小島健輔の最新論文

販売革新2020年02月号掲載
『ユニクロVS.無印VS.ワークマンの実力と将来性を検証 明日の勝者は誰か』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

 給与の伸び悩みと少子高齢化の社会保障負担による手取りの目減りで消費が低迷し価格志向が一段と強まる中、過剰供給に消費税の増税も加わって衣料関連の消費は一段と冷え込んでいる。そんな逆風下で例外的な強さを見せる「ユニクロ」「無印良品」「ワークマン」を取り上げ、国内市場における実力と課題を比較検証して明日の勝者を占いたい。

「ユニクロ」は18年8月期で海外売上が国内売上を逆転し、海外売上が54%に達して営業利益も逆転している。「無印良品」も19年2月期で27ヶ国に展開して海外売上が39.9%を占め営業利益も42.9%を占めるが、「ワークマン」の事業展開は日本国内に限られる。各国のマーケットは事業環境も大きく異なり、「ユニクロ」も「良品計画」もそれぞれ苦闘してローカル対応しており、グローバルチェーンにとっては我が国もひとつの“ローカルマーケット”と捉えるべきだ。三者が日本市場というローカルマーケットでこれまでどう評価され、これからどう伸びていくのか、国内市場に限定して様々な角度から検証してみた。

 

■カジュアルのグローバルスタンダードとなった「ユニクロ」

 ローカルのアメカジチェーンに発してカジュアルの国民服となり、今や機能性ベーシックカジュアルのグローバルスタンダードとなった感がある「ユニクロ」。19年8月期では世界21ヶ国で1兆8990億円を売り上げ、「H&M」「ZARA」に次ぐ世界第3位のSPAブランドに位置している。

 日本国内売上は11年8月期の6001.48億円から19年8月期の8729.57億円と45.5%伸びたが、直近の二期間では7.7%弱に伸びが鈍化。19年8月期ではEC売上こそ832.28億円と32.0%伸びたものの直営店売上は7574.67億円と1.6%減少し、国内総売上高も1.0%増と頭打ちになっている。

直近の20年8月期第1四半期(9〜11月)の売上前年比も「既存店+EC」で95.9、「直営店+EC」で95.5と失速しており、今期は国内売上の13.7%を見込むEC売上が実現しているとすれば、直営店売上は推計94.8になる。とりわけ年間で最も販売指数が高い11月売上(前期で年間売上の推計14.3%)が暖冬などによる感謝祭の失速で「直営店+EC」が94.2、直営店だけだと同様な計算で推計93.3となったことは、消費増税の影響があるにしても厳しい結果と言うしかない。

11月こそ客数も96.7と前年を割ったが9〜11月累計では100.2と辛うじて水面上を維持しており、同期間(20日〆なので10日前にズレる)で客数が95.6、12月(20日〆)は93.8と客離れが加速する「しまむら」のような深刻な状況にはまだない。むしろ9〜11月累計の客単価が95.3(「直営店+EC」)と落ちている方がリスキーな兆候に思える。今回、比較する3者中、「ユニクロ」だけが税抜き価格であることも価格抵抗感となっているのではないか。

実際、店頭で見る防寒アウターなど「ワークマン」と比べれば割高感があり、トップスなど裾値は倍ほど格差がある。もはや「低価格な大衆品」というより「高品質で手頃な中級品」となっており、かつて百貨店の平場NBを支持していたような中産階級に受け入れられているように見える。

面もナチュラルシフトする国内カジュアル市場では綺麗めに過ぎ、フィットも“ゆる抜け”が加速する国内市場ではスキニーに過ぎ、ユーロモード的な“アーバンカジュアル”に位置付けられる。デイリーなカジュアルとしては品質にこだわり過ぎて仕上げも硬く、イージーなアスレジャーにも消極的で、今風のカジュアルなライフスタイルには馴染まない。

グローバルスタンダードとなった「ユニクロ」はツングース(華北)系あるいはアングロサクソン系のマーケットに照準が移動しており、日本人の好みからは乖離が大きくなっている。「ユニクロ」の国民的支持も飽和に近づいており、国内店舗数は13年8月期の853店(直営店834店)をピークに減少に転じ、19年8月期では817店(直営店774店)まで減っている。

若年労働力の逼迫で人手不足と賃金高騰に直面しているのは「ユニクロ」とて同じで、必然的にECにシフトせざるを得ない。営業経費率が34.6%と大手アパレルチェーンとしては低いものの、832億円まで伸びた国内「ユニクロ」ECの営業経費率は20%を切っているはずで、一人当たり売上は店舗とECでは10倍も違うから、今後はECを軸にC&Cへシフトして顧客利便と運営効率を高めていくことになる。

C&Cの顧客利便を全国区でカバーするには現状程度の店舗網は必要だから、EC比率を30%まで高めても減店が加速することはないだろうが、OMOなエリアマーケティングやテザリングを軸にスクラップ&ビルドの再布陣が必要になる。運営コストを抑制して店舗網を維持するには、「ワークマン」のようにFC比重を高めていくという選択肢もあるのではないか。

※OMO(Online Merges with Offline)・・・・オンラインとオフラインの融合

 

■サスティナブルブランドとして世界に広がる「無印良品」

 1980年に西友のPBとして40品目でスタートしたのが「無印良品」の原点で、ノーブランドを意味する「無印」をブランド化するというアイロニーやシビルミニマムな質実生活の提案が若者やニューファミリーの支持を得てバブル期にも拡大。89年に西友から独立して100%子会社の(株)良品計画が設立された。

セゾングループ解体後はいっとき業績が低迷したが、06年にファミリーマートと資本提携。商品開発や組織改革に注力するなど経営改革が実り、19年2月期まで16期連続の増収を果たしている。16年のユニー・ファミリーマートHDの発足以降はファミリーマートとの距離が広がり、19年1月末で取引が終了した(19年2月期で約26億円の卸売上減収要因)。

 国内では「無印良品」、海外では「MUJI」ブランドで営業してきたが、海外でも「無印良品」に統一しようとしたり、国内でも「MUJI」表記を広げたりと紆余曲折が見られる。商品政策でもエコナチュラルな「質実生活」を基本としながらも機能性やトレンドで跛行することがあったが、近年は世界的なサイティナビリティの潮流もあって本来の「エコな質実生活」に収斂してブランド価値が再評価されている。18年3月には生鮮食品やグローサラントも揃えた大型店を堺北花田、19年8月には京都山科にに開設し、西友が果たせなかったエコライフスタイルGMSの夢を実現している。

 良品計画は本体と22の海外販売子会社、1つのハウジング子会社、シンガポールと上海の2つのソーシング子会社から構成され、生産地と販売地、販売子会社とソーシング(調達)子会社の商品の流れが複雑で、単体と連結で売上も在庫も数値が大きく異なる(後述)。良品計画本体は経営と商品開発、国内販売事業を担っており、国内販路は直営店とWEBの直営事業、西友やアスクルなどへの卸事業からなる。

 19年2月期の連結売上は4096.97億円、単体売上は3099.06億円、国内売上は2413.39億円。直営店売上は1867.58億円、別にEC(WEB)売上200億円とその他62.29億円、合わせて2129.89億円が国内直営事業売上。卸売上が284億円あり、小売規模で460億円程度と推計したい。

国内市場規模をどう見るかだが、国内直営事業売上と小売換算の卸売上を合算した約2590億円、うち衣料・服飾雑貨売上は963.5億円(37.2%)と推計する。ユニクロ国内売上の29.7%、衣料・服飾雑貨に限れば11.0%にとどまる。

日本国内直営事業売上は11年2月期の直営店1070.00億円/WEB85.66億円/計1155.66億円から19年2月期は直営店が1867.58億円と74.5%、WEBが200億円と133.5%、合計で2067.58億円と78.9%増えているが、直近の二期間でも19.8%増とユニクロ国内売上(7.7%弱の増加)に比べれば成長力を維持している。

19年2月期の売上前年比は直営店が106.8、WEBが110.8と好調で、20年3〜8月も直営店が108.9、WEBが116.8と加速しており、下期に入っても9〜11月で直営既存店が107.7と好調を維持している。

既存店売上が好調なのは客数が増えているからで、19年2月期は7.9%増、19年3〜8月も9.8%増と加速している。社会負担増で手取り所得が伸び悩み生活消費財のデフレ要求が高まる中、取り扱い全7000品目中、18年春に2400品目、19年秋に1100品目を値下げした成果が発揮されている。中でも好調なのが食料品で、直営既存店売上は19年2月期で113.2、19年3〜8月も113.1と二桁増を継続。衣料・雑貨も19年2月期で107.5、19年3〜8月も105.9と伸ばしている。

国内直営店数も14年2月期末の269店から毎年7〜28店増えて19年2月末には348店となり、19年3〜8月も11店増加して359店まで増えている。

数字だけ見るとなんら曇りなく順調に伸びているように見える「無印良品」だが、不安要素がないではない。それは「ユニクロ」と違って多様なアイテムを様々な方法で開発・調達する故の品質のばらつきと在庫運用の難しさだ。優れた品目が評価される一方、今ひとつの評価で伸び悩む品目も少なくないし、オンデマンドでなく作り溜めて売り減らす在庫を国内倉庫やソーシング子会社に大量に抱えている。その実態については別の機会に詳説しよう。

 

■低価格機能性アスレジャーでユニクロを脅かす「ワークマン」

18年9月に高機能低価格カジュアルSPA「ワークマンプラス」の一号店をららぽーと立川立飛にオープンして以来のワークマンの爆発的成長は、99〜01年のフリースブームで人気沸騰した当時のユニクロを想起させる。

19年3月期の既存店売上伸び率は前期の4.7%から14.0%に加速、19年3〜8月は27.8%とさらに加速している。チェーン全店売上伸び率は「ワークマンプラス」の出店や「ワークマン」からの転換も加わって前期の7.3%から16.7%に加速、19年3〜8月は32.2%と爆発的に加速している。19年3月期のチェーン全店売上は930.39億円と前期から133.36億円積み上がり、20年3月期は11.2%増の1035億円を計画しているが、上半期ですでに553.38億円に達して上方修正は必至の勢いだ。

新店は全て「ワークマンプラス」で、前期末の12店から19年9月末で69店に増え、今期末には169店まで増える。うちSC内が8店、ロードサイドの新店が42店、既存店からの全面改装転換が27店、既存店に「プラス」を併設する分離改装が61店になる。

これほど人気が沸騰しているのに「ワークマン」も含めた総店舗数が前期末の837店から9月末で848店と11店増、今期末予定でも873店と36店増にとどまるのは、既存の加盟店からの転換を優先しているためで、好調と見ると周辺に新店を無遠慮に開設するコンビニの本部とは加盟店経営者への配慮が根本的に異なる。ロードサイド紳士服チェーンなど企業FCを容認すれば一気に拡大ペースを加速できるのに頑なに拒んでいるのも、ワークマンを支えてきた家族経営(主にご夫婦)の加盟店を尊重する故と思われる。

人気が沸騰する中、一店あたり売上も急増している。「ワークマンプラス」のSC店舗では年商が3億円を超える店もあるが、売上増はチェーン全体に波及しており、既存店一店あたり売上は18年3月期の9991万円から前期は1億1251万円(新店含む全店平均は1億1117万円)に急増。今期は1億2500万円を超えると見られる。それにスライドしてFC店経営者の収入も増加しており、今期は平均1200万円に達するとワークマンの加盟店募集は謳っている。

ワークマンの店舗には基本的に「直営店」は無く、「FC店」とFC店に移行するまでのお試し「業務委託店」、FCにバトンタッチするまで本部が運営する「トレーニングストア」しか存在しない。「ワークマンプラス」の人気爆発で損益ボーダーラインの6500万円を下回る店舗がなくなったため、固定給を支給する「業務委託店」からFC店への移行が進み、FC店比率は18年3月期の84.3%から前期末で87.6%、19年9月末では93.8%まで上昇している。

『こんなに安いのにタフで洒落ている』と評判になったPB商品の売上は18年3月期の255.7億円(売上構成比32.2%)から前期は368.5億円(同39.7%)に急増し、今期は45.5%増の536億円(同51.7%)を見込んでいる。

 

■三者の実力を比較する

ユニクロ_無印_ワークマンの国内事業概要

 「ユニクロ」の国内売上規模8729.57億円に対する「無印良品」の売上規模約2590億円は3割弱、衣料・服飾雑貨に限れば11.0%。「ワークマン」のチェーン全店売上930.39億円は同10.7%弱と大差があるが、それだけ拡大余地があると受け止めるべきだろう。

【EC】

 EC売上とEC比率は、「ユニクロ」の832.28億円/9.53%が突出し、「無印良品」も200.01億円/8.29%と続くが、「ワークマン」は推計20億円/2.1%と出遅れている。ECのスタートも「ユニクロ」が一番早く00年、ついで「無印良品」が翌01年、「ワークマン」は13年と後発だ。

ECは先行する企業ほど古いシステムに囚われて最新ニーズへの対応が遅れ気味だから、後発企業が不利というわけでもない。三者とも現段階では在庫管理システムへのバッジ・トランザクションで店在庫は検索できるが引き当ても取り置きもできず、店舗受け取りはできるが店在庫を引き当てることはできず倉庫から店舗に発送している。「ワークマン」は倉庫発送の店受け取りが66%に達してマニュアルベースながら店在庫引き当てへの切り替えを進めているが、EC受注段階で店在庫を引き当てて取り置けるわけではない。その点ではライトオンが一歩先行しており、ECサイトから店在庫を検索して取り置きができ、店舗で決済して受け取れる。三者ともC&C(クリック&コレクト)は端緒についたばかりで、テザリングとの連携も先の課題のようだ。

【店舗売上と販売効率】

平均店舗売上は「ユニクロ」(平均955平米)の9億6626万円に対して「無印良品」(平均774平米)は5億4688万円と56.6%、「ワークマン」(平均288平米)は1億1117万円と11.5%にとどまり、坪販売効率でも「ユニクロ」の336.9万円に対して「無印良品」は194.0万円と57.6%、ロードサイド店が大半の「ワークマン」は127.4万円と37.8%にとどまる。それだけ「ユニクロ」の国民的支持が突出していることを示している。

【一人あたり売上】

従業員一人あたり売上もユニクロ国内事業が3119.2万円と突出しており、良品計画国内事業は2503.2万円と80.3%、ワークマンはFCが大半なので計算できないが経営者夫婦とバイト換算を1.5人分と見れば3318万円とユニクロを上回り、2.0人分と見ても2779万円と良品計画を上回る。その分、高い報酬が払えるわけで、ワークマンの加盟店が潤うのも推察できる。

【総利益率】

総利益率はユニクロ国内事業の46.7%(前期比-1.7)に対して良品計画国内事業は39.1(同-1.3)と7.6ポイント低く、ワークマンは37.6%(同+1.1)とさらに1.5ポイント低い。これはFC本部としてのワークマン社の売上に対してであり、チェーン全店売上に対しては27.1%と国内ユニクロ事業より19.6ポイントも低い。それだけ利幅を抑えた売価で商品を提供しているわけで、「ワークマン」と比べた「ユニクロ」の割高感も頷ける。

【原価率とお値打ち感】

総利益率の逆が原価率だが、値引きや残品のロス、FCでは商品以外のロイヤルティや支援サービスもあるから当初設定売価(正価)に対する調達原価率を割り出すのは難しい。三者の正価対比原価率を推計して“お値打ち感”を探ってみた。

ユニクロ国内事業の実現売上対比原価率は53.3%だが、感謝祭や期末のバーゲンに加えての煩雑なチラシ連動キックオフ(期間限定値下げ)を考えれば国内主要アパレルチェーンの平均歩留まり率(投入正価総額に対する実現売上率)73.3%を下回るはずで、70%と見れば正価対比調達原価率は37.3%、69%と見れば36.8%、68%と見れば36.3%になる。かつては38%と推計されていたユニクロの原価率も、グローバル展開や組織の肥大によるコスト上昇で切り下げられているはずで、現在は36.8%と推計したい。

良品計画の実現売上対比原価率は単体では60.9%だが、ソーシング子会社を含む連結では48.5%に落ちる。ユニクロでは商社が担っている生産地から国内倉庫までの物流管理に相当する分を上乗せして、ほぼ50.5%と見たい。これをベースに歩留まり率をユニクロよりやや高い72%と見れば正価対比調達原価率は36.4%となり、ユニクロと大差ない。

最も推計が難しいのがFC売上が89.7%を占めるワークマンで、FC本部としての営業総収入に対しては71.2%になるが、チェーン全店売上に対しては44.9%、加盟店売上に対する加盟店向け商品供給高では48.1%になる。EDLPの長期継続販売でロス率が1.33%と極端に低いゆえ歩留まり率を98%と見れば、チェーン全店売上に対する正価対比調達原価率は44.0%、加盟店売上に対する加盟店向け商品供給高では47.2%と推計される。ワークマンは調達原価率を65%とアナウンスしているが、それはFC本部事業者としてのワークマン社にとってであり、顧客に対する正価対比調達原価率は44.0%と見るべきだろう。

正価に対する推定調達原価率はユニクロが36.8%、良品計画が36.4%と大差なく、ワークマンが44.0%と突出して高い。その差は7.2/7.6ポイントだが売価ベースではワンライン以上の差になる。一般消費者が「ワークマン」を両者より一回りお買い得に感じるのも当然だろう。

【在庫回転】

お買い得感が高いと消化も速く在庫回転が高くなる。ユニクロ国内事業が2.43回(前期比-0.67)、良品計画(連結)が2.44回にとどまるのに対し、ワークマンは6.1回(+0.65)と倍以上速いが、それはお買い得感の差だけではない。

 

■ワークマンは異次元のSPA

ユニクロや良品計画がリードタイムの長い大ロット一括調達品をダム型サプライで売り減らしていくという古典的なSPAモデルであるのに対し、ワークマンは作業服・用品ベンダーとのVMIサプライからSPA化した異次元モデルであり、今期は過半に達するPBも大ロット一括調達の直貿だけでなくVMI的取り組みも活用していると思われる。また、そうでなければPBの拡大が在庫の消化回転を損なって経営効率が低下するはずで、PB比率が過半に達してもそんな兆候が見られないのはなんらかのVMIが機能していると思われる。

【販管費率】

ワークマンがもうひとつ突出しているのが販管費率の極端な低さで、ユニクロ国内事業の34.9%(前期比+0.4)、良品計画国内事業の33.1%(同+1.3)に対して17.4%(同-0.2)とほぼ半分に収まり、チェーン全店売上に対しては12.5%でしかない。ワークマンではFC店の家賃や光熱費、宣伝広告費や物流費など運営経費のほぼ8割を本部が負担するから、FC店の運営人件費などを加えてもチェーン全体の販管費率は20%を超えないはずだ。逆に言えば、ユニクロや良品計画の中央集権的SPA企業の肥大した組織が本当に必要か、原点からビジネスモデルを見直しても良いのではないか。

【営業利益率】

事業の収益性は総利益から販管費を差し引いた営業利益が示すが、直近本決算の売上対比営業利益率もユニクロ国内事業の11.7%(-2.0)、良品計画単体の8.7%(-2.6)に対し、ワークマンはFC本部たるワークマン社の売上対比で20.2%(+1.3)、チェーン全店売上対比でも14.5%と一回り高い。総利益率は低くても歩留まり率が高く、FCとVMIを活用した効率的運営で販管費率を低く抑え、突出した高収益を実現している。

【株価騰落率】

投資家から見た旨味も三者には格差がある。19年12月27日の終値はファーストリテイリングが65,870円、良品計画が2,565円、ワークマンは10,350円だったが、一年前(12月28日)からの騰落率はファーストリテイリングの+16.85%、良品計画の-3.39%に対してワークマンは+190.73%(ほぼ三倍)と突出している。この差が将来性への市場の評価と見るべきだろう。

 

■市場性から見た成長力

 国内市場における今後の成長性だが、「ユニクロ」は飽和状態に達しているのに加え、グローバル化して国内マーケットの嗜好とずれ、スポーツ&アウトドアアイテムをイージーに着回す日本的アスレジャーにも対応できず、組織が肥大して運営コストが嵩み、お買い得感が薄れているから、「ワークマン」の未来をかっさらう「ネオ・スポクロ」を早急に投入しない限り、多くは望めない。

 「良品計画」は世界的なサスティナビリティの潮流が追い風となっているのに、古典的なダム型サプライに依存する非効率な組織が災いして経費が嵩み、毎年のように多品目を値下げしても突出したお買い得感までは至らず、何もかもが中途半端にとどまっている。「無印ブランド」というアイロニーに甘えず「エコな質実生活」の原点に帰り、商品開発・調達・DBの仕組みを抜本から見直し、顧客のライフスタイルを支えOMOな便宜を提供すべく販売と物流の体制を再構築し、消化回転を高めてロスを抑え運営コストを落とさない限り、成長力を失うリスクさえ指摘される。

 「ワークマン」の成長はこれからが本番で、「ワークマンプラス」が1000店はともかく「ユニクロ」並みに布陣するまで続くと見るが、快進撃を妨げるリスクが2つだけある。ひとつは内部要因で、PB開発が「ユニクロ」的な一括大量調達売り減らしのダム型サプライに堕して、これまでの好調を支えてきたVMIの仕組みが崩れ在庫が滞貨してしまうこと。ひとつは外部要因で、ファーストリテイリングが「ネオ・スポクロ」を開発して「ワークマン」潰しに総力を挙げる事態だ。

 前者は経営陣の見識で回避できるが、後者はいずれ避けられないだろう。「ワークマンプラス」の全国布陣が先行して国民の間に“神話”が成立するのが早いか、「ネオ・スポクロ」の総力展開で顧客の奪い合いに引き摺り込まれるか、時間の勝負となるが、ここまでフアーストリテイリングの打つ手が遅れると「ワークマン」が独走体制を確立して逃げ切る公算が高いのではないか。

 

 

 

 

 

 

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