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ブログ(アパログ2019年03月15日付)
『マネキンがヤバイかも』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 クライアントのVMDクリニックや店頭リサーチで??っと思うのがマネキンで、一昔前のメイクやウィッグのままだと違和感どころかマイナスイメージが甚だしい。先日もクライアントの店頭で気がついて、今風のウィッグに替えて淡いリップグロウを施すようアドバイスした。
 スタイリングを表現するだけでなく売場のキャッチポイントとなるマネキンやトルソーはVMDのキーパーツだが、テイストや機能が合わないと効果が半減するどころかブランドイメージを損ないかねない。もっと気を配るべきだが、開店当時のまま放置されているケースが多いのは残念だ。私の指摘が気になったら、すぐさま全店のマネキンを点検してほしい。
 マネキンとトルソーの違いは原則、頭/腕/足の有無とされるが、頭や足のないマネキンもあるし(下着売場や水着売場でよく見かける)、可動式の腕が付くトルソーもある。結局のところ、ボディラインがリアルなのがマネキン、機能的にデフォルメしたのがトルソーということなのだろう。
 マネキンにもデフォルメした「アブストラクトマネキン」と一瞬、本物の人かと見紛うような「リアルマネキン」があるが(両者の違いは主に頭部)、後者は精密なFRP成形に加えてボディもフェイスもメイクが施される。その分、前者より値段が高くなるのに、時々のトレンドに左右されて賞味期限が短く、合うブランドや店の間口も狭くなるから、近年は人気が低迷している。売場では滅多に見かけなくなったし、見かけても時代ズレしたポンコツ感を否めないことが多い。
 「アブストラクトマネキン」にも体型やポーズがあって上手く選べば使い勝手が良く、有頭タイプではメイクも出来るしウィッグでイメージも変えられる。近年は合繊のお手頃なウィッグが様々な髪型や色で揃うから、若向けやクリエイティブな店ではアニメ感覚で遊んでも良いだろう。
 「リアルマネキン」が人気だった往時は価格の高さと正味期限の短さもあってリースが主流だったが、「アブストラクトマネキン」が主流となり金型成型で量産される合成樹脂ものは1〜2万円、中には数千円とお手軽になった今日では買取が主流となっている。トルソーは布張りのクラシックタイプからモダンなアブストラクトタイプまで、ほとんど一万円以下だし(腕付きは多少超える)、手軽なバルーン品やスチロール品はさらに激安だから買取が常識だ。
 既製品は手軽になったが、テイストにこだわるなら店舗デザインに合わせて演出什器共々、特注したい。店単位だと高くつくから、意匠と機能を標準化して量産し、全店共通のVMD体系に組み込むべきだろう。
 マネキンやトルソーはコーナーや出前ユニットを構成する時の配置パターン、複数体を組み合わす時の高さと前後関係など、具体的なルールを定めておかないと店や時期によって乱れてしまうし過不足も生じる。テイストや機能はもちろん、店毎の体数管理と補充・回収・リニューアルの手順、配置のルールや脱着の手順をマニュアル化して円滑に運用できるよう本部がバックアップするべきだ。

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