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ブログ(アパログ2019年08月07日付)
『バーニーズに3度目は無い』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 春先から破産法申請の噂が消えなかった米国バーニーズが8月6日、とうとう連邦破産法11条(チャプター11)を申請して破綻した。バーニーズは96年にも破産法を申請して債務を整理し出直した経緯があり、今回も投資ファンドなどから7500万ドルの融資を確保しての周到な債務整理と見られる。
 米国のチャプター11は債務整理と事業再生を法的に執行するもので、再生計画が整っていればつなぎ融資も受けられる。その間に債務整理の見通しがつきスポンサーが現れれば再生へ、ダメなら事業を清算することになる。今回の破産法申請も投資ファンドの融資を取り付けての出来レースだが、リスクを負って再建を担うスポンサーが現れないと清算になる。
 96年の時は店舗網の整理が徹底されず、今回もシカゴ、ラスベガス、シアトルなど7店を閉鎖するが、家賃負担が破産法申請の引き金を引いたとされるNYマジソン街の旗艦店はもちろん、同じ大家から借りているビバリーヒルズ店、サンフランシスコとボストンの店も残る。重在庫のはけ口となるバーニーズ・ウエアハウス2店も残さざるを得ない。
      
 今回の破産法申請の一番の問題は申請に至った経営悪化の構図が明らかにされていないことで、これでは96年の申請と同じく経営体質が改善されず、再び破綻するリスクが極めて高い。そう見るならリスクを負って再建を担うスポンサーは現れず、清算することになるかも知れない。
 バーニーズの経営体質は96年の時と何も変わっていない。それは販売消化力に見合わない重在庫であり、エクスクルーシブ・バイイングと店舗網の少数分散という矛盾に起因している。
 米国のデパートチェーンやセレクトチェーンのブランド調達は品番単位の独占仕入れという「エクスクルーシブ・バイイング」(我が国で言う「別注」に近い)に立脚しており、全米エクスクルーシブか四地区(西海岸/東海岸/中南部/中北部)いずれかのエクスクルーシブが成り立たないと店間移動も売価変更も自由にできず、ロット調達した商品の消化が見込めなくなる。
 大都市に少数店舗が点在するというバーニーズの店舗布陣ではエクスクルーシブ・バイイングが成り立たず、値入れを稼ぐべく大量調達しても店間移動と売価変更が制限されて消化が進まず、在庫を抱えての綱渡りが常態化してしまう。それは96年当時も今日も何も変わっていない。
 在庫が停滞すれば店頭の鮮度も損なわれ、販売効率も低位に留まる。NYマジソン街旗艦店の年間家賃が1500万ドルから3000万ドル(実質4400万ドル)に値上げされたことが破綻の引き金と言われるが、メンズ館とウィメンズ館を合わせて27万5000sqf(2万5575平米/7750坪)の家賃は値上げしても108円換算で47億5200万円、月坪5万1000円でしかない。
 同じマンハッタンでも5th.Ave. 711のラルフローレン旗艦店は5万3000sqf(1493.6坪)で年間2500万ドルを払っていたから、月坪家賃にすれば15万円強、アバークロンビー&フィッチの銀座旗艦店は11フロア計2121平米(642.7坪)で年間14億4000万円、月坪家賃18万6700円だから、倍近く値上げしてもバーニーズNYマジソン街旗艦店の家賃は法外に安い。その法外に安い家賃にも耐えられないバーニーズNYマジソン街旗艦店はよほど売れていないということで、あの巨艦店舗にして年間6000万ドル(年坪83.6万円!)しか売れていないという証言もある。
     
 バーニーズはビジネスモデルもブランドイメージもすでに終わっており、無理やり再建しても次の破綻が来るだけだ。バーニーズに3度目はない。
         

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