小島健輔の最新論文

WWDジャパン2009年9月14日号掲載
『いま、なぜガールズプロデューサーなの?』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 ガールズプロデューサーがブーム化して益若つばさちゃんなんて雑誌からTVまで出ずっぱりという過熱ぶりですが、その元祖は森本容子や中根麗子などカリスマ販売員に遡ります。他にも読者モデルやタレントなど等身大な‘消費者代表’が業界の玄人を差し置いてファッションリーダーになった感があります。
 振り返って見れば70年代は海外ライセンスブランド、80年代はDCブランドとクリエイターがファッションリーダーだったのに、90年代になるとSPAやセレクトショップが台頭してマーチャンダイザーやバイヤーがクリエイターに取って替わり、今世紀に入っては劇可愛ブランドや劇安SPAが台頭して等身大な‘消費者代表’が主役の座を占めるようになりました。ファッションビジネスの近代史は消費者進化とともに主導権が業界の玄人から消費者に移行し、それとともに付加価値が圧縮されて単価が下がり市場規模が縮小して行ったと総括されます。実際、衣料品市場は91年の19.88兆円から年々縮小して08年には13兆円を割り込んでしまいました。家計消費支出に占めるファッション関連支出比率(ファッション係数)も急ピッチで低下し、60年代には10%を超えていたのに93年には7%を割り、08年度は4%を割り込んでしまいました。
 しかし、この流れにはもうひとつの背景が指摘されます。それは消費者は実は進化したのではなく退化していったのではないかという見方です。消費が低迷する中もお手軽なファストファッションやファストフードなどファスト消費だけは好調ですが、その要因は価格の安さだけではなくデジタル世代のファスト消費体質に在るのはないでしょうか。
 デジタル世代は団塊Jr以降のほぼ37才以下の人達で、CDやネット経由の圧縮されたデジタル音楽、デジカメや写メの圧縮されたデジタル映像しか知らず感性までデジタルに圧縮された世代であり、それゆえ表情豊かなアナログ商品や味わい豊かなアナログフーズにこだわらず、デジタルに圧縮されたファストファッションやファストフードで満足してしまうという見方です。ユニクロやH&Mに満足し、風合いやフィットも確認せずにケータイでショッピング出来るファスト感覚はデジタルな感性に圧縮済みだからと推察されるのです。
 そんなデジタル世代に業界の玄人がアナログな完成度を訴求しても空振るだけで、ならば感性圧縮済みのデジタル世代には彼女達と等身大なガールズプロデューサーの方が遥かにマッチするという帰結となったのではないでしょうか。
 感性圧縮済みのデジタル世代にガールズプロデューサーを起用した手頃なファストファッションで対応するのか、数少なくなったアナログ世代とその継承者に玄人が手の込んだアナログファッションで応えるのか、業界は割り切るしかありません。商売の対応はともかく、“ユニクロ”や“H&M”、“マクドナルド”や“ニトリ”で満足してしまうファスト消費文明が落日の日本を象徴しているように思うのはアナログ世代の偏見なのでしょうか・・・・

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