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『ニーマンマーカスとJCペニーを一緒にしないで』(2020年05月17日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 どちらもコロナ休業が引導を渡したとは言え、ニーマンマーカスはLBOギャンブル死、JCペニーは衰退の果ての玉砕という両極の破綻だった。その意味ではレナウンも後者の死に様だろう。

 ニーマンマーカスはピークの15年の51億ドルから19年は推計46億2000万ドルまで売上が減少したとは言え、近年も売上対比4%前後の営業利益を稼いでいたが、それに倍する利息の支払いに行き詰まった。55億4300万ドルの長期負債のうちLBO負債が44億5500万ドルも占め、6.0%もの利息を3億3200万ドルも支払っていた。19年第3四半期までの営業利益1億2800万ドルに対して2億4500万ドルも利息を払い、73億5900万ドルの総資本のうち自己資本は3億7700万ドルに過ぎなかった。これでは一ヶ月も全店休業すれば資金繰りがつかなくなって当然だ。

 一方のJCペニーは16年以降、売上が減少して三期連続の経常赤字に陥っていた。19年は8.1%減の111億6700万ドルの売上に対して2億6800万ドルの純損失を計上したが、支払利息2億9300万ドル(利率7.9%!)以前に営業利益段階で800万ドルの赤字だった。総資本45億5000万ドルに対して負債が37億2100万ドルに積み上がり、自己資本は8億2900万ドル、フリーキャッシュフローは1億4500万ドルまで磨り減っていたから、コロナ休業に耐えられなかった。

 ニーマンマーカスはEC販売比率を36%まで伸ばし、坪あたり2万4327ドルも売り上げていたから、ノードストロムにも遅れをとらず、高所得な顧客を捉えて販売効率も異例に高かった。ちなみにノードストロムのEC比率は33%、坪販売効率は1万6226ドル、メイシーズは24%と7300ドルだ(いずれも直近本決算期)。それに対してJCペニーは一度もEC販売比率を公表したことがなく(おそらく一桁)、坪販売効率も19年は4056ドルにとどまる。それだけ魅力のない旧態化したデパートに落ちぶれていた。

 11年11月にアップルストアを成功させた立役者のロン・ジョンソンを年俸5300万ドルでCEOに招き、特売体質からEDLPへ、ブランドショップ構成のメインストリートゾーニング、RFIDとWiFiによるモバイル&セルフ精算の導入(DX)で営業経費率を31%から21%に引き下げるという大改革に取り組んだものの、特売慣れした顧客が離反して12年の売上は24.8%も減少し13億ドルの営業赤字に陥り、13年4月8日にロン・ジョンソンCEOを解任して改革は挫折した。その深手から立ち直ることができないまま、販売不振が続いて自己資本が磨り減り、コロナ休業で行き詰まったのだ。今日の視点に立てばDXは最先端の取り組みだったが、メインストリートゾーニング(我が国百貨店で言うハイブリッド化?)とEDLPシフトは成功した事例を見ない。

 ニーマンマーカスは自己資本比率が5%まで落ち込んでレバレッジが20倍まで膨らみ、JCペニーは自己資本比率は18.2%でも営業赤字が続いてフリーキャッシュフローが細り、コロナ・クライシスに耐えられなかった。連邦破産法第11条は破綻した企業の資産を保全し負債を棚上げする徳政令みたいなものだから、事業に将来性と収益性があれば再生の道が開ける。ギャンブル死だったニーマンマーカスは確実に再生されるだろうが、討ち死にだったJCペニーの再生は極めて困難と思われる。 

 

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