小島健輔の最新論文

ブログ(アパログ2018年06月08日付)
『ホンモノは解るんだけど・・・』
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 某大手セレクトの秋冬プレビューを覗いて来たが、トレンドを外さずフィットも今風で、“ホンモノ”志向のしっかりとした素材を使って・・・・と言うとベタ誉めみたいに聞こえるかも知れないが、??と思うところも多かった。 まずはトレンドがストライクゾーン真ん中だけでバラエティがなくリミックスの妙を欠いていた事、もうひとつは“ホンモノ”志向の素材が重くて着心地がしんどそうだった事、が引っかかった。ブランドではなくセレクトショップなのだから、コントラストを効かせるサブトレンドを上手くリミックスして欲しいし、“ホンモノ”も良いけれどイージーケアや軽い着心地など使い勝手も不可欠だ。
 この大手セレクトは年々、企画がブランドメーカー的になってセレクトショップとしてのバラエティやリミックスが細り、ものづくりに入れ込む分、売場での編集提案や顧客側の着こなしを引き出す面白みが薄れていくのを残念に思っている。オリジナルが大半を占めるとは言え、ブランドショップではなくセレクトショップなのだから、作る側で完結させてしまうのではなく売場と顧客の創造余地を残すべきではないのか。
 作る側の論理を店と顧客に押し付けてはセレクトショップの魅力は失われてしまう。ブランドのような平板なMDにせずリミックスの効く立体的なMDを組んで売場や顧客の編集創造意欲を惹き出し、素材やパターンにも着崩せる軽さや余裕を配慮して欲しい。
 “ホンモノ”追求は解るんだけど、作る側と売る側と着る側の関係は、もうそんな時代ではないと思う。SNS的情報民主化もあって作る側と着る側のギャップが無くなり、古典的な“ファッションシステム”が崩れてセレクトショップがメジャーになったのに、自らを押し上げた潮流に逆行するかのように“ファッションシステム”に擦り寄り、顧客や売場との乖離を開くのは本末転倒に思えるのだが・・・・

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