小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年01月22日付)
『コモディティ服に勝負あった!』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

df208aa1888acf73201ea2e3f4787fc7

 週末の朝日新聞は『ワイヤなしブラゆったりと人気』と見出し、国内女性下着市場でファーストリテイリング(ユニクロ)のシェアが20%に達して首位のワコールに肉薄しているというユーロモニター社の調査を取り上げ、『ゆったりとした服の流行で下着もカジュアル化している』と繋いでいたが、適確な認識だと思う。
 ファッション業界がクリエイションだトレンドだと騒いでも、社会負担増で生活に追われる消費者は「ケア不要で着回し易い緩くて手軽な服」へとどんどん傾斜し、服は“ファッション”から“コモディティ”へと加速度的に変質しつつある。ボディコンな服やセクシーな下着、着こなし難くケアを要するデザイン過剰な服や割高な服が疎まれ、主張を抑えて機能性を重視した生活用品としての服や下着が求められているのだ。
 米国では“セクシー”で売って来た「VICTORIA’S SECRET」の人気が凋落し、アスレジャーブランドのワイヤーもパットも入っていない楽チンな“ブラレット”に人気が移り、我が国でもマルキュー系のセクシーランジェリーやワイヤー入りのブラが疎まれ、「ユニクロ」のワイヤレスブラが売上を伸ばしている。アパレルでも世界中でボディコンなブランドは不人気で、“脱ノームコア”と期待されながらも“アスレジャー”“ドメコン”とフィットはどんどん緩くなり、メンズでは“ガテン”まで台頭している。
 「ケア不要で着回し易い緩くて手軽な服」へと消費者が傾斜していく中、昨年の上半期までファストファッションに圧され気味だった「ユニクロ」が秋冬商戦で急速に盛り返し、トレンドを売り物にして来た外資系のファストファッションが景気の浮揚とは裏腹に軒並み勢いを失ったのはマーケットの変質を痛感させる。
 女性が労働戦力化するほど、服は“お洒落”から“生活用品”へと変質せざるを得ない。クリエイションやトレンド、ものづくりのこだわりで消費者との非対称性を訴求するファッションギョーカイと生活の現実に追われる消費者との乖離は、もはや破滅的な域に達している。そんな現実にギョーカイは真摯に向き合うしかないだろう。

論文バックナンバーリスト