小島健輔の最新論文

WWD 小島健輔リポート
『しまむらの「成長戦略」に物申す 比類ない事業基盤がもったいない』
(2024年04月09日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 2024年2月期は売上高も利益も過去最高を更新して新たな成長戦略を打ち上げたしまむらだが、「成長への挑戦」「お客様にワクワクをお届け」とうたう割に新中期計画の中身は堅実を出ず、4666億円も積み上がった株主資本の積極活用も見えてこない。比類ない事業基盤と強かな底力を秘めながらも牛歩に徹するしまむらに喝を入れたくなった。

 

4期連続の成長と最高益更新の24年2月期

 

 しまむらはコロナ前20年2月期を底に4期連続して売上高も利益も伸び、24年2月期は売上高6350億9100万円(前期比103.1)、営業利益553億800万円(同103.8)、経常利益567億1600万円(同104.3)、当期純利益400億8400万円(同105.4)と過去最高を更新した。

この4期間に売上高は21.7%、営業利益と経常利益は2.4倍、純利益は3.1倍になったのだから「絶好調」と言っても良いのだろうが、18年2月期から3期間の迷走を脱して本来の強さを取り戻しただけで、17年2月期からは売上高は12.3%、営業利益は13.4%、経常利益は13.3%、純利益は22.0%しか伸びていない。年率にすれば売上高は2%弱、営業利益は2%強の伸びにすぎず、「成長した」という範疇には到底入らない。

粗利益率は34.4%と前期から0.3ポイント上昇し、19年2月期の31.8%からは2.6ポイント上向き、18年2月期の33.5%も超えて「過去最高率」を更新している。その一方、販管費率は前期から0.3ポイント上昇しても25.9%と、最悪期だった20年2月期の28.3%からは2.4ポイント抑制されたが、17年2月期までの24%台、13年2月期までの23%台からは上振れたままで、「従来の枠組み」を超える運営体制の再構築が急がれる。長年、毎月のようにしまむらの店舗運営を見てきた私としては、RFID(電子タグ)によるマテハン業務の効率化とセルフレジ導入という店舗DX(デジタル・トランスフォーメーション)が突破口ではないかと思う。

結果、営業利益率は前期から横ばいの8.7%と大底だった20年2月期の4.4%から大きく回復し、11年2月期〜13年2月期の9%台の回復も射程に入ってきた。30年度(31年2月期)の10%という目標も、運営体制が刷新されて販管費率が抑制できるなら十分に実現可能と思われる。

容易に上向かないのが在庫回転で、前期から0.12回減速の7.48回転と、20年2月期の6.89回転からは上向いたものの、8回転を超えていた18年2月期まで、9回転を超えていた16年2月期まで、10回転を超えていた14年2月期までとは比較すべくもない。前期から0.12回減速しても値下げロスは「しまむら」で6.5%と前期から0.4ポイントの上昇(値下げ額は9.6%増加)、「バースデイ」も4.9%と0.6ポイントの上昇にとどめ、前期が14.1%とロスが大きかった「アベイル」は13.2%と0.9ポイント改善されているが、従来のサプライと在庫運用の枠内では上昇を抑えるのが精一杯で、次元を画す改革が必要だろう。

 

効率指標に見る「回復」と「成長」

 

この4期間に店舗数は2066店から2227店へ161店(7.8%)、総店舗面積は208万8971平方メートルから224万8917平方メートルに7.7%増加したが、平均店舗面積は1011平方メートルから全く動いていない(「しまむら」だけ取っても1043平方メートルから1047平方メートルと同様)。平均店舗売上高(期中平均店舗数ベース)は2億8608万円と20年2月期の2億3624万円から21.1%増加したが、17年2月期の2億7720万円からは3.2%しか伸びておらず、「成長」というより「回復」と言うべきだろう。

年間の坪当たり販売効率は17年2月期の89.3万円から20年2月期の大底では76.4万円まで落ちたが、24年2月期は93.2万円に上昇して17年も4.4%上回り、25年2月期は95.6万円と07年当時の水準を回復すると見込んでいるが、これも「回復」の範囲を出るものではない。

従業員1人当たり売上高は20年2月期の3374.2万円から24年2月期は4122.4万円と22.2%も上昇して国内ユニクロの3476.6万円(23年8月期)を18.6%も上回り、17年2月期の3690.8万円からも11.7%上昇している。1人当たり粗利益額も20年2月期の1096.6万円(粗利益率32.5%)から24年2月期は1418.1万円(粗利益率34.4%)と29.3%も上昇して国内ユニクロの1665.3万円(粗利益率47.9%)の85.2%と迫り、17年2月期の1225.3万円(粗利益率33.2%)からも15.7%上昇しているから、人時効率は着実に「成長」している。

人時効率の成長があるからこそ、22年4月に正社員5.6%、パート4.6%の賃上げをして23年2月期の平均給与が449.3万円とアパレルチェーンとしては高水準でも人件費率は0.1ポイントアップの12.8%、23年4月も正社員6.5%、パート5.2%の賃上げをしても24年2月期の人件費率は0.3ポイントアップの13.1%に抑制できている。

未だバーコード管理で有人レジ頼りという店舗DX以前の状況にあってこの効率だから、ユニクロのようにRFIDで在庫管理してセルフレジ精算するようになれば1人当たり売上高は5000万円に迫り、1人当たり粗利益額は国内ユニクロを超えるかもしれない。新中期計画でも「販促のデジタル化」はうたわれているがOMOアプリ活用の個客アプローチであって(リテールメディアにもリーチできる点は注目)、RFIDによる店舗運営のDXは予定されていない。

高い人時効率をもたらしているのが、たたみ直し作業を回避するハンガー陳列への特化だが、ニット/カット単品やジーンズまでハンガー陳列一辺倒ではメリハリがない催事場のような売り場になり、顧客も「ワクワク」という気分にはならないだろう。マネキンやトルソーもミセスとティーンズぐらいは分けているのだろうが、今時の「骨格タイプ」対応など発想の域を超えているのではないか。

アパレルチェーンにとってフェイシング管理など売り場のマテハン効率は人件費に直結して利益を左右するが、マテハン効率一辺倒では売場の魅力を損なって消化歩留まりにも響くから、RFIDを導入して浮いたマテハン人時をVMDや接客に投じるべきだが、新中期計画に挙げられていないのは残念だ。

 24年2月期の売掛債権回転は7.1日と20年2月期の4.2日より2.9日延びているが、キャッシュレス決済が急増して4割を超えたことが背景と思われる。棚資産回転は20年2月期の53.5日から23年2月期は48.8日に短縮されたが、PB(プライベートブランド)の拡大(注1)もあってか24年2月期は50.2日とやや延びた。買掛債務回転は20年2月期の19.3日から23年2月期は21.8日、24年2月期も21.6日とほとんど変わっておらず、アパレルチェーンとしても極めて速い(アパレルメーカーは格段に遅い)。

結果、CCC(Cash Conversion Cycle)は20年2月期の38.4日から23年2月期は33.0日、24年2月期も35.7日とさほど動いておらず、純資産対比の運転資金率は20年2月期の15.0%から23年2月期は12.7%、24年2月期は13.1%と多少の上下はあるが、健全すぎる水準は変わらない。

 純資産が20年2月期の3659億円から23年2月期は4400億円、24年2月期は4714億円と順調に積み上がる一方で投資が限られ、自己資本比率は20年2月期の89.7%が23年2月期は87.6%、24年2月期は88.3%と高水準で推移。総資産回転率も20年2月期の1.28回が23年2月期は1.23回、24年2月期は1.19回と減速して過剰資金体質が極まっており(小売業の水準は2.0以上)、アクティビスト(モノ言う株主)に付け入る隙を与えている。

自己資本純利益率(ROE)は20年2月期の3.6%から23年2月期は8.9%と大きく改善されたが、24年2月期は8.8%と足踏み、総資本利益率(ROA)も20年2月期の3.3%から23年2月期は7.8%と大きく改善されたが、24年2月期は7.7%とやはり足踏みしている。新中期計画(27年2月期がゴール)でも、営業利益率は9.2%と最盛期の水準(12年2月期の9.4%)に迫るがROEは「8.0%程度」と後退を示唆しているから、アクテイビストからの株主提案(注2).を取締役会で反対決議したことも火に油を注ぎ、積極投資で資本効率を抜本的に上げるか配当の上積みや自己株取得で株主価値を上げるかの選択を迫られることになるだろう。お金持ち(過剰資金)企業にも、それなりの苦労があるようだ。

(注1)しまむら業態のPB売上高は10.2%増加して比率は22.3%、JB(ジョイント デベロップメント ブランド)売上高は10.7%増加して比率は8.5%になったと開示されている

(注2)マネックス・アクティビスト・マザーファンドからの株主提案は一株あたり純資産の5.0%を配当の下限とするもので、24年2月期だと320.68円となり現状の280.00円を14.5%上回る

 

新中期計画は「当たり前」を超えるのか

 

24年2月期までの前中期計画で「リ・ボーン」(再生)は完成したとして、新中期計画では「ネクスト・チャレンジ」と名付けて新たな成長を構想し、27年2月期のゴールは売上高7190億円(24年2月期比113.2%)、営業利益660億円(同119.3%)、営業利益率9.2%(同+0.47P)を計画している。年率で売上高は4.22%、営業利益は6.06%の成長だから、「チャレンジ」とうたうには控えめだが、2030年の長期目標は売上高8000億円以上、営業利益率10.0%を掲げている。27年目標からは売上高で11.27%(年率3.62%)、営業利益で21.21%(年率6.62%)の成長だから、新中期計画の成長ペースを継続すると想定している。

新中期計画の骨子は前中期計画の成果を土台に「当たり前」を改め、「社員全員の創意工夫」を活かしてステップアップするもので、以下の4点を挙げている。

 

(1)しまむら事業への収益依存を脱してグループ全体で稼ぐ事業編成へ

 

(2)前中期計画から継続する商品力強化、販売力強化をブラッシュアップ

 

(3)資本効率の改善と経営資源の適正配分

 

(4)しまむら流ESG活動の推進

 

 (1)(2)については「品ぞろえの幅出しによる顧客層の拡大と店舗の大型化」「OMOの推進によるECと店舗の相互利用拡大と販促のデジタル化」「出店再配置と改装による店舗効率向上とドミナントの最適化」「ファッションモール(自社複合)出店による収益力向上」「都市部出店によるブランディングと顧客獲得」「ローカル対応による個別最適化」「接客とVMDの向上によるストア魅力と売上高の向上」(私が要約)など具体的に挙げられている。それぞれは的確だが運営効率や資本効率、ロジスティクスと矛盾する施策もあり、優先順位や投資の適正配分、課題を解決する仕組みやスキルの工夫が問われそうだ。

 

新中期計画の課題と可能性

 

24年2月期は「しまむら」も「アベイル」も「バースデイ」も下半期が減速し、通期でいずれも客数も買上点数も減少。「しまむら」で4.2%、「アベイル」で4.3%%「バースデイ」で3.9%上昇した客単価に押し上げられて既存店売上高は「しまむら」で3.6%、「アベイル」で3.3%上昇したが(「バースデイ」は1.4%減)、一点単価は「しまむら」で7.1%、「アベイル」で6.5%、「バースデイ」で8.3%も上昇し、「しまむら」で0.8%、「アベイル」で1.4%、「バースデイ」で3.3%の客数減を招いた。その「反省」に立つなら、前中期計画の延長の「当たり前」ではなく、一歩も二歩も踏み込んだ改革が必要ではないか。 

23年はインフレに賃上げが追いつかず勤労者の実質賃金は2.5%も減少したが、人口の限られる生活圏の庶民層を顧客とするしまむらにとって「単価上昇の客数減」は危機的なサインであり、高付加価値PB・JBの拡大に気を許しているとリーマン前のイトーヨーカ堂の衣料品のように取り返しのつかない事態を招きかねない。単価の抑制と「お、値段以上」のお値打ち(品質と見栄え)追求、顧客間口(品ぞろえのバラエティー)の拡大が最大課題のはずで、それには商品企画とサプライの革新によるお値打ち向上と需給一致、在庫運用とVMDのスキル向上による値引きロスの圧縮、両者をつなぐロジスティクスの再編が不可欠と思われる。

具体的には以下の7点が要ではないか。

(1)素材と生産プロセスに踏み込んだ「お値打ち」「見栄え」の向上と現実的なQR

 

(2)今風の抜けたウエアリングの導入と骨格タイプ対応のスタイリング提案

 

(3)マテハン効率と「見栄え」を両立するVMD体系の確立

 

(4)RFIDとセルフレジの導入による人時効率改革

(5)OMOアプリとID-POSによるタイムリー&パーソナルなデジタル販促とリテールメディア化

(6)自社ECのマーケットプレイス化と店舗受け取りによる客数の飛躍的拡大

(7)物流キャパとOMO対応のロジスティクス再編

 

 「しまむら」の衣料品は仕入れ掛け率が62%程度と極めて高く、サプライチェーンを遡った生産原価率も48%程度とGMS(総合量販店、38%前後)や多くのSPAチェーン(28%前後)より格段に高いから客観的な「お値打ち」は圧倒的に高いが、量販的なハンガー陳列一辺倒の平場構成、骨格タイプやウエアリングトレンドも素材コントラストもカラーコントラストも顧みない無粋なコーディネイトが災いしてか、店頭で見る「見栄え」は決して高くない。値段相応の「安物」にしか見えないのは、生産原価から見た「お値打ち」を思えば商品が可哀想だ。

2段陳列上段のフェイスアウトをもう少し工夫したり、棚を組み込んでFD(たたみ陳列)で変化とコーディネイトを訴求したり、骨格タイプの欠点を補正するクロスコーディネイトを提案したり、今風に抜けて着こなすウェアリングを見せたり(素材とパターンから変える必要があるが)、季節のトレンドカラーをキーにした明彩度のコントラストを組んだりすれば、随分と「見栄え」が上がると思うが、マテハン人時量の枠に収まらなくなるのだろうか。コーナーディスプレイに演色性も輝度も高いLEDスポットを当てれば「見栄え」は一変するが、せめて骨格タイプ対応のマネキンやトルソーぐらいは使うべきだろう。

「見栄え」の向上には生産の仕上げ工程も肝で、ジャケットやコートはプレス成形、ニットは縮絨仕上げに時間とコストを割けばワンライン、ツーライン高く見える。アパレルメーカー発祥のインディテックスはそこでライバルと差別化している。

「しまむら」の品ぞろえはバラエティーがあるようで、テイストは違っても似たようなコンサバウエアリングを出ておらず、今時の抜けて着こなす感覚の商品はほとんど見られない。アダストリアの「グローバルワーク」「レプシム」、アダプトリテイリングの「コカ」みたいな合繊活用で機能や肌触りを訴求するPBやJBが広がれば、子育て世代ももっと取り込めると思うのだが。

「見栄え」を訴求するにも「抜けたウエアリング」を訴求するにも什器やマネキンを入れ替えてVMDを刷新する必要があるが、VMDを強化するにも接客を強化するにも人時量の割り当てが必定だから、品出しやフェイシング管理、店間移動商品のピッキング(しまむらの在庫運用の肝)などマテハン人時量やレジ精算人時量を圧縮する必要がある。RFID導入による在庫管理とマテハンの効率化、セルフレジの導入は最速最優先の課題ではないか。ユニクロとアスタリスクが争った衝立式セルフレジもAI技術が進んだ今となっては旧式で、見栄えも良い衝立なしのフラットタイプに交代していくと思われる(東芝TECの写真参照)。

しまむらのOMOアプリは業態別ではあるがクロス運用されているようで(BOPIS※1.も返品も業態をクロスして可能)、個人情報や購買履歴でレコメンドする機能をストアモードで活用すればデジタル販促のみならずリテールメディア運用も可能と思われる。FC※2.在庫を抱えない(サプライヤーが在庫を抱える)擬似ドロップシッピング※3.のフルフィル体制を採るしまむらのECは縦売り(単品量販)が伸びず、24年2月期は74.8%伸びても72億4000万円(EC比率1.14%)にとどまるが、擬似ドロップシッピングゆえにマーケットプレイス化が容易で、生活商圏の占拠率が圧倒的なしまむらには食品や化粧品、サプリや美容家電などのNB(ナショナルブランド)メーカーの出品や広告出稿が期待される。マーケットプレイス化でラインナップが広がって店受け取り客が拡大すれば、客層も広がって売上高のかさ上げにも寄与するのではないか。

商品改革には「ラインロビング」も挙げられていたが、キャンディーやチョコ、グミなどの菓子類や均一価格雑貨に加え、米国ターゲットの稼ぎ頭になった美容家電も広告出稿と合わせて有望ではないか。「お客さまにワクワクをお届け」というのが建前でない本気なら、近隣の顧客が集い憩えるカフェの併設もファッションモールには必須と思われる。意識高い系若者向きの「スタバ」というより実質「お値打ち」が高くくつろげる「コメダ」の方がしまむら顧客には向いているのではないか。企業FCで百店超を展開すれば「シャンブル」くらいの売上高は上乗せできそうだ。

ファッションモール戦略も、自らがデベロッパーとなって自社業態に食品スーパーやドラッグストア、均一価格雑貨店やファーストフードなどを複合したNSC(ネーバーフッドショッピングセンター、小商圏型商業施設)を形成すれば過剰資本も活用されて資本効率が高まり、アクティビストの付け入る隙もなくなるのではないか。

自社ECのマーケットプレイス化とBOPISが広がれば、24年問題もあって中間デポの増設で濁しているロジスティクス体制も抜本的に再編する必要が出てくる。現状の全国10リージョナル体制の維持は困難で、16ないしは18リージョナル体制に移行するべきではないか。東松山のECセンターが通常のFC(在庫保管出荷のフィルフィルセンター)なのか棚入れしない仕分け通過型のTCなのかは不明だが、仕分け通過なら、現状の店受け取り比率が9割近い(24年2月期は87.6%)のだから、リージョナルロジスティクス体制に組み込むべきだろう。

 

※1.BOPIS…Buy Online Pick-up In Storeの略称で、ECで発注して店舗で受け取るショッピングスタイル

 

※2.DC(Distribution Center)とTC(Transfer Center)とFC(Fulfillment Center)…入荷した商品を棚入れしてからピッキングして出荷する保管型のDCに対し、棚入れせず仕分けして送り出す通過型の物流施設がTCで、FC(Fulfillment Center)は通販の出荷用DC

 

※3.ドロップシッピング…在庫を抱えず受注してサプライヤーが顧客に直送するEC事業形態

 

比類ない事業基盤を発展させる経営意思を問う

 

 しまむらは生活圏の衣生活を支えるエッセンシャルストアであり、全国津々浦々をカバーする店舗網と効率的な運営体制、アパレルチェーンで唯一のリージョナルロジスティクス基盤を確立しているが、半世紀も前に確立された事業モデルを出ようとせず、成功体験の「当たり前」に閉じこもって現状を踏襲する堅実な成長シナリオに固執している。

 DXとOMOが小売業の武器となった今日ではしまむらのエッセンシャルストアという基盤は比類ない「金の卵」であり、今時のマーケテイングと最新のDXとOMOを駆使すれば倍にも化けられる可能性を秘めている。しかもアクティビストに付け込まれるほど過剰な資本を抱えており、殻を破る戦略と経営意思さえあれば一時の国内ユニクロに匹敵する成長も難しくないと思われる。しまむらを愛顧する生活圏の顧客に日常のワクワクと利便を届けるためにも、同社の覚醒に期待したい。

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