小島健輔の最新論文

ファッション販売2005年8月号巻頭カラー掲載
『巨大SCが消費スタイルを一変させたイオン宮崎』
(株)小島ファッションマーケティング代表取締役 小島健輔

 宮崎市ダウンタウンからわずか5kmのウォーターフロントに5月19日開業したイオン宮崎SCは総店舗面積6万平米、パブリックスペースを含む商業面積77,355平米、駐車台数4,070台というイオンモール最大の巨大SC。ジャスコとニトリ(1F)、スポーツオーソリティ/シネコン(2F)を繋ぐ全長260メートルの2層モールには、飲食サービスを含めて159店(うち86店が宮崎初出店)が並ぶ。宮崎ダウンタウンの主な大型商業施設、宮交シティ(約3万3千平米)、ボンベルタ橘(約2万平米)、宮崎山形屋(約1万2千5百平米)、ファッションビルのカリーノ(約1万7千6百平米)の総合計が約8万3千平米だから、ほぼそれに匹敵する商業施設が一気に出現した訳で、宮崎の消費スタイルは一変してしまう。
 ドライブタイム30分圏人口は約37万人と限られるが、周辺には大型商業施設も強力なダウンタウンも存在しないから最大20km圏の44万人までは射程距離に入る。加えて、シーガイアと日南海岸を結ぶ一ツ葉有料道路の中間に位置し、年間470万人という観光客も期待出来る。初年度売上予算は280億円(うちジャスコ80億円)と控えめに発表されているが、当社の計算では330億円近くまで伸ばせる超有望SCと評価している。
 モールのテナント構成はその圧倒的なスケールほど突出したものではなく、洗練された都会的な匂いとローカルの土着的活力(むしろ洗練されているかも)のバランスを取っている。都会的洗練はフォーカスを絞った一方的発信の裏返しだし、ローカル的活力は顧客との交信がもたらす多様な個性とも言い替えられる。どちらかに片寄った構成がベターとは言えず、この点では同SCのバランスは絶妙と評価したい。
 「デイリーキッチンゾーン」と「ベーシックスタイルゾーン」はコミュニティSC的なベースを押さえ、「ラグジュアリータイムゾーン」はワールド系セレクトSPA業態や“&byピンキー&ダイアン”、ブランドグッズの“ハピネス”などでなんとか都会的な匂いを放っている。「インターナショナルゾーン」は“ ローラアシュレイ”や“ギャップ/ギャップキッズ”などのグローバルブランドで華やぎを加えているが他はスポーツ系に片寄っており、“コーチ”“ラルフローレン”クラスの目玉が欲しかった。「トレンドファッションゾーン」は“イング”や“ワンウェイ/バイバイ”で都会の旬を、アフリカタローの“モンスター”、“アクシーズファム”“アロー”“ギャザー”“タイル”などのローカルチェーンで多様な個性を放っている。このほか、サーフライフスタイルの“ビーチサウンド”、新たなプロトタイプで勢いがついてきた“IKKA”にも注目したい。
 直方SC同様、ここでもアダルト/ミセス〜シニア顧客をカバーするモールテナントはほぼ皆無で、ダウンタウンに代替するほどの巨大SCとしては百貨店の欠落を含め、改善が急がれる。広域から訪れる大人達や観光客の失望を思い遣れば、リモデルの機会まで待って下さいとは言えないのではないか。

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