小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年11月30日付)
『撮影ボットに注目』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 ギョーカイがECに沸騰するにつれ、掲載点数も一点あたり情報量も加速度的に増加し、画像の差し替えなどの日常運用も煩雑になって白兵戦の様相を呈しているが、足を引っ張っているのが“ささげ”の渋滞遅延だ。
 なんでも速そうなデジタル世界だが、ECサイトへの商品掲載は店頭投入より遅れるのが常態化しており、SPACメンバー平均で昨年は5.8日、今年は6.6日ものタイムラグが報告されている。EC掲載が店頭に先行する企業は皆無で、全社が遅延の要因は“ささげ”だと回答している。どうして“ささげ”が渋滞してしまうのか、その背景は以下の4点だと推察される。

1)掲載商品の増加と特定時期への集中
 掲載商品の絶対量が増え、シーズンの立ち上げ時期に集中すれば、遅延は避けられない。その対策はサンプルの先行作成に尽きる。
2)ビジュアル情報のリアル化・高精度化
 かつての平置きやトルソー着せからモデル着用、全色・多方向・詳細ズームの掲載が必須となり、撮影前の背景や照明、アングルやレンズ、絞りやシャッター速度、ISO感度や色温度の設定、撮影後の画像処理など一点あたりの手間が桁違いに増加している。
3)モデルとカメラマンのキャスティング
 ビジュアルのクオリティやブランドイメージを追求すればモデルやカメラマンも選ぶ必要があり、撮影のタイミングとキャスティングが噛み合わないと遅延してしまう。
4)サンプルの遅れ
 量産商品の納品を待って撮影すれば遅延は必至だから、ECに注力するブランドでは量産に先行して撮影用のサンプルを作成しており、アパレルメーカーでは展示会用やプレスルーム用のサンプルを転用している。

 これらを解消するにはサンプルの先行作成が最も確実で効果的だが、ロットが小さいと採算が合わない。モデルのキャスティングはアンドロイドの開発を待たねばならないが、カメラマンのキャスティングと撮影はボットシステムへの設定登録で代替できる。「撮影ボット」は大量の撮影を要するECでは必須の機材だが、なかなか使い勝手とクオリテイを両立してコストに見合う機材が出てこない。
 そんな中でEC業界に広がり始めているのがオービットブイユージャパンの自動撮影システムだ。クライアントのAMSさんが導入して『使えるよ』というので、TOCのオービットブイユージャパンまで見学に行ってきた。なんだかステマみたいになるので(私は何の利害関係もございません)、詳しくは同社のHP(https://photoautomation.jp/products/)を見てください。

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