど変わらない品揃えだったのは無為無策を責めたくなる。
 店舗に代わって好調だったECに在庫を回しても、30%以上をECで売っていたブランドならともかく、それ以下では在庫を処理しきれず、試着を要するデザイン性の高いブランドも限界があった。
 そんな中、ほとんどのブランドが休業前の在庫状態のままセールもせずに再開していたのが東京デザイナーブランドだった。恐らくは、休業期間中の売場に入って在庫を引き上げもしなかったブランドが大半だったのではないか。
 運転資金に余裕があるブランドは春物を秋口に再投入したり来春まで抱えるという選択もできるが、資金繰りに窮したブランドはバッタ屋さんに調達原価の半値で叩き売るか、営業再開を待って処分セールに走るしかない。百貨店やファッションビルを主戦場とする価格の高い、あるいは感度の高いブランドは結局、営業再開を待ってセールで処分するという判断が多数派だったと思われる。
 しかし、営業再開と同時にセールに走っても、その売上金が手に入るのは駅ビルやファッションビルで平均22.5日後、百貨店はさらに2週間以上遅れる。路面の直営店なら即、日銭が入るが、テナント店やインショップばかりだとそうはいかない。
 休業期間中に在庫処理にも動かず、ECでの在庫処理も進まず、休業前の在庫を抱えたままセールに入っても売上金が入るのが先になれば、よほど余裕のあるブランドでない限り資金繰りに窮するのは目に見えている。
 デザイナーブランドの多くは再開業しても休業前の在庫を抱えたままセールも始めておらず、換金はさらに遅れてしまう。大手アパレルとて支援する余裕などあるはずもなく、6月末から8月末にかけて破綻するブランドが続出すると危惧される。
 東京オリンピックも延期されたまま中止になる公算が高く、クールジャパンと謳っても外国人観光客は消え果て、東京クリエイターまで総崩れになるとしたら、トーキョーカルチャーの灯は絶えてしまう。トーキョーの夢をコロナが摘む結末となるのだろうか。
 

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