小島健輔の最新論文

WWD 小島健輔リポート
『アパレル在庫問題に究極の答え 「商品ライフサイクル管理」で無在庫化をめざせ』
(2021年11月25日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 過剰在庫と需給ギャップで値引きと残品のロスに苦しむアパレル業界だが、その一方で欠品による機会ロスも少なくないと思われる。過剰と過少の需給ギャップを少しでも解消すべく、様々な在庫管理アルゴリズムが使われているが、在庫の最適化は在庫管理アルゴリズムと在庫運用だけでは実現しない。商品計画段階、調達(生産)設計段階、販路仕分け段階、配分基準設定段階、初期配分段階(補給は自動化)、偏在補正段階、消化促進段階の各ステージごとに発動すべきスキルがあるし、それら一連するPLM(商品ライフサイクル管理)を戦略的に構築すれば、ほぼ無在庫で需要に応え売上を伸ばすマジックも可能になる。

 

■商品構成の継続性とクラスター管理が必要

 アルゴリズム在庫管理の基本は、投入からの経過に伴うクラスター/品番/SKU毎の売上数量の推移から週次の消化進行を予測し、予定販売期間で売れ残る数量を計算して警告リストを表示したり、エリア内の消化回転が遅すぎる(余る)店舗から速すぎる(欠品する)店舗へのSKU毎の移動点数を算出して店間移動のリストを表示したりすることだが、実効性を得るにはいくつか前提が必要だ。

 まず、商品構成が毎年大きく振れることなく、該当商品と比較できる前年、前々年の販売進行データが蓄積されていることが大前提で、商品構成が流動的ではデータが意味を為さない。当然ながらコロナ禍で営業が制限された期間のデータは使えないから、それ以前に遡って比較する必要がある。

ユニクロのように同一商品が僅かのディテイール変化とSKU構成変化で継承される場合は正確に追えるが、全くの同一商品でなくてもアイテムの下の「クラスター」(ex.プリーツスカート、スウェットパーカ等)で継承管理されていれば、アバウトにはなるが何とか使える。当然ながら、数値データだけでなく日々の天候と最高気温/最低気温、祝祭日とイベントがエリア毎に記録されていないと実際の比較はできない。

 データが揃っていても計算式の設定が的確でないと使える指標が出てこないから、標準設定して毎週、自動表示するものをベースに、そこから目的に応じてリスト表示を組み替えたり、状況に即した計算式を入れて欲しいリストを算出する必要がある。アルゴリズムと言うと大げさに聞こえるが、ちょっと複雑なエクセル計算式に過ぎないから、在庫管理/DB.セクションに慣れたスタッフが居れば即応できる。

※DB.(Distributor)・・・一般には在庫を所有して配送する卸業者(所有しない卸御者はBroker)を意味するが、チェーンストア運営では調達した在庫を多数の店舗に最適配分・補給・移動する在庫運用責任者を指し、値入れの減耗率をマーチャンダイザーやバイヤーと連帯して評価される。

 

■在庫運用の仕組みと計算づくの店舗布陣が不可欠

 使える形式にデータを加工できても、在庫運用の仕組みと店舗布陣が整っていなければ実効は望めない。自動的な欠品振替や定期的な月度(一般に第3週)の偏在補正に加え、シーズン末の前々月には大規模なエリア内移動(店舗直送)を仕掛けることがあるし、シーズン末の前月にはエリア間移動が必要になることもある。効果的なタイミングや手順、在庫を集約する店舗の受け入れ枠設定や搬出店のピッキング人時量シフトなど、何年も積み上げた経験則がないと、手間取るだけで期待したほど成果が出ない。

エリア毎に売り切る大型高効率店がないと在庫の集約消化が成り立たないから、出店布陣がそれを前提に仕組まれている必要があるし、EC受注品のローカル店出荷などOMOと合わせてテザリング体制が出来ていればスムースに運用できる。消化不振店から移動SKUを効率的に抜き上げるには番地管理VMD体制が不可欠で、欠いたままではスマホのRFIDレーダーアプリを使ってもピッキング人時量が嵩んでしまう。

店舗運営の仕組みとスキルが確立されていないと機動的な在庫消化運用は難しく、売価変更に依存して粗利益率を大きく落とすなど、状況に対応する足腰の脆さが露呈する。アルゴリズム在庫管理には在庫運用の仕組みとスキル、計算づくの店舗布陣が不可欠なのだ。

※アルゴリズムとAI・・・アルゴリズムは問題解決への計算手順を意味するが、人間が数式を設定してプログラムしたホワイトボックスを「アルゴリズム」、CPが機械学習して新たな演算式が加わったり変化してブラックボックス化するものを「AI」と認識すべきだろう。

※OMO(Online Merges with Offline)…ネットと店舗の垣根を超えた連携を意味し、C&C(Click&Collect)など顧客利便を高め相乗効果を得るリテール戦略。

※テザリング…店舗間で在庫を融通して在庫効率を高めるローカル・ディストリビューション手法で、修理加工の集約やC&Cの店出荷と連携される。

※C&C(Click&Collect)・・・ECから店舗に取り寄せて(店舗在庫を取り置いて)試したり注文品を受け取る顧客利便で、カーブサイド・ピックアップ(駐車場受け取り)もその一種。一括配送の店舗物流を使うから宅配送料が不要で、店在庫を引き当てれば倉庫から出荷するより受け取りも早くなる。売り手にとっては顧客利便と在庫効率を高め物流費を抑制するOMO(ネットと店舗の融合)戦略。

 

■PL(Product Lifecycle)各段階の仕組みとスキル

在庫を最適化(需給一致)するには、見込みで調達してしまった在庫を後からアルゴリズム在庫管理して移動や売価変更するだけでは限界がある。PLの各段階ごとに在庫を最適化する論理と仕組み、スキルが必要なのは言うまでもない。

 

1)商品計画段階

 商品計画段階ではMD構成の構造性とその継続性が問われる。店頭から顧客が一見して全体のMD編成が判るか、その構造が毎シーズン、どの程度、継承されるかが在庫管理精度も顧客の継続性も左右する。

 カテゴリー➡︎アイテム➡︎クラスターまでの編成構造が確立されているとして(在庫比率は変動する)、リードタイムの長い計画調達型ならクラスターの売上予算を少ない品番数で構成するほど在庫コントロールが容易になる(台帳MD)。引き付けるファスト調達型なら、クラスターを時系列に構成する品番のリレー管理を適確に行えば在庫コントロールが容易になり(トコロテンMD)、結果的に品番数も圧縮できる。どちらにせよ、売る側も顧客側も同じ構造のストーリーが見えることが肝要で、見えなくなったり見える姿が食い違うようになったら管理精度も落ちて在庫消化が滞る。

 

2)調達(生産)設計段階

 調達のスタンスは、コスト圧縮を優先してロットをまとめ遠隔地の大規模工場で計画生産する「スローサプライ」、需給ギャップ(リードタイム)圧縮を優先して近距離の中小規模工場で引きつけた小ロットのオンデマンド生産を反復する「ファストサプライ」がある。大手SPAでは、同一商品を初期量産はスローサプライでコストを抑制して計画生産し、期中の追加(SKUバランス補正)生産はファストサプライでオンデマンド生産して需給ギャップを埋める、という二段構えサプライも活用されているようだ。

 調達のもう一つの選択は「自己完結型」か「協業型」かだが、要点は利益もリスクも丸抱えするかサプライヤーと分担するかだ。自己完結型では生産工程管理から生産地倉庫在庫管理、輸出入手続きから国内倉庫在庫管理まで一貫するから自己制御できて利益も独占できるが、予測が外れると在庫リスクも丸抱えになる。協業型では国内倉庫に入るまで商社などが分担し、国内倉庫在庫ないしは店舗在庫だけリスクを負担するから相応の手数料はかかるが、商社などによる生産調整・出荷調整で在庫リスクが軽減される。

 順調に売れていれば自己完結型も旨味はあるがブランド事業者が生産工程まで制御できる訳ではなく、コロナ禍では商社活用協業型のユニクロが直撃を回避できたのに対して、ソーシング子会社による自己完結型の良品計画は大きなダメージを受けた。

 何シーズンも同一商品を継続するワークマンのようなケースでは、供給を委任したベンダーが倉庫在庫と生産をコントロールしてオンデマンド供給するVMIという協業形式が効率的で、期末に多少の在庫を残しても来シーズンに持ち越せば回っていく。デザイン変化していく雑貨などでは、棚割陳列を確保して類似商品をリレー供給していくトコロテン型VMIという手法も使われる。

※VMI(Vendor Managed Inventory)・・・あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給・補充生産を委任する取引形態。同一商品を継続補給する「台帳型」が一般的だが、アクセサリーやベルトなど服飾雑貨では類似アイテムをリレー供給する「トコロテン型」も多い。

 

3)販路仕分け段階

 事業形態にもよるが、店舗直販とEC直販、卸しとECモール出品(実態は消化仕入れに近い手数料型の「出品」)の販路の仕分け方で在庫効率もキャッシュフローも大きく左右される。

 コロナ禍を契機にECシフトが加速したが、D2CなEC直販に対してECモール出品は在庫運用が硬直的で回転が遅く、手数料率もキャッシュフローも百貨店と大差ない。ECモール出品の在庫回転が遅いのはモール側の在庫確保要求が強く過剰に積み上げがちなことに加え、滞貨品をロングテールに販売する事情もあるようだ。キャッシュフローが遅い(週払いのアマゾンは例外的に速い)のは、ECではキャッシュレス決済がほとんどゆえ決済代行会社からモールへの入金サイクルに左右され、出品者への支払いを速めるとモール側のキャッシュフローが圧迫されるからだ。

 店舗直販でも路面店やLCC型近隣商業施設は日銭が回るが、売上金を預かって月二回払いする商業施設テナント店舗は22.5日、消化仕入れ代金を月締めで支払う百貨店インショップは45日、キャッシュフローが遅れる。不振品や不鮮品の引き上げを要求される消化仕入れの百貨店取引では倉庫在庫が積み上がって在庫回転が遅く、テナント店舗の方がコントロールが効く。

 これら販路をどう組み合すかだが、売上額や販売効率だけでなく在庫効率とキャッシュフローにも目を配るべきで、一旦渡したら戻し難いモール出品や不振品/不鮮品の引き上げで倉庫在庫が滞貨しやすい百貨店取引には注意が必要だ。自社の意思で在庫を迅速に運用できる販路に絞ることが肝要ではないか。

※LCC型商業施設・・・・ローコスト運営の商業施設を格安航空会社(Low Cost Career)になぞらえたもので、ローコスト(低家賃)に加えてフリーダム(営業規制が緩い)、オープンエア、ダイレクトパーキングといった要素が揃う。

 

4)配分基準設定段階

 店舗直販では客層も販売効率も少なからず異なる多数の店舗にどう在庫を配分するかの「基準」が適確に定まっていないと、単品最適のDB.配分に流されて品揃えが歪になったり在庫が偏在したりする弊害が生ずる。

 ここで再び問われるのがカテゴリー➡︎アイテム➡︎クラスターの「編成構造」だ。カテゴリー別のフェイス量バランス(在庫シェアに近似)は半期毎に直近四半期と前年半期の実績を元にエリアマネージャーの見解を加えて政策的に設定し、アイテム構成とクラスター構成については直近4週間推移を前年の推移と比較して次の4週間推移をアルゴリズムで推計し、上限下限の枠内で週サイクルにDB.が設定するのが一般的と思われる。

カテゴリー構成については半期毎に商品政策とエリア戦略の人的判断を加えて決めるが、アイテム構成とクラスター構成については自動計算で週毎に4週先までを推計して修正を重ねていくDB.のルーチンワークとするべきだ。

 

5)初期配分段階(補給は自動化)

 配分基準が適確に設定されていれば初期配分は販売力別のパッケージ投入になるが、その方法は二つある。長期販売の台帳サプライ品番は全店共通の陳列フェイスを構築できるパッケージ(ダブル/シングル/ハーフ)を店舗サイズと販売効率で仕分けて投入し、以降は補給が切れるまで倉庫から自動補充する。蒔き切りのファストサプライ品番や売り切れての再調達品番は販売力で自動計算して傾斜配分し(上限下限を設定する)、売り切れた店舗にはエリア内で消化率の低い店舗から自動で振り替えていく。

 各店舗への初期配分では、パッケージ化や数量仕分けを何処で行うかが極めて重要だ。国内倉庫に入荷して棚入れしてから個別にピッキングしては膨大な作業になるから、入荷しても棚入れせず自動ソーターで仕分けてスルーするのが鉄則だが、生産工場の仕上げ工程や出荷基地でパッケージ化して国内ではパッケージを自動ソーターで振り分けるだけにすれば、さらにコストと手間を圧縮できる。

 悩ましいのが個別ピッキングが避けられない(高頻度品は一括ピッキングして蒔く)EC向け在庫で、生産地から出荷する段階でEC向けをパッキン単位で仕分けるのが手速いが、パッケージ化された店舗向け商品との融通は物理的に難しくなる。融通可能なように店舗向けヤードとEC向けヤードを同一倉庫内に配するのが合理的だが、モール出品在庫との融通は一方通行になりがちで正解が見当たらず、有力モールに集約するしかないのが現実だ。

 そんな混迷を解消するには店舗販売を否定してECに特化するD2C、さらには後述するような無在庫販売を可能にする生産地出荷の越境ECが望ましい。

 

6)偏在補正段階

 台帳サプライ品番は倉庫の補給在庫が切れ始めた段階、ファストサプライ品番は好消化店で欠品アラームが出た段階から、エリア内の在庫過多店舗から欠品アラーム店舗へ自動的に振替が始まる。欠品はそれで取り敢えず防げても(絶対数量不足は解決できない)不振品の偏在は解消し切れないから、投入後一定週を経過後、偏在率が一定以上の品番を自動でリストしてSKU単位に過剰数を自動計算し、受け入れ店の在庫キャパ範囲で過多店舗から過少店舗へ振り替える。

 そこまではオートマティックなルーティンだが、毎月第3週には店別の品揃えバランスとカテゴリー/アイテム別消化回転を考慮して、エリアマネージャーとDB.が協議の上、偏在品番の過剰SKUをエリア内で一斉に振り替える。それでも消化が困難な品番は、過剰なSKUの過剰な数量のみエリアの処分店舗に集約して売価変更で消化を図り、移動しなかった元店舗のSKU在庫(計算上は売り切れる)は売価変更せず販売を継続すれば、元店舗で品番丸ごと売価変更するのに比べ値引きロスを半減出来る。

 複雑な運用に聞こえるかも知れないが、エリア毎に販売力ある大型母店と集約処分を担う価格志向の強い店舗を布陣しておけば異動先の店舗が分散せず、ピッキングの手順を定めて人時シフトを組んでおけば無理なく運用できる。偏在補正を多段階で仕組めば確実に消化を促進して値引きロスを圧縮できるから、仕組みを確立したチェーンに学んで工夫を凝らすべきだろう。

 

7)消化促進段階

 店間移動で偏在を補正しても消化し切れない商品も多いし、全店共通で販売不振の商品は移動しても消化は望めない。そんな商品を全て売価変更で処分してはロスが肥大して粗利益を食い潰してしまう。

 偏在を補正すれば消化できる程度の量なら店間移動と出前訴求で消化を図るが、全店不振で多量の場合は早めのキックオフとECでのクーポン販売で値引きロスを圧縮する。キックオフは週末など期間限定の小幅値引きで、消化進行が追い付けば元価格に戻す。ECでのクーポン販売も似たようなものだ。

 消化不振品の出前訴求は人気商品の出前に「脇役」的に組み込む抱き合わせ陳列で、適確なルックを組めば効果があるから多重露出(複数の人気アイテムと組む)を仕掛けるが、大量消化は望めない。出前訴求やキックオフでは消化し切れないほどの大空振り商品は早々にアウトレットに回すしか手がなく、後述するオンデマンドサプライで回避するのが先決だ。

 

■無在庫販売へのPLM革命

 アルゴリズム在庫管理の前提を整え、仕組みとスキルを磨いても限界がある。なぜなら、それは在庫を抱えて販売することを前提とした旧式事業の運営効率化であって、「無在庫販売」という革命は望めないからだ。

 既存のアパレル事業は、アルゴリズムあるいはAIを駆使して高精度に販売数量推移を予測しても、迅速詳細に最適な店間移動や売価変更を行っても、販売に先立って見込み数量を調達するギャンブルの枠を出ない。しかし、販売を先行して初期の反応から小ロットのオンデマンド生産を高速で反復するなら、ほぼ在庫リスク無しの「無在庫販売」が成立する。

 「無在庫販売」は珍しいものではなく、ランドセル業界では顧客納品の半年以上も前に受注して計画生産するのが一般的だし(在庫リスク無しの定価販売!)、マクアケなど通販型クラウドファンディングで予約注文を取ってから生産するD2Cブランドも少なくない。クラウドファンディングは反復継続するものではないから、市場規模や適正価格を打診するテストマーケティング、あるいは通販型SNSとして活用するのが通例だ。継続反復できるものとしてはECやライブコマースの予約販売があるが、これも量産数量を推計するテストマーケティングの性格が強く、全ての商品を無在庫販売するのは難しい。

 全商品を継続して「無在庫販売」する仕組みは越境型のECやライブコマースでは可能だが、国内から国内市場に販売するECやライブコマースでは困難で、店舗販売では不可能に近い。サンプルだけのショールームストアも店舗数分のサンプルを要するし、受注から受け取りまで1週間以上を設定しない限り、小ロットの国内DX生産でも「無在庫販売」は成り立たない。パターンオーダーだと製品は「無在庫販売」できるが素材在庫の負担は極めて重く、年間1回転にも届かない。

 越境ECの「無在庫販売」マジックはPLプロセス全体の連携で成り立つもので、前回の本稿『アパレルの「DXファストサプライ」が開くSF的近未来』で詳説したので、ここでは簡便に成立条件をまとめておきたい。

1)AIサポートの俊速3D企画を3D・CG化し、サンプル製作を経ることなく俊速(5営業日以内)で決定。

2)PLMシステムによるDX連携と現物流通素材活用で仕掛かりリードタイムを短縮(生産と合わせて5営業日以内)。

3)先行実サンプルやリアルな3D・CGサンプルでEC掲載を先行(近々にリアルなCG動画も加わる)。

4)初期数日の受注数やウィッシュリスト入れ数、SNSの「いいね」数からAIが受注の推移を予測して小ロットのオンデマンド生産(3〜5日)を反復する。

5)国際郵便小包(非優先SAL便)で2〜3週間かかる配送時差を利用して、初期生産分を航空便で出荷すれば5〜6日で届くから発注から2週間ほどに収まり、1週間強のタイムマシン・マジックで受注先行の「無在庫販売」が成立する。SAL便と航空便の料金差は2割程度(アパレル製品なら150〜250円ほど)に過ぎず、翌週生産分以降はSAL便で出荷すれば良いから負担は限定される。国際郵便小包のタイムマシン・マジックを利用した「無在庫販売」は中韓のソーシャルバイヤーや仕入れ型越境ECでは珍しくなく、大手越境ECファストアパレルでは複数の国際郵便交換局を使い分けてシステマティックに行っていると推察される。

 

 現物流通素材を使ったDX連携小ロット高速生産ゆえ、企画決定から生産して出荷するまで1週間以内で収まるから「無在庫販売」のマジックが成り立ち、小ロットのオンデマンド生産を短サイクルで反復すれば在庫リスクは無いに等しい。潤沢な現物素材流通と小回りの効く中小工場集積を背景とした生産地立脚の越境ECゆえに可能な仕掛けで、産地が衰退しDX連携も遅れた我が国では成り立ちようがない。ならば中韓の生産地から国内そして世界に販売・出荷する越境EC事業を仕組むべきだろう。

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