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商業界オンライン 小島健輔からの直言
『TOKYOBASE失速の構図』 (2018年11月09日付)
小島健輔 (株)小島ファッションマーケティング代表取締役

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 破竹の進撃をしてきたTOKYOBASEだが、東証一部昇格からわずか1年で減速し始め、今中間期(3〜8月)決算ではECを含む既存店売上げが17.0%も減少。

 前年同期比で売上高は3.3%の微増と足踏み、営業利益は28.9%減と急失速した。壁に当たったTOKYOBASEはこのまま勢いを失ってしまうのだろうか。

TOKYOBASE 4つのアキレス腱

 売上げに変調が見られ始めたのは17年の秋頃からで、「ステュディオス」に続いて「ユナイテッドトウキョウ」も急失速した。18年春になっても低迷を脱せず、本質的な壁に当たったと推察されるが、それには好調な段階から抱えていた“4つのアキレス腱”が災いしたと思われる。

(1)ECを伸ばすほど儲からなくなる

 多くのアパレル企業ではECを伸ばすほど収益力が高まるが、TOKYOBASEだけは逆だった。自社でECを運営するアパレル企業はEC比率を高めるほど収益性が高まるが、TOKYOBASEのECの大半はZOZOのテナントショップで(前期はEC売上げの86%を占めた)、後発の参加ゆえ先発の大手セレクトに比べれば割高な手数料を強いられ、店舗販売より高コストについていた。

 ZOZOに支払ったと推計される売上対比販売手数料率は16年2月期で29.1%、17年2月期で27.0%、18年2月期で27.1%と先行する大手セレクトより5ポイントほど高く、販売員の人件費などが不要とはいえ、店舗販売の売上対比家賃負担率(年度によって16.0%〜16.8%)より10ポイント以上、割高についている。

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 EC比率が40%に迫った前期は収益を圧迫し、15億円を売り上げていたZOZO専用オリジナルも今春に廃止している。それで今中間期はEC全体で手数料負担率を25.2%まで抑制したが、店舗販売より大幅に割高であることには変わりない。自社ECとて前期で2サイト計7億円にとどまり、小規模事業者向けECパッケージに依存する初歩的な体制で店舗在庫とのシステム連携もできておらず、在庫の物理的一元化にも遠い。自社ECで先行するアパレル企業とは数段の格差があり、ZOZO依存を脱するには集中的な投資が急がれる。

 株式上場で得た資金はいの一番にシステム更新など自社ECの体制拡充に投ずるべきだったのに、新ブランド開発や店舗投資に流れた戦略判断の甘さが指摘される。

(2)権限移譲のリスク

 TOKYOBASEは各店長に販売や仕入れ、損益管理のみならず販売員の採用も勤怠管理も評価も任せているが、これは商法上の「支配人」にあたり執行役員と見なされるから、その言動は会社を代表するものになる。若い人材に人事権も含め店舗運営の全権を委任しているわけで、商法や労働基準法などコンプライアンス研修を徹底し、本部がルールを定めて言動を管理しないとさまざまな問題が生じかねない。

 似たような権限移譲を行って成功しているドンキホーテHDでは現場に販売と仕入れ、損益管理は任せても人事権は与えておらず、浮き沈みは激しいものの本部が公平な人事評価に努めてガバナンスを保っている。ドンキホーテHDと比べればTOKYOBASEの権限移譲には危なっかしさが付きまとい、売れなくなってくると無理がトラブルを招くリスクが指摘される。

(3)押し込み販売のリスク

 TOKYOBASEの商品と顧客は80年代のDCブランドに近く、客層の広がりには自ずから限界がある。限りのある顧客を相手に売上げを伸ばそうとすれば、一歩間違うと呉服の押し込み販売に近づきかねない。実際、売上げが伸び悩む中、顧客に対するメールなどのアプローチは頻度を増しており、敬遠する声も聞く。店長や販売員の属人的努力に依存する売上拡大は限界を迎えているのではないか。

(4)品揃えにリミックスがなく編集スキルも欠く

 TOKYOBASEのVMDはセレクトもオリジナルもブランド別のラック展開でリミックスを欠き、柄物などの入れ込みも弱く平板な印象を否めない。販売力に頼ってリミックス提案や売り切り編集のスキルを欠き、売れなくなると接客がヘビーになりかねない。TOKYOBASEの“販売力”はVMDスキルを欠いた片翼飛行で、接客への依存度が高すぎるのではないか。        

新たな成長モデルを築けるか

 TOKYOBASEのこれまでの成功はニッチなマーケットを属人的な“販売力”で狩ってきた狩猟的なもので、組織やシステムで顧客を広げていく安定した農耕的ビジネスモデルとは言い難い。

 踊り場に追い込まれたのを契機に新たな成長モデルを築けるのか、これまでの属人的狩猟的な手法に固執して消耗戦に陥るのか、経営者の力量が問われている。仮初めの成功ドラマで終わるのか、上場企業にふさわしい継続的成長モデルに脱皮するのか、答えは本決算までに出るだろう。

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